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マリナの幸せの為に


「話は全て聞かせてもらいました」


「マ、マリナ…?」


後ろのドアからマリナが入ってくる。真実を知りたいだけだから、マリナの事はどうなっても良いみたいな、酷い事を言ってしまったが、それはログルの口から本当の事を吐かす為に言った事だと、マリナは理解しているだろう。その事でマリナが怒るなら、後で謝ろう。


マリナを見たログルは驚愕し、すぐにその顔を俺に向けてくる。


「お、お前騙したのか!?」


「騙した?俺は望み通り、今すぐくっつけてやっただけだ。騙したとは人聞きが悪い」


まぁ屁理屈なんだが、別にこいつに騙されたと思われてもどうでもいいが。しかし俺を信じ、こいつの夢が叶うと思いきや、俺に騙され絶望に叩き落される。なんていうか、こいつを俺の掌の上で転がしてる感じがぞくぞくするな。悪役をしている感じで。


「ログルさん。私はログルさんを優しい人だと思っていました。夫の事で落ち込んでいる私に励ましの言葉や、毎日道具屋に来てくれたり。でもそれは私の間違いだったのですね。あなたの優しさは全て嘘だったのですね。私はそれが悲しい」


「ち、違うんだ…マリナ…」


「何が違うというのですか!私の最愛の夫を奪っておきながら…何が違うというのですか…」


マリナは一粒の涙を零した。マリナは優しい、こんな屑の為に涙を零せるのだから。


マリナはログルに背を向け言葉を掛ける。


「…もう私の前に、二度と現れないでください。あなたの顔はもう見たくありません。夫の敵なので殺したいほど憎いですが、あなたを殺したところで夫は帰ってきませんから」


マリナはドアに向かう。マリナが自分で言っていたが、殺したいほど憎いのだろう。だが殺しはしなかった。もしマリナが、今ここで殺すと言っても俺は止めなかったかもしれない。


「ま、待ってくれ…マリナ!」


だがマリナは足を止めず地下から出て行く。俺はすぐにマリナに念話する。


『おれはログルともう少しだけ話す。先に帰りたいならドラグやセレスに頼んでくれ』


『分かりました』


さて、ではもう少しだけログルと話すか。


「よかったな。マリナはお前の事を殺さないってよ。夫を殺したお前をな」


「おれは…間違っていたのか…」


「お前は騙し続けていたが、マリナはずっとお前を信じていた。だからマリナは泣いたんだ。信じていた者に幸せを壊されたから」


「おれはマリナを幸せにしたかっただけだ。なのに…おれは…マリナを傷付けていただけなのか…。それでも、こんな俺を最後まで信じていてくれたのか…」


ログルは涙する。自分だけがマリナの事を幸せに出来ると信じて疑わなかったが、ようやく自分の過ちに気付いた。気付くのが遅すぎたようだが。


ログルが少しの間泣いて、泣き止む。泣き止んだログルは


「俺はマリナから、私の前にもう二度と現れないでと言われた。俺はこの街を出ていく」


「街を出ていくのか」


「あぁ、罪を償う旅だ」


「そうか。…だがお前は旅をしなくても大丈夫だ。罪を償わなくても大丈夫だ」


「…?どういう事だ?」


「お前の罪はここで償う」


「いやだから言ってる事が……」


「察しの悪い奴だ。お前はここで死ぬんだよ」


勝手に街から離れて旅をすると言ってたが、何を勝手に決めているのだろうか?図々しいにも程がある。俺からそう言われたログルは驚いて、顔がどんどん青ざめていき、生気のない顔になっていく。悪くないその絶望した顔…


「ッ!?ま、まってくれ!?マリナは俺を見逃すと言っていただろう!」


「見逃すとは言ってないが、殺す価値が無い。だから何処へでも行けと言ってたのだろう。だが、俺が見逃すと一言でも言ったか?マリナの前に二度と現れないと言ってたが、お前がマリナの前に、二度と現れない保証がない」


「それなら契約魔法とかで俺を縛ればいいだろ!」


「そんな事より、もっと簡単な方法がある。お前を殺す事だ。それに俺はいつも思うんだよ。何の罪もない人の命を奪っておきながら、なぜのうのうと生きているのかと。他人の命を奪うのなら、自分の命も奪われる覚悟をしなければならない」


「ま、まてよ…俺はこれから新しい人生を…」


「罪を犯した分際で新しい人生だと…?笑わせるな。そんなものはない。俺も他人の命を奪った事はある。だが俺は、何の罪もない者の命を奪ったりはしない。俺が命を奪う時は、俺や仲間に危険が及ぶかもしれない時や、悪人と分かっている奴等を切る時だ。お前を生かせばまたマリナに接触するかもしれないからな。…クイン」


いいねぇ、その顔。こいつが絶望すると幸せとは違う幸福感が俺の心を満たしてくれる。人の不幸は蜜の味とはよく言ったものだ。俺はこいつが今から死ぬのに躊躇いもなく、むしろ喜んでいる。俺の、今では大事な…そう、マリナを不幸にしたから、こいつが死ぬことで俺の心は歓喜しているのかもしれない。俺の呼び声で異次元からクインが現れる。


「クイン、こいつを食べていいぞ」


「ギチチ!」


「ま、まて…!」


「今までの行いを後悔しろ」


俺が言うと、ログルの周りに多数の異次元の空間が開き、いろんな角度からD(ディメンション)ビーの針が出てきてログルを串刺しにする。


「がはっ…。マリ…ナ…」


「マリナは優しいが、俺は甘くない。マリナに…俺の大事な者に危険を及ぼす可能性がある者は殺すだけだ」


そう言って俺も地下から地上に戻る。後はクイン達が綺麗に肉団子にして食べてくれるだろう。地上にはマリナ、セレス、ドラグが待っていた。テイエイはもう帰ったのかな?


