意味のない忌み
息を吸うように吐いた人影。
巣食うように湧いた毒虫。
暗い夜に掻いた瘡蓋。
今更痛むの。
ごみを捨てるように拾う煙草。
喰らうように投げた弁当。
いつかのように笑うあなた。
今更遅いの。
甘ったるいカフェ・オ・レは溝に棄てて。
白地なブレンドは頼んでないよ。
灰色のカプチーノは不味くはない。
曖昧な水出しだけがすっきりしている。
舌触りのいい言葉が好きだから上っ面なの。
当たり障りない戯れ言が胸に違和感残すの。
黴の生えたコーヒーカップ。
虫に食われた手紙。
ほこりが浮いた黒いものを飲み干して。
泣き出したのは、誰?
ーーーー…………自分?
気を抜くように入れた紅茶。
始めるようにやめたシンナー。
薬袋のように見ない現実。
今更悼むの。
口を閉じるように開くカーテン。
黙るように叫ぶ狂人。
いつものように歩くわたし。
今更戻るの。
しみったれた脚本は篝にくべて。
振り向き様の蔵人は呼んでないよ。
鈍色のカフェ・ラッテは好みじゃない。
明確なミルク割りが澱んでいる。
耳触りのいい甘言が好きだから泣きっ面なの。
差し障りのない虚言が胸に忌避感植えるの。
加被の消えた信仰心。
無私に染まった葉書。
誇りが沈んだ暗いものを吐き出して。
嘔吐いたのは、誰?
ーーーー…………他人?