ログルの狂愛
ようやくマリナ達の今日の仕事は終わった。久しぶりの道具屋で、そこそこ忙しかったのでマリナは笑顔だが、少し疲れているのかもしれない。
リリナはまだまだ元気いっぱいのようだ。リリナもマリナのお手伝いをして中々に頑張っていたようだ。
今日の客はめちゃくちゃ来たわけではないが、明日は恐らくもっと来るだろう。今日の売上はマッチ10本入りの箱が約千箱売れている。マッチでいうなら1万本だ。
100本入りの箱が約50箱売れている。マッチでいうなら5千本ぐらいだな。下級ポーションと下級魔力ポーションは約250本ずつ売れている。明日になればもっと客が来るだろう。明日には全部売れそうだ。
マリナも疲れているが、すごい幸せそうな顔をしている。よかったよかった、そう考えていると念話が飛んでくる。
『ルーク様、今よろしいでしょうか?』
『あぁテイエイか。大丈夫だ。何かあったか?』
『はい。少し気になる話を聞けたのでルーク様のお耳に入れておこうかとおきまして…』
『どういう内容だ?』
『実は……』
『なにっ!?それは本当か?聞き間違いではないんだろうな?』
『はい。私の耳でしっかりと聞きました』
『そうか』
だからあそこまで。そうか…全ては仕組まれていたのか。
『如何致しますか?』
『テイエイ。そいつを捕えろ。殺すなよ?それと捕らえたらドラグとセレスを向かわせる。合流しろ』
『畏まりました』
『ドラグとセレスが合流したらもう一度連絡してこい。問題は早めに解決した方がいいからな』
『はっ!』
もう起きた事は仕方がない。どっちみちあいつは必ずまた来るだろう。ならこっちから行動するか。
「ドラグ、セレス。今すぐテイエイと合流してくれ」
「分かったわぁ」
「畏まりました」
セレスとドラグはマリナの道具屋から出ていく。
「あら?ドラグさんとセレスさんはどうしたのですか?」
「ん?あぁ、少し用事があるんだ」
「そうなんですか。じゃあ先に夕食を食べてましょう」
「そうだな」
マリナ達と一緒に夕食を食べる。一応俺も手伝おうとして野菜や肉などを細かく切っていたのだが、途中でマリナにルークさんは、私のお客様だから夕食が出来るまで待っていてください、と慌てて止められた。夕食をご馳走になるのだから全然手伝うのだが。夕食を皿に盛り付けてみんなで運んでる際にまた念話が届く。
『テイエイと合流したわ』
『この後はどう致しましょう?』
『ドラグ、セレス。テイエイを引き連れて、中央東通りの奥で人気のない場所を探してくれ。あそこはスラム街だから人気のない場所はあるだろ。人気のない場所で、ドラグの土魔法で地下を掘れ。簡単でいい。セレスは光魔法でその場所を隠してくれ。その地下にあの男を入れて監禁しろ。それが出来ればまた連絡して来てくれ』
『了解よ』
『畏まりました』
俺は念話を切る。
「ルークさんどうしたのですか?夕食を食べましょう!」
「そうだな。食べようか」
みんなで「いただきます」と言って俺達は食べ始める。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕食を食べ終わったぐらいでセレス達からの連絡が届く。
『準備できたわよぉ?』
『分かった。こっちも準備が出来次第いくよ』
念話を切る。今は夕食後でみんなで楽しく話している。
「マリナ、少しいいか?」
「はい?何でしょうか」
「少し話がしたい。2人だけでだ」
「っえ!?…分かりました。」
「リリナとエリナちゃん、スサノオとプリンはここにいてくれ」
「分かった!」
「はーい」
「…御意」
「分かったなのです!」
俺とマリナは店の外に出る。店の前で2人っきりになって話をする。夜だが、まだ人はそこらにちらほらいるが、小さい声で話せば大丈夫だろ。
「あ、あの2人だけで話したいとは…何でしょうか?」
マリナは顔を赤くしている。ん?告白とか勘違いしているのじゃないか?残念だが告白はしない。
「マリナ、お前の夫は毒になって亡くなったんだよな?その話をもう一度軽くでいいから聞かせてくれ」