「待たせたな、マリナ」


「あっルークさん!お話し終わったのですか?」


「あぁ、ログルはこれから旅に出るようだ」


「そうですか」


「大丈夫。もうマリナの前には現れないだろう」


「それなら安心なのですが」


「さっ、早く店に戻ろうか。リリナ、エリナちゃんが待ってるからな」


「はい!」


俺とマリナは店に戻る。セレスとドラグは、地下を何も無かった状態に戻してから来るよう命令する。


これでマリナはもう大丈夫だろう。マリナはこれから幸せになるのだ。レナルドもそうだが、マリナ達を危険にさらす者は排除する。それが例え貴族であろうが、誰であろうが。


そして俺達はマリナの店に戻ってくる。


「ママ!ルークさん!おかえりなさい!」


「ママおかえりー」


「ただいま。リリナ、エリナ」


「ママ!楽しかった?」


リリナが聞いてくる。その質問に俺はすかさず笑顔で答える。


「あぁ、楽しかったぞ?2人で夜の街を歩いたからな」


「えぇー!ずるーい!私もルークさんとデートしたい!」


「じゃあ、リリナがもっと大人になったらしてあげるよ」


「やったー!」


「ふふ。良かったわね」


「うん!」


楽しい雑談をしてからトワイライト王国に戻る事にする。さて明日からはもっと忙しくなるんだ。俺も頑張らないと。俺は守護王達とトワイライト王国に戻るのであった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ここは神の中でも位が高い存在だけが入る事ができる神域。辺り全てが真っ白で、どこまでも白の領域が続いている。


辺りは全て真っ白なのだが、その真っ白な世界で不自然な物がある。その白の世界にポツンと木のテーブルと椅子が2つ置かれている。


そしてその椅子に、1人の女性が座っている。その女性はルークをこの世界に連れてきた張本人、女神ミールだ。


「ルークちゃんは楽しそうね」


ニコニコしながら何もない空間を見て呟いている。


「神聖ルナミールはまた勇者召喚をするみたいですね。勇者を鍛えるとなれば数年で仕掛けてくるかもしれないですね」


はぁ…。とため息を吐く。


「まぁ戦争になればルークちゃん達が何とかしてくれるでしょう。勇者も問題があれば始末してもらう事にしましょう」


すると何処からともなく男の声が響く。


「いいのかい?そんな簡単に勇者を殺してしまっても」


「いいのですよ。このブルへイアに害のある勇者など必要ありませんから」


「そうかい?」


「それよりも、そろそろ出てきてはどうですか?ジルドレッド」


そう呼ばれた男は姿を見せる。髪は赤色で少しボサボサしている。イケメンなのだが、少しやる気のなさそうな顔をしている。


「何をしに来たのですか?」


「ミールの神域はいつ見ても真っ白だな。もっと草原を創造するとかしたらどうだい?」


「そんなものはあっても無くても変わりませんから」


「そうかい。ところでミール、君が面白い子を見つけたと情報を聞いたからここに来たんだよ」


「誰から聞いたのですか?」


「まぁ、それは誰でもいいじゃないか。その面白そうな子に戦争を止めてほしいと依頼しているんだろ?」


「耳が早いですね。まぁ大方そうです。私達創造神の目的は人間達が繁栄する世界を作る事です。人間達の信仰は私達の力になりますからね。戦争なんてしていたら信仰なんて考えていられませんし、繁栄どころか人間達が少なくなる一方です」


「まぁそうだな。で、その面白そうな子はどうなんだ?」


「ルークちゃん達ですか?あの子達なら上手くやってくれると信じていますよ?」


そう言うと、ジルドレッドは少し考えてから


「なんだ?そのちゃんってのは」


「私の子供達ですよ?ルークちゃんもその配下達も私が器に魂を吹き込んだみたいなものですから、私の子供達ですよ?」


「そうかい…」


「でも実際問題、ルークちゃんはまだあれですが、その配下達の強さは神の領域に達していますよ。それだけで戦争の抑止力になります。」


「それは、中々良い人材を見つけたな」


「ルークちゃんは人材ではなく私の子供達です!」


「わ、分かったよ。もしそっちが上手く行けば、その子達を貸してもらいたいぐらいだな」


ミールは嫌そうな顔をする。


「あなたが見つけてくればいいでしょう?」


「そんな簡単に見つかるわけがないだろ?」


「まぁ、私の世界が平和と判断したらルークちゃんにお願いしてもいいですが、あなたを手伝うか手伝わないかはルークちゃん次第ですからね」


「あぁ、分かっている。それにしてもミールの世界が平和になればか…。お前の世界も厄介だな。()()あれがあるなんてな。いつ戦争が起きてもおかしくない」


「あなたが管理する世界よりマシですよ」


「まぁそうだな。俺の世界は戦争ばっかりだ。ルーク達がいれば世界統一してくれるんだろうな」


「こちらに連れてきてまだ1年も経ってないですからね?」


そう言うとジルドレッドは立ち上がり


「いくらでも待つさ。神からすれば何百年なんて、そこまで長くないからな。それに俺の世界は何百年経ったとしても変わらないと思うよ…」


そう言い残してミールの神域から消える。


「何百年経とうが世界は変わらない…ですか。ジルドレッドの世界はもう3百年も戦争が続いていますからね」


そしてミールはジルドレッドの世界について考えるのをやめる。


「やはり一番気がかりなのは下級神の事でしょうか?まぁでもルークちゃん達なら上手くやってくれるでしょう」


そう呟いてまた何処かからルーク達を見守るのであった。



読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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