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幕間 アルマの変化


「よし。これで最後っと」


私の名前はアルマ・レングラシス。少し前までミルハイム大商会の高級奴隷として売られていたのですが、とあるお方に買われました。


そのとあるお方というのがルーク様です。私はミルハイム大商会の高級奴隷としては、かなり安い値段で売られていました。それは私が魔人族なので人間には全く売れないからです。ですが、他の高級奴隷よりも安く、人間にも全く売れなくても私はそれでも全然良かったのです。


むしろ売れたくないと思っていましたから。


人間は魔人族を忌み嫌いますからね。なので売れたとしても、私を買った人間は何をするか分かりません。慰み者にされてしまうぐらいなら、ミルハイムという男の下にいる方がまだ安心です。


正直、人間がなぜ魔人族を忌み嫌うのか理解できないです。確かに私達、魔人族は魔物を飼いならす事をしていますが、それは人間も同じこと。それに魔物を使役して、戦いの道具として扱う者もいるぐらいです。私達とやっている事は同じなのにどうして虐げられなければならないのでしょうか?


まだ私の親が生きている時に聞いた事があります。最初に攻撃を仕掛けてきたのは()()()だと。私の親は魔国にある書庫で魔人族の歴史について調べていたのですが、どの歴史の本にも人間が攻めてきたと書かれていた。


人間がどういった理由で魔人族、魔国を攻めてきたのかは分かりません、ですが、急に攻めてこられては戦う準備を全くしていなかった魔人族はパニックになり、ただ逃げ惑うだけで、指揮系統が整った頃には魔国は半壊していたとのこと。女も子供も関係なく殺され蹂躙したとか…。


そこから生き残った魔人族は人間を恨み敵として定めた。それは子供が生まれ、物心がつく前から教えられる事で、人間を見たら逃げる、近くの大人に知らせるなど一番に教えられる事だ。私も親からそう言われ育ったのですから。


だから人間に買われても明るい未来などないと思っていました。


ですが、ルーク様は5人居た高級奴隷から、迷わず私を選んでくれました。その時の私は人間に従うなんて考えられなかったので、言葉でですが抵抗してしまいました。


正直、高級奴隷の生活はそこまで悪くはありませんでした。だからどこの誰かも分からない人に買われるのが嫌だったんです。体目的って事もありますし。


まぁルーク様に「お前に拒否権はない」といわれてしまいましたが。


その後も、私はルーク様に失礼な事を言ってしまいましたが、フェンリル様とドラグニル様を怒らせてしまいました。あの時のフェンリル様とドラグニル様は凄くて、私死んだなって思ったぐらいですからね。具体的にどう凄いかは伝えるのが難しいのですが、私の本能が死を受け入れたと言えばいいでしょうか?逃げる?とんでもない。逃げたところで数秒長く生きるだけ。逃げても死ぬ。


種族としての格が違う。例えるなら絶対的王者。そんな方達を怒らしてしまったのです。なので私の体は、本能は死を受け入れたといった方が言葉的にしっくりくると言いますか。あぁ、もちろん逃げるという選択をしても、体は全く動きませんでしたが…。


今ではなんて馬鹿な事をしたのでしょうかと、あの時の私を叱りたいぐらいですね。


先程まで死ぬかもしれないと思っていたのですが、その後の事で私は驚いてしまいました。1つの小屋?の中には転移門という装置があり、その装置でこのトワイライト王国に来たのですが、最初は転移門を通過した後も、まだ王都にいると思っていました。ですが王都ではないと聞かされてびっくりしました。 


そしてすぐに謁見をする事になったのも驚きましたし、ルーク様が王という事にも驚きました。そしてその後、みんなで食事をしたのですが、その食事も凄く美味しかったのにも驚きました。本当に驚きの連続です。


肝心の私の仕事は次の日からだったのですよ。私はトワイライト城の部屋を1つ貸してもらい、そこに泊まりました。布団はかなりふかふかでしたね。それとお風呂も毎日入れると聞いた時には、今日何度目か分からない驚きをしました。


次の日、仕事を教えてもらうのですが、ルーク様やイーリス様、守護王様は迷宮攻略に行くので、違う方に教えてもらう事になりました。その方はルビー様とシーナ様という方で、このお二方はトワイライト王国のメイド長をされているとか。


確かあの時は……


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「今からアルマには執務での仕事を教えるけど、その前にまずこの場所についてお話しするね」


