第一話「言葉の意味」
「っ⋯なんだよ?」
俺は読んでいた本を閉じ、赤城智春へ、眼を向ける。
相変わらず人を蔑むような目をしてやがる。
ヤツが口を開けた!放たれる言葉は──
「話がある。数分後、体育館の裏に来い。一人で」
そう言って赤城智春は、教室をあとにした。
この言葉を聞いて、大抵普通の男は告白だと思うだろう。ただし人による。俺はそう思わないタイプの人間だ。自分で言うのもなんだが、潜ってきた修羅場の数が違うんでね。
さて、俺もそろそろ行く準備しますかね。
念のため、護身用のエアガンをポケットに一つ忍ばせる。
相手がナイフなんて持ってたら、たまったもんじゃないからな。ノート、筆箱、そして家のカギを鞄に詰め、俺も教室を出る。
廊下を歩いてる途中、嫌われ者の俺に出来た唯一の友人が、一緒に帰ろうと言ってきたのだが、その場しのぎでなんとか乗り切った。
うちの教室は本校舎の3階にある。ここから体育館裏まで、約5分と掛かる。
5分の間、何が出来る?
体育館裏に着くまでの間、色々と考えた。
告白だったら、どうするか。
生徒会の話だったら、どうするか。
一人で来い、って言ったくせにリンチされたらどうしようとか、色々だ。
学年一の美女で学年一のクズに呼ばれたのだ、そう考えちゃうに決まっている。
今のうちに護身用エアガンのリロードをしておく。
敵前で弾なんか補充してたら、簡単に殺られるからな。残弾は6。実弾じゃないのが惜しまれるが、持っていたら銃刀法違反になるので、6発で確実に仕留めなければいけない。
頭に6発か、目に6発。威嚇射撃をして、逃げるか。など。
なにができる?なにをしたらいい?
そう考えているうちに、目的地へ着いた。
全く意味のなっていない立ち入り禁止の柵を跨ぎ、その奥へと足を踏み入れる。
⋯空気が違うな。どんよりしていて、正気を保ってないと吐いてしまいそう。
言い忘れていたが、実は俺が生まれるずっと前、ここで殺人事件が起こったらしい。
事件現場に学校建てるって、どういう精神だよ⋯
空気も悪く、入った者は次の日からいなくなることで有名であった。
まぁ、実際に消えたことは無いが、みんな怖がって立ち入らない。ということは、俺が第一号である。
いや、アイツがいるから第二号か?ちくしょう。
ちなみに今更だが、アイツの説明をしよう。
赤城智春。
市立桜ヶ丘工業学園一年二組。出席番号は2番で、席は一番後ろで窓側。『番長席』なるものに値する場所。 もう一度言うが、俺はその隣である。
顔は前述の通り、美人(ただし性格に難ありのタイプ)。
ちなみにドが付くほどの変態な友人によると、スリーサイズはB77-W59-H84。らしい、あくまで目測のようだが。目の色は水色に青を上乗せした綺麗な碧眼で、髪色は金で髪型はロング、ポニー、サイド、ツインだったり、日によってまちまち。ちなみに今日はロング。いわゆる『金髪碧眼の美女』だ。
誕生日は、自己紹介で言ってた限り8月のどっか。そんな覚えてられねぇ。
身長は155cm〜160cmの間で、体重は──いくら憎い相手とはいえ、女子の体重を晒すなど、男としてあってはならない。絶対に。
まぁ、このくらいの情報でいいかな。
さて、とうとう アイツとご対面。
エアガンを片手に持ち、要件を問う。
「来たぞ、俺だ。青木照太」
「⋯やっと来たのね、遅い。このノロマ」
「なんだその言い方、折角来てやったんだぞ?」
「感謝をしろと?アンタにお礼なんて、死んでも嫌だわ」
「ていうか、どうして俺にそんな厳しいんだ?別に、お前になにかした訳じゃないだろ?」
「私は男が嫌いなの」
「じゃあなんで共学に来たんだよ⋯」
「⋯⋯落ちたのよ」
「どこ志望だ?お前みたいに頭脳明晰なヤツが望むとこなんて、大体検討がついてるけどよ」
「⋯⋯"城西"よ」
「ふん、やっぱりな。この近くに住む女子はみんな憧れる場所だからな」
彼女が言った、"城西"とは、"桜ヶ丘城西高校"という、トップに君臨する女子校だ。
偏差値85以上。ハードル高ぇなぁ。
「で、何で俺を呼んだ?」
「あなたに聞きたいことがあったのよ」
「聞きたいこと?俺に?生憎、聞かれるような人生を送っていないんでな」
「そういうの、いいから」
「──!?」
睨まれた。すごく、鋭い目付きで。
動けなかった。身体中に毒が回ったかの如く、その場に立ち尽くすことしかできなかった。
「なんで、生徒会に入ったの?理由は?目的は?」
「⋯⋯ンなことかよ。理由も何も、無理やり入れさせられたんだがな。目的も、なにもねーっよ」
「⋯⋯そう」
赤城は、軽く返事をし、俺にこう言ってきた。
『今すぐ生徒会を抜けなさい。さもなくば──』
そこで途切れていた。なんだ、脅しか?
俺だって抜けたいさ。あんなカオスな場所、一日でも早く脱出したい。
それが出来れば、苦労しないのにな。
気がついたら、辺りはすっかり闇に包まれていて、俺一人だった。
アイツは?まさか、本当に行方不明になったのか?⋯なわけない。
ただの噂に過ぎないのだから。神隠しなどあるはずがないだろう、 少なくとも今は。
俺はまた意味のなってない立ち入り禁止と書かれた柵を跨ぎ、帰路に着こうと校門を乗り越える。
途中、見回りの先生に見つかったが、自慢の逃げ足で何とか振り切った。
暗かったし、多分顔もバレてないはず。
家に帰ったら、アイツが言った意味深な言葉を考察するとしますか。
あっ、机に本を忘れてきてしまった。
まぁ、明日でいいか。
第一話です。
なんか、タイトルと内容が違ってきそうな方向になってしまいましたが、なんとか戻してみます。




