メイド達の最終試験
ドラグ達にメイドを選びに行かせてから、もう2時間ぐらいが経ったか?俺達はメイドキッサのエントランスで待たせてもらっている。少し時間が掛かっているが、それぐらい真剣に選んでいるのだろう。それに100人以上メイドがいるんだ。時間が掛かって当たり前か。そんな事を思いながら待っていると、
「ご主人様、お待たせしました」
ドラグ達が戻ってくる。ドラグの後ろには何人かのメイド達とマナリアさんがついてきている。
「ドラグ、おかえり。どうだった?」
「はい。中々に良い人材が確保できたかと」
「それは良かった」
「で、その事なのですが…」
ドラグは申し訳なさそうな顔をして、その後の言葉を言い淀んだ。何か問題でもあったのか?その割には良い人材を確保できたとか言っていたが。取り敢えず聞いてみない事には分からない。
「どうした?言ってみろ?」
「はい、ご主人様にはメイドを10人選べと言われましたが、良い人材が12人いまして、本来ならば2人絞ればいいだけの事ですが、どの人材もご主人様に仕えるに値する人材でして、誰を絞るか選びかねていました」
「ふむ。それで?」
正直、ドラグが言いたい事はすぐに分かった。12人、良い人材が見つかったが、俺は10人雇ってきてくれと言った。絞っても良かったが、勿体ないと思って俺にお願いしに来たのだろう。そこまで分かってるなら、すぐに了承してやっても良いのだが、メイド達も覚悟を決めてついて来て、お願いしに来たのだろう。なら、最後までその覚悟を見てやるのが一番いいだろう。
ドラグ達の後ろにいるメイド達はみんな緊張しているのか表情が硬い。不安そうな顔もしている。恐らく、2人絞らなければならないと、俺に言われてしまえば誰が落とされるのか不安なのだろう。
「わたくし達が選んだ12人のメイド達は、必ずご主人様のお役に立てるとわたくし達は思っていますので、恐れ多い事ですが、この12人のメイド達を採用してはいただけませんでしょうか?」
「「ルーク様、私達からもお願い申し上げます」」
まずはドラグとルビー、シーナが俺にお願いをする。
「ルーク様、この子達は仕事や立ち振る舞いなどはまだまだかもしれませんが、ルーク様に全身全霊を持ってお仕えする事の出来る者達と私は確信しています。2人分の給金は私から支払っても構いませんので、私からもお願い致します」
「「「「「どうかよろしくお願い致します!」」」」」
次にマナリアとメイド達にお願いされた。まったく…。こんだけ言われりゃ断るなんて出来ないよなぁ。まぁ、断るつもりは全くなかったんだが。だがメイド達には、この緊張感が必要なのではないかと思う。簡単に採用してしまったら、気持ちが緩んでしまう。なので今の状況を利用させてもらおう。
「なるほど、そういう事か。みんなの気持ちは分かった。俺は10人しか雇うつもりはなかった。なのでメイド達には申し訳ないが、2人絞るつもりだった。だが、ドラグ達やマナリアさん、それにメイド達にここまでお願いされたら、俺もその気持ちに応えないとな」
マナリアさんやメイド達は俺の言葉を聞いて喜んでいる。ようやく緊張が解けたのかホッとしているメイド達もいる。誰を絞るかは言ってないので、メイド達はみんな安心している。言い方は悪いが、ただ採用されたではなく、俺の慈悲があって採用されたと思われたなら良し。そして俺はドラグ達に小声で話しかける。もちろんメイド達には聞かれないように。
「それにドラグが、良い人材が12人いると言った時点で雇うつもりだった」
「そうなのですか?」
「あぁ。ドラグやルビー、シーナが選んだメイド達なんだろ?だったら俺はドラグ達を信じるだけだ。俺はドラグ達が信頼出来るからまかせたのだ。なら10人も12人も同じ事だ。まぁ、さすがに10人のところ、30人もいるとなったら考えたがな」
「ご主人様…」
「私はルーク様に仕えていて幸せです…!」
「私もです!これからもルーク様に全力でお仕えいたしますわ…!」
ドラグ達3人は涙を流している。他のメイド達は、泣いているドラグ達を見てメイド達も泣き出した。メイド達は、ドラグ達が私達12人の為にルーク様にお願いして、それを聞き入れてくれたから、ドラグ達が泣いているのだろう。つまり、私達12人の為にドラグ達が泣いていると勘違いしている。本当は俺の信頼に対して泣いているのだが…。っていうか
「お、おいおい…こんな所で泣くな!」
