14話 春の祭と沼神との会話(ミーシャ視点)
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春がやって来て、村は祭が始まった。
小さな村だけど、村の皆がさまざまなご馳走を並べて、また芸を披露したりした。
それに冬の間に練習していた、伝承の躍り【沼神讃歌】も披露して、祭は大いに盛り上がった。
村始まっての初めての祭だったけど、皆楽しくて仕方なかった。
でも祭のメインイベントは、私が沼神様に嫁ぐこと。
そのためある程度祭が盛り上がると、皆私を伝統ある専用籠に乗せて、私が教える沼地に向かって歩いていく。
この籠も、伝承にあったものを冬の間に作った。
伝承よりちょっと残念な感じになってるけど、それでも急作りの割には立派なものになったと思う。
そうして悪路を進むこと数十分、私たちはいつもの沼にたどり着いた。
春の訪れを告げるように、沼の縁には様々な植物や木々が青々と茂り始めていて、とても神秘的だった。
たどり着いたなら村の男たちが伝統舞踊を披露し、沼神様に目覚めてもらう。
木や石で作った楽器が鳴り響き、とても楽しそうな雰囲気を醸し出す。
この楽器も伝承にあるものだ。
そうして音楽を披露したならば、次に長老が祭壇の前に出る。
「沼神様、昨年は沼神様のお陰で村に豊穣が訪れました。そのお返しを受け取ってくださいませ! また昨年は送れませんでした巫女をお受け取りくださりませ!」
その言葉に反応するように沼の水面が泡立ち、やがてざばぁと波をたてて沼神様は現れた。
その姿はまさに竜のごとし。
雄々しく力強い、いかなる災厄も払い除けてくれそうな頼もしさがあった。
沼神様は、出されたお供え物を見つめ、暫くの間は動かなかった。
けれどやがてお供え物を一口で全て食べてしまった。
その口の中が一瞬見えたけど、巨木のような丸く鋭い牙がズラリと並んでいて、さらには炎のように真っ赤な舌が備わっている。
まさにドラゴン。
オークをほぼ一飲みしただけあって、その巨大な口は恐ろしい。
だけれどこの口が村を守る刃でもあると考えると、とても頼もしかった。
やがて沼神様の視線が私に向く。
品定めするように、その黄金色の瞳が私を見つめる。
私は沼神様に失礼のないように、伝承にかかれていた通りに両膝を地面につき、両手を揃えたあと頭を下げてこう言った。
「不束ものですがよろしくお願いいたします」
これでいいはずだ。
不束ものというのがどういう意味なのかはわからないけれど、これで儀式的には問題ないはず。
すると頭の中に声が響いてきた。
恐らくこれが沼神様のお声に違いない。
聞き逃さないよう、私は意識を集中させた。
すると声はだんだん大きくなってきた。
ぼそぼそとしたものから、聞き取れるほどに。
その内容は……。
『えっと、取り敢えずどうすればいいんだろう。神っぽい動物の振る舞いとか知らないぞ!』
困惑したものだった。
「えっと、沼神様?」
なにか私たちが粗相でもしてしまったのだろうか?
失礼を承知で声をかけた。
これが、彼と私の二度目の出会いだった。