第五話:宴の後
サルたちは、自分たちの知恵で遊びを謳歌し始めたが、つかの間の喜びでしかなかった。
次第に羽振りが良くなっていく慎吾に、ゴリーは面白くなさそうな顔を向けていた。慎吾が長らくゲームを続けてトップの名を書き換えることを、繰り返したからだろう。そのお金の出所、理由、遊び方を教えない信吾は、徐々に疎んじられていく感じを受けた。
ある日を境に全く相手されなくなった。彼らで何かを見つけたらしい。カチカチとライターの頭を鳴らすのが足下に見えた。何か電気的なショックをゲーム機に与えようとしているのだろうか、信吾には分からなかった。
ちらりとゲーム画面を覗くと、何と、クレジットが『999』と表示されていた。1カウントが100円であるから、99,900円分となる。まったく、違う世界が匂いだしてきた。
深夜、彼はえさ(テープ)を仕掛けた場所、中学裏門に近い商店へと向かった。電話ボックスと、その右に自動販売機が四台並んで置かれ、それらに仕掛けていた。タクシーがまばらになり、さっさと済まそうと、電話機のおつり返却口に指先を二本突っ込み、奥にあるガムテープの蓋をはぎ取った。お金が荒々しく吐き出された。ほとんどが十円玉であるが、百円玉を取ってはポケットに突っ込んだ。
〈ガーッ〉
ボックスのドアが開き、左手首を後方から強く鷲掴みにされた。振り向くと、三人の男の姿が目に入った。
「えっ、何すんだよ、これは僕のお金だ!」
「うそつけ!」
手の甲をひっくり返された。
「痛っ」慎吾はその男の顔を見た。
「教頭先生!」
力強い腕は、彼の細い右腕を掴み背中へとまわした。手にした百円玉が、転げ落ちる。
「痛い! 痛いよ」
そのまま後ろに引きずられるように、ボックスの外へと。
「本当だったのですね。残念ですよ」
と、もう一人の先生が言った。
後から知った事だが、あの大城が学校に来なくなり、ゲームセンターではびこる不良グループのリーダーとして、問題になった。ゲームを一日中しているが、ゲーム機に全くお金が入っていなかった。それを店長が怪しみ、警察沙汰となったのである。目の前で一日中、ゲームをやっているのである。グループの顔は自然と覚えられていた。
彼らは、警察署で、信吾の名前も出したのだ。
裏切られたと感じた。自分はそのやり方、回路にショートさせるグループに参加していないのに。
猿山のボスは、一人離れて生きるはずの子ザルを、道連れにしたのである。