1話 転生したらワニでした
俺、沼田出久は平凡な田舎の高校生だった。
あえて人と違うところを上げるなら、生き物が好きだったことか?
小中高ともに飼育委員に自ら進んでなり、理科や生物の授業は大好きで仕方なかった。
特に爬虫類、蛇や蜥蜴が可愛く見えていた。
そのせいで女子からは気味悪がられたのを覚えている。
春なんて俺には一切なかった。
でもそれはそれで別によかった。
異性に興味がないと言えば嘘になるが、それよりも生き物と触れ合っていたかった。
何故全部過去形かというと、俺は既に死んでいるからだ。
死の理由は分からない。
何にしても急に視界が真っ暗になり、その次に激痛が襲ってきた。
その苦しみを味わってると、だんだん痛みが引き寒くなって、そして意識を失った。
そしてついさっき俺は意識を取り戻したわけだ。
明らかにあの痛みと痛みの引き方からして、死んだとしか思えない。
認めたくないが、そうとしか思えなかった。
しかしここは何処なのだろうか。
真っ暗闇が続いている。
妙に心地が良い暖かさもある。
しかし、ずっとここには居てはいけない。
そんな思いが何故か沸き上がってくる。
俺はその思いに引っ張られるように体を必死に動かした。
藻掻いて、藻掻いて、そうしているとピシリという音が響き、小さな割れ目が生まれて光が差し込んでくる。
それを見た瞬間、俺の中の何かが歓喜して光を求める。
必死に割れ目を広げようと動き、音ともに光が広がっていく。
やがて光が俺を包み込み、眩しさに目を細めた。
しかしやがて目が慣れて来ると、視界に入ったのは藁。
首を振って360度見渡しても藁。
しかも俺の知ってる藁よりも大きい。
これはどういうことだ?
不思議に思いながら藁を掻き分け、先へ進んでみると目の前には巨大な湖が広がっていた。
おいおい本当にどういう事なんだ。
俺は死んだはずじゃないのか?
というか妙に視界が広いことに今更ながら気付いた。
ほぼ後ろといえるような場所まで見えてる。
これにも不思議に思いつつ湖に近づく。
すると水面が鏡のようになって俺の姿を写し出した。
そこには、人としての俺はいなかった。
水面に写っていたのは__
__ワニだった。
はぁ!?