「薄々気付いているかもしれませんが、ここはトワイライト王国という国ですわ。決して王都ファルシオンでは無いですわ」


「トワイライト王国?」


そう目の前の女性、メイド長のルビー様とメイド長のシーナ様は教えてくれる。それにしても聞いた事がない王国です。何処にあるのでしょうか。


「ここはカトラスの街から南西にある、迷いの森の中にこの王国があるのだけど、なぜここにあるかは言えないんだよ」


「まずアルマに教えるのはこのトワイライト王国についてよ。このトワイライト王国の王だけど、アルマも知っての通り、ルーク様がこの国の王ですわ」


「1つ疑問なのですが、なぜ王自ら王都ファルシオンにいるのですか?一国の王ならば狙われたら大変じゃないですか?」


「それは良い質問ね。ルーク様には守護王様が常に、側についているから狙われても大丈夫なのですわ」


「守護王様?」


「そう、ルーク様やこの国を護る方達の事を守護王と呼ぶんだよ。守護王と呼ばれている方は10人いるから、くれぐれも失礼の無いようにね」


なるほど。ルーク様の側には常に守護王様がついているのですか。……ん?もしかして私が怒らせてしまった方も…。


「あの…その守護王と呼ばれている方に、狼の獣人と執事はいますでしょうか?」


「それはフェンリル様とドラグニル様ですわ。ドラグニル様は私達メイドを束ねるお方です。その方達がどうかしましたか?」


「実は…」


アルマはフェンリルとドラグニルを怒らせてしまった事をルビーとシーナに伝える。


「アルマだっけ?あなたとんでもない事をしているね」


「命があっただけでも良かったですわ」


「その時はルーク様に助けられましたが…」


「ルーク様は優しいからね」


「とまぁ、このトワイライト王国には10人の守護王がいますわ。そしてもうお一方紹介しなければならないお方が、イーリス様です」


「イーリス様?」


「そう、イーリス様はルーク様の側近にして、守護王様を束ねるお方だよ。イーリス様の仕事は主に執務室でするから、今後イーリス様と頻繁に会うことになると思うよ」


守護王を束ねるお方…。私は守護王様を怒らしたけど、大丈夫なのでしょうか?私は少し不安になる。


「とりあえずトワイライト王国で紹介しなければいけないのは紹介しましたわ」


「次は仕事について教えるから覚えてね。仕事については…」


私のこれからの仕事について教えられる。仕事はそれほど難しくはない。ルーク様がサインを書く書類なのだが、急ぎか急ぎではないかを分けるだけだ。初めはどの書類が急ぎか急ぎではないか分からないので、ルビー様とシーナ様が付き添いながら教えてくれるという事だ。


「…という事だよ」


「分かりました。頑張ります」


「ではすぐに始めてみるのですわ」


そう言われたので、書類の仕分けを始めるのであった。


書類の仕事を始めてもうすぐお昼になる。すると


「今日はもう大丈夫だよ。それよりもこのトワイライト王国を観光してみたらどうかな?」


「ルーク様の事がまだ理解出来ないなら、このトワイライト王国の民達にどういう人なのか聞いてみるのもいいですわ」


そう言われたので


「…分かりました。ではお言葉に甘えて」


私はそう答える。私も来た事のない国です。このトワイライト王国を観光したかったのは本当なので、願ってもない事です。お言葉に甘えて観光をさせてもらいましょう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


アルマはトワイライト王国を観光する。本当に街の民は魔物だ。


「凄いですね…!」


本当にその言葉に尽きる。色んな種族がこれほど集まりながら暮らしているなんて考えられません。ゴブリンやオーガはもちろん、エルフやドワーフの人間種族まで。しかも私が見た事のない種族もいます。確かに凄いのですが、本当に凄いのは、色んな種族がいるにも関わらず、争いなどは全くないという事だ。酔っぱらった勢いでの争いはあるが、そんな事は些細な事だ。


しかもこの国の住人は、みんな裕福というか、誰1人生活に困ってないのだ。つまり餓死する民がいないという事だ。あのゴブリンでさえも。というかゴブリンが普通に喋れる事にも驚きましたが。そして職にあぶれてもルーク様自ら探してくれる事もしばしば。王自ら民の仕事を探すとか考えられません。そんな事を考えていたら


「おめぇーさん見たことないけど誰だ?」


屋台の店主が話しかけてくる。


「私は今日からルーク様の下で働きます。アルマといいます」


「そうか!ルーク様の者か!ルーク様を支えてやってくれ」


「はい。あのルーク様はいったいどのような方なのでしょうか?」


もちろんルーク様の事はある程度聞いたのですが、もう少しどんな人物なのかこの国の民達に聞いてみる。というか、私は意地になっていたかもしれません。


ルーク様の事を聞くと、民達はみんな「偉大なお方」だったり「優しい」だったり、出てくる言葉は良い言葉ばかり。1人ぐらいルーク様を恨んでいる者がいるはずだと思っていたのだ。なので意地になっていたのだと思います。


「ルーク様は偉大なお方だ。ルーク様は俺達民の事をいつも気にかけてくれている。そして器がデカイ!」


「気にかけてくれている?」


「そうだ。ルーク様自ら戦争に行き、国を守ったりするのだぞ?」


「それは凄いですね」


王自ら戦争に赴いて国を守るなんて、普通なら考えられませんけど…。その後、いろんな人にルーク様はどういう人なのか訪ねて回ったが、みんなほとんど似たような事を言っていた。


この国では争いがおきないのはルーク様を民達が信じていたり、守護王様がいるからだったりと、理由は色々あるが、ここまでの完璧な国を作るなんてどれほど凄いのか民達に聞かなくても分かってしまう。


もし、ここに住んでいれば私の家族はみんな無事だっただろうなとアルマは思う。ルーク様の事を何も知らなかったけど、ルーク様の作る国を最後まで見届けたいと思ってしまった。


それに人間に従うのならまだしも、ルーク様に従うのなら別に嫌ではない。ルーク様も見た目は人間だが、ホムンクルス?という魔物らしい。なので私がそこまで嫌悪する理由もない。


そして私はその時から心を入れ替えて、ルーク様に仕える事にした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そんな事があって今は全力でお仕えしてるんでしたっけ。


少し前の事を思い出してボーッとしていると


「アルマ?書類の仕分けはもう終わりましたか?」


「あっイーリス様。はい、終わりました」


「そうですか。ありがとうございます」


「イーリス様、この国は良い国ですね」


「急にどうしたのですか?まぁ良い国ですが」


「いえ、改めてそう思っただけです」


私は今、心からルーク様に買っていただいて良かったなと思います。ミルハイムさんが言っていた通り、ルーク様は悪い人でなかった。


ルーク様、これからもお側で仕えさせてもらいます。私は改めて心に誓い、今日も仕事を頑張るのであった。


読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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