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手を出さない者達と手を出す者達


※登場人物が多いのでセリフの横に名前の頭文字を


ここはとある執務室。執務室にしてはかなり広く、置かれている調度品は財力を見せびらかす様な、目がチカチカする物ではなく、質素だがどこか歴史があり、違う意味で高そうな物ばかり置かれている。


調度品から見て、地位が高い者の執務室だという事がわかる。その執務室で2人の男達が話している。1人は机に向かい、髪の毛は白く、それなりの歳だと分かる。


だが歳相応のヨボヨボの体ではなく、筋肉がついていて引き締まっている。そして威厳があり、眼光が鋭く、つい跪きたくなる者だ。


その者は執務室なのに鎧を着けていて、赤のマントを羽織っている。


そしてもう1人は、机に向かっている者の横に立っている。その者は机に向かっている者より老けているが、こちらもそれなりに筋肉はついていて、執事みたいな服を着ている。


そして机の横で立っている者が口を開く。


「如何致しましましょうか?陛下」


椅子に座っている陛下と呼ばれた者こそ、冒険者大国ハルバードを統べる王。ダグラス・フォン・ファルシオン・ハルバード。


このハルバードという名は冒険者大国では、唯一王だけに与えられる名前で、王の子供だったとしてもハルバードを語る事はできない。ハルバードを語るなら王位継承で王を引き継いだ者にしか語るのを許されていない。つまりこの執務室の椅子に座っている者は正真正銘この冒険者大国の国王である。


「お前はどう思う?デイビス」


そう呼ばれたのは宰相デイビス・マクドネル侯爵。侯爵といえば貴族の中では位が高く、上級貴族にあたる。王家、公爵の次に発言力が高いのだが、デイビスは宰相という事で、他の侯爵よりも発言力はある。その発言力は公爵と同等、場合によっては公爵よりも発言力が強くなる。宰相デイビスは頭が相当切れ、昔は武のダグラス、知のデイビスとまでいわれていた。いつも王ダグラスの相談役になっているので、王からの信頼はかなり厚い。


「はっ。最高品質のポーションは迷宮でしか手に入りません。それは何故か、最高品質を作れる者が、このナルグランデ大陸には存在しないからです」


「うむ」


「ですが、トワイライト商会で売られている最高品質の下級ポーションと下級魔力ポーションは、数に限度があるとしても、かなりの数が売られています。迷宮で集めるのには人も時間も掛かりすぎます。恐らくは最高品質を作れる者がトワイライト商会に居るのでしょう」


ダグラスは少し思案してから答える。


「やはりお前もその考えに至るか。最高品質を作るには無属性魔法が10でないとならない。どんな魔法スキルでも過去に、10に達した者はいない。勇者でさえもな」


「はい。ですが〈マリナの道具屋〉に置かれている最高品質のポーションの数を見れば、作れる者がいるといっている様なものです。恐らくトワイライト商会もそれを分かっていながら、最高品質のポーションを売っているのでしょう」


「そうだな。是非、余の下で働いてほしいが…」


ダグラスの顔は険しくなる。


「危険と…?」


「左様。強引に連れてくればトワイライト商会の機嫌を損ねてしまうやもしれぬ。手荒な真似はしたくはない。相手は無属性魔法を極めし者がいるのだ。攻撃魔法がなくても、どんな事をしてくるか分からぬ」


