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メイド喫茶?いえ、メイドキッサです。


「よし、これでいいですかね?」


「はい。大丈夫です」


俺はミルハイムさんから渡された、2枚の書類にサインをする。


「1枚はお持ちください。前にも言いましたが、その書類はこの屋敷の所有者の証明になりますので」


「分かりました」


「しかし、まさかこの屋敷をルーク様が買うなんて思っていませんでした」


「ミルハイムさんも知っての通り、俺のパーティとセレスのパーティのメンバーは家族みたいなもんですからね。小さい屋敷だと俺達だけで部屋が埋まってしまいますから」


本当はヴィーナ達の拠点とかに使う為、ヴィーナの配下達もこの屋敷で寛ぐだろうから、大きな屋敷がよかったのだが、それは言えないので黙っておく。


「パーティ全員で12人でしたね。確かに小さい屋敷だとパーティだけで部屋が埋まってしまいますね」


「そういう事です。あっ、ミルハイムさんこれを」


俺はミルハイムさんにアイテムボックスから金貨4500枚を出す。金貨は麻袋で出来た袋に入れられており、袋の中には金貨1000枚ずつ入れらている。その金貨袋を5つ出す。


「この袋の中に金貨1000枚ずつ入っていると思うので確認お願いします」


「分かりました。少し時間が掛かりますが大丈夫でしょうか?」


「問題ありません」


ミルハイムさんは金貨を数えだす。いま俺達が話している場所は庭で話している。セレスが即席で作った木の丸いテーブルと椅子に座っている。少し時間が掛かったが、ようやくミルハイムさんが金貨を数え終わる。


「金貨4500枚、確かに頂きました。こちらはあまりの金貨500枚です」


「ありがとうございます」


俺は金貨500枚が入った袋をアイテムボックスに入れる。ちゃんと金貨500枚ある。疑っているわけではないが、こういう所を疎かにしてはいけないので、確認はしておく。それはそうと、これほど大きい屋敷は掃除とか大変だ。ってことである事を聞いておかなければならない。


「ミルハイムさん、聞きたい事があるのですが」


「はい?何でしょうか」


「貴族の方はメイドなど、どうしているのでしょうか?何処かで雇える場所があるのでしょうか?」


メイドはトワイライト城にもエール達がいるのだが、出来るだけこちらに呼びたくないんだよなぁ…。トワイライト城にいるメイドは、最古参のメイドを合わせて20人しかいない。いやこの場合は20もいるといった方がいいのだが、トワイライト城は勿論この屋敷よりも大きいので、こちらに割けるメイドはいないんだよ。


「貴族街にメイドを雇える場所があるのですよ。冒険者には、冒険者になりたい者が、子供の時から通う冒険者学校があるのですが、メイドにもメイドを育成する学校みたいな場所があるのです」


「そうなんですか。そういう場所があるのですね」


「ちなみにメイドの学校みたいな場所は、この王都では1つしかありません」


「なるほど。そのメイド学校?には名前はあるのですか?」


ミルハイムさんは先ほどから学校みたいな場所といっているので、メイド学校ではないのだろう。冒険者学校は冒険者になる為のノウハウを教え、そして冒険者の基礎が出来たのなら、その学校から卒業という形で送り出す。まさに学校と呼んでいい。


だがメイド学校はそうじゃない。メイドとしての基礎を叩きこみ、1人前になればその店で雇われるのを待つのだから、確かに学校と少し似ているが、卒業ではなく仕事を貰う為にその店にいる事になるのだろう。だから学校ではなく店となるのだろうが、その店にも名前はあるのだろう。だったらメイド学校というより、そのメイドを雇える店の名前を知りたい。


「はい。もちろんありますよ」


「そのメイドを雇える店?の名前を教えてもらえますか?」


「構いませんよ。メイドを雇える店の名前は【メイドキッサ】といいます」


「…は?今なんていいましたか?」


メイド喫茶?…あれ?俺の耳がおかしくなったか?この異世界ではおおよそ不釣り合いな言葉を耳にしたが…。


「ですから【メイドキッサ】ですよ」


俺の耳がおかしくなったわけではなかった。本当にメイド喫茶と言ってるよ…。


「メイド喫茶?食事を出して、その食事に美味しくなる魔法とか掛けますか?」


「申し訳ありません。私はルーク様が仰っている事が理解できないのです。【メイドキッサ】はメイドを雇うお店です。それに食事を美味しくする魔法があれば、そのお店は間違いなく有名になってますよ。そんな場所があるなら是非、私も行ってみたいものです」