俺がそういうとマリナはすぐに真剣な顔になる。
「分かりました。…私の夫は確かに毒で亡くなりました。パーティメンバーの話ですと、急に倒れたという事です。パーティメンバーの方が家まで運んで来てくれて、薬師の方を呼び、毒に侵されているといわれました。その時は毒のある葉とか、知らない内に触れてたかもしれないと言われましたが、納得はできませんでした」
「納得はできない。そうだよな」
「はい。急にどうしたのですか?」
「あぁ、実はマリナの夫が死んだのは毒殺された可能性がある」
俺は十中八九、毒殺されたと思うが、まだ断言する事は出来ない。なので可能性があると言っている。
「えっ…!?そ、それはどういう事ですか!」
「落ち着け。その毒殺したと思われる者を捕まえている。俺は今からそいつに会いに行く。マリナも来るか?」
「私は…行きます!夫が亡くなった本当の理由が知りたいです!」
「後悔しないか?」
「はい!」
「分かった。ついてきてくれ」
マリナは覚悟を決めている。俺とマリナは中央東通りの人気のない場所に向かう。そこにセレス達がいる。居場所は既に分かっている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺とマリナは空き家についた。その空き家は屋根もなくかなりボロボロだ。
「ここですか?」
「あぁ。地下の入り口を魔法で隠している」
話しているとセレスとドラグが現れる。
「セレスさんとドラグさん!」
「さぁ行こうか」
俺はマリナの手を引いて空き家の端に移動する。すると遠目で見た時は何も無かったはずの場所に、地下への階段を見つける。
マリナは驚いていたが、俺は気にせずマリナの手を引いて、地下の階段を降りていく。地下の階段を降りているとすぐに木で作られたドアが現れる。
「この中にマリナの夫を毒殺した奴がいる」
マリナは静かに頷いている。そしてドアノブに手を掛けようとした。
「待て。この中にいるやつから直接毒殺したと聞いてない。俺が中に入って2人でしゃべる。俺と中にいる奴の会話はここで聞こえる。中を見たいならここから見ろ」
木のドアには中の様子が見れるように、ドアの一部がくり抜かれている。俺たち側から中は見れるが、向こう側は普通の木のドアに見える仕組みになっている。魔法で普通のドアに見える様にしている。
マリナは恐る恐る中を見て驚愕する。
「ッ!?ログルさん…?」
「そうだ。この男がマリナの夫を毒殺した可能性がある」
「そ、そんな…だってログルさんは夫と同じパーティで…夫がいなくなっても、いつも店に道具を買いに来たり優しい人でした」
「じゃあ確かめてみるか。俺が合図するまで入るなよ?ログルに脅しなどをかけるから、見たくないなら見なくていい」
マリナは頷き俺だけ中に入る。ログルは木の椅子に蔦っぽい植物でグルグル巻にされている。まだ俺が部屋に入った事には気が付いていない。
俺はログルに近付き声をかける。
「よぉ。ログルまた会ったな」
「お、お前はマリナと一緒にいた奴か!この植物を取れ!」
「なぜお前は捕まっているか身に覚えが無いか?」
「あるわけないだろ!早く外せ!」
「なら単刀直入に聞こう。お前、マリナの夫を毒殺したな?」
「な、なんの事だ…?」
明らかに動揺しているのか、目が泳いでいる。この時点で俺はこいつが毒殺したと確信したが、自分の口から言わせたい。まずは…
「言わなければ腕を切り落とす」
「す、好きにすればいいだろう…。俺は何も知らねぇ…」
「分かった。」
俺はミスリルの剣を抜き、剣を振り下ろす。…が俺はギリギリで止める。…ふむ。こいつは意地でも言わなそうだ。切り落とされる覚悟というか、絶対に言わない覚悟が出来ているのだろう。マリナも見ている事だし、拷問は出来るだけやりたくない。仕方ない、やり方を変えるか。
「…まだお前に聞きたいことがある。腕を切り落として、出血多量で死なれては困るからまだ切り落とさない。違う質問をしよう。なぜお前はマリナにそこまで拘る?」