「も、申し訳ございません。ご主人様にそこまで思っていただけて、わたくしは幸せでございましたので、つい涙が…」
ルビーとシーナも頷いている。信頼されているだけで、そこまで泣かれた事がないからどうしていいか分からないんだよ。
「そ、そうか…。マナリアさんも給金は大丈夫だ。全て俺が払うので」
「そうですか。分かりました。私も、もう少し若ければ、ルーク様に仕えたいと心から思いました。この子達は幸せ者ですね。こんな良い主人様に恵まれて」
「そう言っていただけるとありがたいです」
俺はメイド達の方へ向く。
「自己紹介は後にする。まずは俺の屋敷に行く」
「「「「「はいっ!」」」」」
「マナリアさん、12人のメイドを契約します」
「畏まりました。ルーク様、この書類にサインをお願いいたします」
渡された書類には12名のメイド達の名前が書かれている。その下に俺はサインする。
「これでいいか?」
「はい、大丈夫です。では、この子達をお願い致します」
「分かった。ではお前たち行くぞ」
「あなた達、頑張るのよ」
「「「「「はいっ!」」」」」
俺は守護王達とメイド達を連れてメイドキッサを出て、俺の屋敷に向かう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
守護王達とメイド達と連れて俺の屋敷に向かい、俺の屋敷に到着する。
「お前達、ここが俺の屋敷だ」
「えっ?ここって…」
「この王都で売られている屋敷の中で一番高いお屋敷ですよね…」
「やはり、ご主人様はただの冒険者ではありません」
メイド達はざわざわして驚いてる。まぁ無理もないな。Bランクの冒険者がこんな屋敷を持っているのだからそりゃ驚くか。だが驚いているところ悪いが、この大きな屋敷の前で、こんな大勢でガヤガヤしていたら、周りから変な目で見られるからさっさと中に入るか。
「とりあえず中に入ろうか」
俺達は中に入り、庭まで歩く。庭の真ん中まで歩いたら俺は振り返り、メイド達を見て口を開く。
「ドラグ達に選ばれたメイド達。まずはおめでとう…と言いたいところだが、実はまだ採用ではない。俺の中では仮採用だ。発言したい者がいるのなら許可する」
俺がそう言うと、メイド達はかなり驚いている。まぁ仕方ない。メイドキッサでは雇うと言ってしまったからな。だが、俺の下で働くならやってもらわないといけない事がある。
「ど、どういう事でしょうか?」
「まだ俺の中では正式に雇うとは決めていない。これから最終試験を行う。もしこれを受け入れる事が出来たら正式に雇うと決める」
「最終試験とはどういったものでしょうか?」
「そこまで難しい事ではない。契約魔法を使うので受け入れてもらう」
「け、契約魔法ですか…」
またメイド達はざわつきだす。無理もない。もし、契約魔法で一生逆らえず、俺の命令は絶対で、いかがわしい命令をされたらとか考えてしまうものだ。だが俺のメイドになりたいのなら、契約魔法を掛けなくてはならない。
半年に一度マナリアさんがこの屋敷に様子を見に来るのだが、その時手の甲に契約魔法の紋章があれば、何か言ってくるのは目に見えているが、これだけは譲れない。まぁ、マナリアさんなら話せば分かってくれると思う。別にいかがわしい命令をする為に使うのではなく、流されたくない噂があるのだ。こればっかりは仕方ない。
「安心しろ。いかがわしい事や監禁など、そんな事の為に使用するわけではない。俺が信じれなければ、辞めてもいい」
「ご主人様はこうおっしゃっていますが、ご主人様はそういう事をするようなお方ではありません」
ドラグも後押ししてくれる。
「契約魔法の内容は言えないのでしょうか?」
「そうだな…誰が聞いているか分からないので、ここでは言えない。俺を信じて、俺のメイドになるか、今ここで俺のメイドを断念するか選んでもらいたい」
難しい選択だ。俺の言ってる事は本当かどうか分からない。ドラグも、俺はそういう人ではないと言ってはいるが、ただの口約束ではそれを証明できない。メイド達の答えが出るまで少し時間は掛かるか。と思っていたが
「私は契約魔法を受け入れます!私の勘ですけど、ご主人様はいかがわしい事をするようなお方ではないと私も思いますので!」
1人のメイドが口を開いた。そのメイドに便乗してか、次々に他のメイド達も契約魔法を受けると覚悟を決めた様な顔で言う。まぁ貴族にも、誰にも言ってはいけないような秘密もあると思うが、俺は契約させるぐらいの秘密だから、怖いかもしれないな。さて、後は2人だけだ。しかし真っ先に声を上げた、あのメイドは何て名前だろう。気になる。
