第八話:現実で再び、妄想へと
慎吾は、誰も住まなくなった実家に足を踏み入れ、記憶の荒波に襲われた。
現実に戻れても、「母の姉が、本当の母?」という、妄想に取りつかれる。
実家の居間に立ち尽くした。
純粋にゲームに熱中した中学の頃から悪友との出来事、そして母への疑惑へとつながった。現実に今、ここで再び、その苦悩に囚われている。
母の位牌を前に、ゆっくりと目を閉じた。
(ああっ・・・・・・知りたい)
『自分の本当の母、父は誰なのか?』
ということを突き詰めて考えた。
母の姉、麗子さんは、すごく惹ひかれる何かがあった。
(やさしさ・・・・やはり、生みの親としての隠れた気持ち?)
胸の谷間を、露出度の高い服で、まじかでアピールされて、よく視線が釘付けにされたこともあった。
(実の息子に、母乳を飲ませたかった?)
「ちょっと、さわってみる?」
と、冗談交じりに、聞かれたのも思い出した。
その時、不思議な感情も湧き出ていた。
(性的魅力・・・・・・これは、いけない気持ちだ)
麗子さんの夫はもともと、高血圧持ちだった。新築祝いでヤギの肉を食べ過ぎたのか、その場で頭痛がするといって倒れ、戻らぬ人となったと聞いている。
その翌年に、僕が生まれたと。父との関係で出来た子だったのか? 浮気なのか、未亡人になってすぐなのか。計画的な姉の代理出産だったのか? それとも、父親は全く別の人の可能性もある。
母が姉から引き取った?
実は、父のあれに不具合があったのか?
(まさか)
頭の中は入り乱れている。
これまで、とても優しかったこと。父が頻繁に彼女の家に連れていったこと。すべてが、実の母であったならば、つじつまが合うのである。
父親の推測は出来ないが、母はすんなりといった。