「確かにそうですね。…それとこちらを」


デイビスがダグラスに渡したのは、トワイライト商会で売っている最高級紙だ。


「ふむ。これは…?」


「これはトワイライト商会の〈レナルドのなんでも屋〉という店に置かれています、最高級紙といわれる紙です」


「最高級紙?」


「はい。高級紙よりもさらに品質が良くなっております。値段もそこそこしますが、高級紙の値段と比べると妥当ではないでしょうか。一度手に取って確認してみてください」


ダグラスは最高級紙を1枚手にとって触ってみる。


「ほう。この最高級紙の肌触りはなんという滑らかさなのだ」


ダグラスは羽ペンを持って試し書きをしてみる。


「高級紙ならザラザラして書きにくいのだが、これはかなり書きやすいな」


「まさに高級紙より品質が良いので最高級紙と呼ぶに相応しいですね」


「余もこれからはこの紙を使うとしよう。これで仕事もやる気が出ると言うものだ」


「分かりました。手配しておきます。それと〈マリナの道具屋〉の方ですが、最高品質のポーションの他に、マッチという物が売られております」


「マッチとな?」


「はい」


そう答えるデイビスだが、顔を曇らせて思案する。


「ただ私も実物を拝見したわけではないので何とも言えませんが、なんでも火の魔道士がいなくても、簡単に火を起こせるという便利な道具です」


「ほう。それは便利だな」


「はい。ですので、今はかなり売れて、既にこの王都では知らない者はいないぐらい有名になってますね」


「うーむ…。トワイライト商会は最近出来た商会ではないのか?」


「最近出来た商会ですが、かなりの急成長を遂げていますね」


「やはり新商品を売り出す事で、かなり名が知れ渡ったか」


「今やトワイライト商会を知らない人の方が珍しいですね。しかしトワイライト商会の代表を見た者はいないのですよ」


ルークは元々見た目が、まだ若い成人男性みたいな見た目なので、ルークがトワイライト商会の代表だとだれも思っていない。


「そうだな」


「して、如何致しましましょうか?このトワイライト商会に監視など付けておきますか?」


「いや、やめておけ。先程も言ったが、相手は無属性魔法を極めし者がいる。恐らくは索敵の魔法も使えるだろう」


「なるほど。では放っておくと?」


「うむ。仕方あるまい。余達はあくまで客として付き合えば良い。トワイライト商会に手を出し、最高級紙など買えなくなる可能性もある。この最高級紙は余も今後は使っていきたいからな」


「分かりました。では()()放って置く事にしましょう」


「うむ。それが良かろう」


「では、私は最高級紙を買う手続きをしてきますので、一度失礼致します」


デイビスが執務室の部屋から外に出る。1人になったダグラスは静かに呟いた。


「次々と新しい商品を出すトワイライト商会…いったい何者なのであろうか…」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


マリナの道具屋を開店してから2ヶ月が経った。2ヶ月で変わった事は色々ある。まず、レナルドの店やマリナの道具屋は既に王都ではかなり有名な店となっており、トワイライト商会の象徴の、夕日に妖精のシンボルマークは王都では知らない者がほとんどいない。


マリナの道具屋に置いてある最高品質のポーションは入荷1日目で全て売り切れてしまっている。基本5日後に入荷しているのだが、冒険者達からは入荷日をもう少し早くできないか?それか売るポーション数をもっと多くならないか?と要望が来ている。


これは正直まだ様子を見たいというのが本音だ。簡単に要望を受け入れてしまうと次も次もと要望がきてしまう。それは避けたい。


マッチの方も未だに1日10万本は売れる時がある。安いので買い溜めする者が増えている。ちなみにマリナの取り分はレナルドと一緒で、1ヶ月に売り上げた2割をマリナに渡している。


マリナもこれでは高すぎると言っていたのだが、何とか説得して2割で落ち着いた。


レナルドの店は最高級紙を新商品として出した。最初は値段が高いのでそこまで売れなかったのだが、ミルハイムさんの宣伝のおかけで少しずつ有名になり、今では最高級紙を買う貴族が多い。


特に最近では直接買うのではなく、2日後に何千枚用意してくれ。みたいな予約注文が多くなってきている。もちろん最高級紙の何千枚は、最高級紙1枚、銀貨5枚だから、かなり高額の取引になっている。


今では、使わずに置いてある金貨は7千枚ぐらいある。だがまだまだトワイライト王国をこの世界の通貨にするには足りなすぎる。


迷宮の方もこの2ヶ月でかなり進み、20階層を到達し、俺達はBランク冒険者に上がっている。20階層のボスはオーガや、その他だが守護王達に呆気なく倒されていた。まぁ実力が違いすぎるから無理もない。