「マリナは俺だけが幸せに出来る!だから俺と一緒になるべきなんだ!」
何故そう言い切れるのか俺には理解出来ないのだが。まぁいい…
「そうか。お前だけが幸せに出来ると」
「そうだ!」
「だが今は幸せに出来ない。お前も薄々気付いているんだろ?」
「クッ…。そんな事はない」
「マリナはいま、安定した生活を手に入れている。俺が手を貸したからな」
「お前さえいなければ…!」
おっと…少し刺激しすぎたか。
「悪かったよ。お前がマリナを狙っているのは知らなかったんだよ。その詫びと言っちゃあなんだが、手を貸してやろうか?」
「手を貸すだと?」
脅しが聞かないなら搦手で聞き出す。マリナには聞かれたくないが、まぁマリナも理解してくれるだろう。
「そうだ。今のお前だけならマリナと一緒になる事が不可能に近いだろう。だが、俺が手を貸してやれば一緒になる事が出来るぞ?」
「そ、そんなはったりは信じるわけないだろ!」
「お前も一度は聞いたことがあるだろ?トワイライト商会というのを」
「それがどうした…」
「マリナは今、トワイライト商会のメンバーだ。そしてトワイライト商会の代表が俺だ。俺がマリナを誘ったからな。もう分かるだろ?マリナは今、俺に恩義を感じている。俺からログルと一緒になってくれと発言すれば…」
「…その話は本当なのか?」
おっ。食い付いたな。ログルはマリナと一緒になりたいが、自分ではどうにもならない事を薄々感じているのだろう。だが、遠回しに俺がマリナに命令すれば、何でも聞くといえば、その話に食らいつきたくなるだろ。俺の機嫌を取るだけでマリナと一緒になれるのだから。ここから、あとはこいつの口から本当の事を言わすだけだ。
「あぁ、だが条件がある。お前がマリナの夫を毒殺したのか聞きたい」
「それは…」
「勘違いするな?俺はただ真実を知りたいだけなんだ。真実を知ればお前がマリナと一緒になろうが、俺にはどうでも良い事だ」
「…それは本当だろうな?」
「あぁ、本当だ。お前が望むなら、すぐにでもマリナとくっつけてやるぞ?」
「…いいだろう。マリナと一緒になれるなら話してやる。…だが誰にも話すなよ?」
俺は息をするかの様に嘘を吐く。こいつを騙したところで俺の良心は痛まないからどうでもいいが。俺はログルの言葉に頷く。そしてログルは話し出す。
「マリナの夫、ホーグを毒殺したのは俺だ」
マリナの夫はホーグというのか。なるほど。
「なぜ毒殺したんだ?」
「それは簡単な事だ。マリナを一目見た時から、俺はマリナに心を奪われた。マリナなら全てを捧げても良いと。俺がマリナを幸せにするのだと。だが俺が初めて会った時、既にマリナとホーグは惹かれ合っていた。マリナは俺の事など見向きもしなかった。そしてそのまま結婚してしまった。だが俺は諦めなかった。結婚してもいい。必ずマリナを振り向かせると。その為には邪魔なホーグを消すしかなかったのだ。どうやって殺すか考えて、選んだその手段が毒殺だ。ホーグは元々、毒の耐性が人よりも高かったから、普通の毒では効かない。だから闇ギルドから劇毒を手に入れたのさ。そして冒険の途中、俺が食事当番の時に、ホーグの皿にだけ毒を入れたのさ!そして毒で倒れて死んだホーグ。これでマリナも俺に振り向いてくれると思ったが、マリナはそれでも全く振り向いてくれない!だが、時間の問題だと思った。子供を養うお金が無くなり、必ず俺に頼ってくると思ってたからな!あともう少しだったのに、それもお前に…!」
そんな事でマリナの夫を殺したのか。とことん屑だな。だが、ようやくこいつの口から吐いてもらった。マリナもこの話を聞いているだろう。
「そうか、分かった。話してくれたお礼に、約束通り今すぐマリナとくっつけてやるよ。…マリナ」
後ろからマリナが入ってくる。
「話は全て聞かせてもらいました」
「マ、マリナ…?」
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