「ははっ…。そうですよねー。オレモイッテミタイデス」


誰がこんな名前付けたんだ?…いや大体想像がつく。恐らくは過去にいた勇者だろうなぁ…。まったく紛らわしい名前を付けやがって。いや、今の話からメイドを雇う場所ってのは分かっていたけど、その名前からして聞かずにはいられないだろう。


「それはそうと、そのメイドキッサの場所を教えてもらえませんか?」


「お安い御用です。メイドを雇うのですか?」


「はい。そのつもりです」


「まぁ、これほど大きな屋敷ですからね。雇って当然ですね」


ミルハイムさんが紙にメイドキッサの場所を書いて渡してくれる。そりゃこんな大きい屋敷だから雇うよ。プリンの配下のスライム達に掃除してもらえば早いのだが、万が一、他の人に見られれば騒ぎになる。従魔の登録もしてないから魔物に間違われるだろうし、見つかれば面倒だ。


「ありがとうございます」


「いえ、ルーク様にはお世話になっておりますが、これぐらいしか出来る事がありませんので」


「それで充分ですよ。俺は助かっています」


それにミルハイムさんはこれぐらいしかといっているが、マリナの店を開店する時や、新商品を出す時は必ずミルハイムさんが宣伝してくれている。それはかなり助かっている。これぐらいなんて俺は思っていない。


「そう言っていただけるとありがたいです」


「あぁ、それと物置小屋を借りていたと思うのですが、契約を解除したいのですが」


「畏まりました。こちらで契約を解除させていただきますね。他には大丈夫でしょうか?」


契約解除には特に手続きは必要なく、契約した時の鍵を返すだけで、後はミルハイムさんが契約解除してくれる。本来、契約解除をする際は、手続きの前にミルハイムさんもしくは従業員が契約していた家を見に行き、家が破損していないか等を調べるのだ。


まぁ、俺が借りてた物置小屋は破損してもそこまで修繕費は掛からないし、わざわざ見に行く程でもないと思ったのか、これもミルハイムさんのご厚意なのか。そんな事を考えながら物置小屋の鍵を返す。


「はい。他に用事はありませんので大丈夫です」


「分かりました。では、私はこの辺でお暇させていただきます」


「また、時間がある時は誘いますね」


「はい。その時はお願いいたします」


ミルハイムさんは帰っていく。さて、家を購入して色々とやる事があるので1つずつ終わらしていこうか。


「一度トワイライト城に戻る。お前達はここに残ってもいいぞ?すぐに帰ってくるからな」


「ウチはここで待ってるわ!」


「では私も」


「ボ、ボクも待っているのです」


「わたくしはお供いたします」


「そうか、わかった。ではドラグだけついてきてくれ」


「畏まりました」


俺はアイテムボックスから迷宮攻略に使っているテントを庭に出す。このテントの中にも転移門があるから、いつでもトワイライト王国に帰ることが出来る。何も無い所から、テントが出てくるところを見られるのはマズいのだが、この屋敷の周りの塀は高いから見られる事はないだろう。


俺とドラグはテントの中に入り、トワイライト王国に戻るのであった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ドラグ、執務室に向かう」


「はっ!」


「…っとその前に」


俺は物置小屋と転移門部屋を繋いでいる転移門の装置を止める。転移門は一度きりの使い捨てなので、転移措置を止めると自動的に転移門が消滅する。物置小屋の中にある転移門は今頃、跡形もなくきえているだろう。