20階層のボスの宝箱もそこまで良い物が入っていなかった。冒険者のランクを上げるには、試験を受けないといけないのだが、迷宮到達階層であげるなら免除するとの事だ。さすがに、特種昇格試験は免除出来ないが。とまぁ2ヶ月でかなり色々な事が進んだ。


いま俺は、イーリスや守護王全員を集めてトワイライト王国の会議室にいる。


「ようやく仕掛けてきたか」


イ「そうですね」


セ「遅かれ早かれこうなる事は予想できたわぁ」


タ「むしろ予想より仕掛けてくるのが遅かったのだよ」


ト「そうじゃのう。儂はもう少し早いかと思っていたのう」


レ「何にせよ、レナルドやマリナ達が襲われたのじゃ。早急に対処が必要じゃな」


ド「恐らくは闇ギルドの者かと」


ヴ「最高級紙も高級紙を売ってる者からしたら、高級紙の売り上げを奪ったといっても過言ではないでありんす。恨みも買いなんし」


ス「…マリナ達を傷付けるのは許さん」


プ「そうなのです!リリナちゃんやエリナちゃんが危ないなのです!」


ル「ん。ルーク様の敵、斬る」


リ「せやなぁー。襲ってくる奴全員倒せばいいんやないん?」


「俺も闇ギルドの連中だとおもうし、レナルドやマリナ達の危険を脅かす者は放ってはおけない。全員潰すつもりだ」


闇ギルド。違法な道具や素材を扱ったり、誰かを殺してくれなどの暗殺の依頼を頼まれたりと色々な悪事に手を出して儲けている。


今の王都ではかなり巨大な闇ギルド組織がいくつかあり、それを摘発するとなると大規模な戦闘は避けられない為、国も手が出せないでいる。


「だが襲ってくる奴を全員倒せばいいかもしれないが、それではずっと襲ってくるだろう。根本を叩かない限りな」


イ「ではどうするのですか?」


「俺も闇ギルドを作ろうか。闇ギルドを率いるのはヴィーナに任せる。主に偵察と暗殺をだな」


ヴ「これは楽しい仕事になりんす!」


セ「ヴィーナにはピッタリな仕事ねぇ!」


「闇ギルドには拠点も必要となる。それに、そろそろ物置小屋でトワイライト王国を行き来するのは面倒くさい」


ド「そうですね。こちらに戻ってくる為だけに、王都の中央東通りの奥にある物置小屋まで行くのは時間が掛かりすぎますね」


ル「ん。歩くのいや」


ト「そりゃお前さんだけじゃろルーシー」


「なので新しい屋敷でも買おうかなと。俺やイーリス、守護王達の王都での拠点と、闇ギルドの拠点を一緒にすればいいんじゃないかってな」


タ「それはいい考えなのだよ。相手の闇ギルドにこちらの拠点がバレたとしても、手も足もでないのだよ」


レ「そうじゃな。現にレナルドとマリナ達は無傷じゃからな。妾の魔道具が役に立ったのじゃ。新しい屋敷にも魔道具の結界を張れば、闇ギルドの連中ならまず近付けんじゃろ」


プ「それはいい考えなのです!」


リ「なんや真っ向勝負せえへんのか。つまらんなぁー」


ス「…リル。…つまらないならヴィーナの手伝いをすればいい」


リ「ほんまや!ウチも暗殺に加わりたいわぁ!」


ヴ「まぁリルの力があれば全然問題ないでありんすぇ」


「とまぁ、そういう事だから。ヴィーナにはどんな闇ギルド組織があるのかも調べてもらいたい」


ヴ「了解いたしんす」


「ではこれにて会議を終わる。解散!」


各々が部屋を出ていく。ちなみにレナルドとマリナ達を襲った者は、いま王都にいるヴィーナの偵察部隊、テイエイ達が処分した。レナルドやマリナ達はレイアが作った守りのネックレスがあるから無事だった。


さて、やる事が決まったから早急に動かないとな。早くレナルドやマリナ達を安心させねばならない。またいつ襲ってくるかもわからないからな。俺も動き出すのであった。



読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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