「わ、私は…その……」
「もしかしたら嘘かもしれませんよ?」
「えぇ、そうかもしれません。でもそうじゃないかもしれません。私は嘘じゃないと信じています。もし何かあれば私が守ります。ですので、一緒に頑張ってみませんか?」
「リシアちゃんがそう言うなら頑張ってみます」
「はぁ、分かりました。みんな契約魔法を受けるのに、私だけのこのことメイドキッサに戻れないですからね」
そうか。みんなを引っ張ると言った、最初に声を上げたメイドはリシアというのか。覚えておくか。
「ではみんな受け入れるという事で良いんだな?」
「「「「「はいっ!」」」」」
「分かった。ではついてきてくれ」
俺達は地下に向かう。メイド達はなぜ地下に?って顔をしながら不安になっている。まぁ不安になるのは分かる。ついて来てくれと言われ、ついていったら地下なのだから。地下というのは、罪人が捕らえられて牢屋に入れられる場所、つまり良い所ではないと相場が決まっている。不安になってしまうのは仕方ない。
「ここは罪人などを捕らえておく場所だ。用がある場所はこの先だ」
そう。俺がメイド達に見せたい物は転移門の事だ。隠しておけばいいかもしれないが、遅かれ早かれ見つかるだろう。それに、この屋敷は何も守護王達だけで使うわけではない。この屋敷はヴィーナ達、偵察部隊や暗殺部隊の拠点にもしたい。なので守護王達以外にも出入りする者が当然出てくる。
いきなりこの屋敷に知らない者がいたら騒ぎになってしまう。ならいっそ、初めから教えればいいのだ。だがトワイライト王国の事は、世間にはまだ知られたくはない。転移門の事もだ。なのでトワイライト王国と転移門の事は喋らないという制約を契約魔法で掛ける事にする。
そしてルーク達は拷問部屋に着く。
「ここは拷問部屋だ。中に入ってくれ」
「わ、私達、拷問されるのでしょうか…?」
「い、言ったでしょう?その時は私が守ってあげるって…」
「全く…。拷問なんてするわけないだろ?」
「で、でしたらなぜここに?」
「いいから早く入れ。入れば分かる」
いや入ったとしても理解できないだろうが、口頭で説明するよりも、実際使って教えたほうが分かりやすいだろう。俺はメイド達を無理やり拷問部屋に押し入れる。ようやく全員入った。すると中からメイド達の大きな声が聞こえる。
「な、なんですかこれ!?」
「門?の中に違う景色が見えます!」
「一体何なのでしょうか?」
「俺が見せたかったのはそれだ。それは転移門という」
「転移門ですか?」
メイドの中の中心人物?リシアが聞いてくる。
「まぁ要するに、遠い場所を一瞬で行き来することが出来る門だな。この門の中は俺のもう1つの家みたいなもんだ」
「この屋敷の他にもう1つ家があるのですか…!」
「とりあえず中に入ってみるか」
「だ、大丈夫なのですか?」
「問題ない。何なら俺が手を繋いでやろうか?」
「お、お願いいたします!」
「わ、私も!」
「ずるいです!」
言い合いになってしまった。俺ってそこまで人気なのか?
「そう喧嘩するな。何回も往復すればいいだけだからな」
俺の両手にメイド達を2人ずつ連れて、転移門を潜る。それを6回往復して、12人のメイド達をトワイライト王国に連れてくる。
メイド達はいきなり景色が変わって驚いているが、今日中にまだやりたい事があるから、テキパキ動いてもらう。
「ここは転移門部屋だな。ついてこい。見せたいものがある」
俺はメイド達を連れてトワイライト王国、王城の2階東側にあるバルコニーに向かう。ここは俺が民達に演説をした場所だ。バルコニーは大きな透明な窓があり、その窓を開いてバルコニーに出る。
バルコニーからはトワイライト王国が一望できる。そして東側にある大きな正門も見える。
「お、王都じゃない?」
「す、凄いです!」
「ここはトワイライト王国だ。そして俺の国だ」
俺がそう言うと、メイド達は目を白黒させている。
「お、俺の国?ま、まさかご主人様って…」
「そういう事だな」
「「「「「えぇー!!」」」」」
驚いているな。無理もないか。Bランク冒険者から王になったのだから。さて、メイド達にはこれからの事を伝えないといけないな。どこから説明するか…。俺は頭を悩ませるのであった。
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