「よし行くか」


ドラグと一緒に執務室に向かう。執務室に着いて中に入ると、イーリスとアルマ、そしてエールが仕事をしていた。


「ルーク様にドラグ様!お帰りなさいませぇ!」


「戻ってこられると一言いえばお出迎えに出向いたのですが」


「ルーク様、ドラグ様お帰りなさいませ」


「エール、イーリス、アルマただいま。いやまぁ、すぐに王都に戻るんだがな。王都で新しい屋敷を買ったのだが、その屋敷に転移門を繋ぐ為に戻って来ただけだ」


「屋敷を買ったのですかぁ!?わたしも見てみたいですぅ!」


「あぁいいぞ?ほかのメイド達も来たいならいつでも。もしかしたらこっちでも働いてもらうかもしれないからな。それよりエール、ルビーとシーナを呼んできてくれ」


「畏まりましたぁ!」


エールは勢いよく執務室から出ていく。さてその間に転移門を2つと砂糖と塩を10キロずつ買う。


「ご主人様、この砂糖と塩は何に使うのですか?」


「あぁ、これは両隣の家と向かいの家の人に、これからお世話になるからその挨拶と手土産を渡すんだよ。近所付き合いはなるべく仲良くしたいからな」


「なるほど。そうやって人間共を手駒にしていくのですか」


「いや、イーリスしないからな?俺のいた世界ではそれがマナーなんだよ」


「ご主人様がいた世界ではそれが常識なのですか。覚えておきます」


いや別に覚えておかなくてもいいのだが。この世界に引越ししてきた挨拶に、手土産を渡すという文化があるかどうか分からないし。まぁ隣人には悪いようには思われたくないし、そもそも隣人といっても貴族だからな。俺は平民だし、平民が隣に引越ししてきて、貴族様に挨拶もないのか?なんて目を付けられるのも嫌だし。


まぁただの平民があの大きな屋敷を買うなんて色々おかしいと思うが。そんな話をしているとエールがルビーとシーナを連れて戻ってくる。


「ルーク様戻ってきましたぁ!」


「「ルーク様お呼びでしょうか?」」


「きたか。実は王都に新しい屋敷を買ったのだが、かなり大きい屋敷でな、トワイライト王国にいるメイド達はこっちで手一杯だから新しくメイドを雇おうかと思ってな」


「ルーク様…。私達がいながら他のメイドを雇うなんて…」


「仕方ないだろ?思ったより大きい屋敷だったんだから。新しくメイドを雇ってもエールは俺の専属メイドだからな」


「はい!がんばりますぅ!」


エールが単純な奴で良かったよ。


「で、ルビーとシーナを呼んだのは手伝ってほしい事があるからだ」


「手伝ってほしい事ですか?」


「いったい何でしょうか?」


「王都にはメイドを育成してる店があってな。そこでメイドを雇う事になるんだが、俺は誰を雇ったら良いか分からないからな。雇うなら出来るだけ、出来のいい子を雇いたい。そこで雇う場合はルビーとシーナに選んでもらいたいと思ってな」


トワイライト王国に戻って来たのはお隣さんの挨拶の手土産を持ってくるという事もあるが、これが本命だ。メイドの事など全く分からないド素人が選ぶより、プロに選んでもらった方が確実だから、ルビーとシーナに頼もうと思ったのだ。エールは…ルビーとシーナがいない間はこの王都のメイド達を仕切っていて貰おう。


エールはドジだからといえば落ち込むし、最悪泣いてしまう事が目に見えている。


「そういう事でしたらお供いたします」


「ですがルーク様、雇うだけならドラグ様だけでも良いのではないでしょうか?」


「確かにドラグでも大丈夫だと俺は思うのだが、ドラグは常に俺と一緒にいるからな。ルビーとシーナは一緒に仕事をするかもしれないだろ?だからルビーとシーナにとってやりやすいというか、気が合うメイドを雇ってくれてもいい」


「なるほど。分かりました。私達もお供いたします」


ルビーとシーナもついて来てくれると了承を得たので、あとはエールだけだ。


「エールはここに残ってくれ」


「なんで私だけ置いてけぼりなんですかぁ!」


「落ち着け。ルビーとシーナがいない間はエールがリーダーなんだからな?俺はエールが他のメイドを引っ張っていけると信じているぞ」


「ルーク様…!私はルーク様の期待に応えて見せます!」


やはり、エールは単純だな。単純で良かった。


「では任せたぞ?ルビーとシーナは新しい屋敷について来い」


「「畏まりました」」


俺達は王都の屋敷に戻ってからメイドキッサに行く事にする。少し楽しみだな。



読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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