表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠されたものたち  作者: 千代三郎丸
2/20

第二話:ゲームの記憶

生家に帰った慎吾。


没頭していたゲームの日々が鮮明に、浮かびあがった。母と、ゲームとはつながっていくのだろうか。


すべての人の人生には歴史がある

by シェイクスピア「ヘンリー四世」より



慎吾(しんご)は窓を開け、空気を入れ替えた。仏壇のある奥の畳間で、よいしょと腰を下ろした。


たまには伯母(おば)が来ているのか、掃除はされているように感じた。古いがそんなにかび臭くは無かった。母の位牌(いはい)の前に、百年玉が三枚置かれていた。線香や火付けライターが切れたら買ってくださいという意味だと思うが、ふと湧き出てきたのは少年の頃の思い出だった。


中学三年の夏、『スペースインベーダー』というゲームが(ちまた)で大流行したのは、今から三十年以上も前の頃である。学校の裏門近くの商店の中には、テーブルの形をしたゲーム機が所狭しに三台も置かれていた。百円を入れて数分、いや上手になれば一日中そこに座ってゲームをし続けることが出来た。


(かに)の形をした宇宙人が整列して前進し攻撃してくる。自分の操縦する宇宙船は壁に隠れながら、ロケットでそれらを撃ち落とす。さらには後ろを飛び交う大型UFOをも同時に狙い、地球を守り続けるのだ。左手でレバーを左右に動かし、蟹からの攻撃を機敏に避ける。右手中指は円形の発射ボタンを上下に素早く押し続けることに使われた。


中学生から高校生、挙げ句の果てには大人までが入り乱れた。夏休み中、勉強もそっちのけで、その事ばかりを考えていた。足りなくなったお金欲しさに早朝、新聞配達をやったほどだ。父親の目を気にする必要があったが、自衛隊勤務で九月には急遽(きゅうきょ)、静岡へと異動となった。


慎吾は、自由に宇宙を飛び交うスペースシップに乗ったような感覚を得た。『()み付き』、いわゆる『中毒』になるのは早かった。


教室でも地球を一時間以上も守り抜いた事を、自慢するようになった。大抵の子は嫌がるのだが、(うなず)きながら楽しそうに聞いてくれる女子生徒がいた。


アメリカ人とのハーフ、『N・K・敬子(けいこ)』、彼女の事を『敬子さん』と呼んでいた。お姉さんか、年上に対する親しみを込めてそう呼ぶのは、慎吾だけだった。周りの女子や男子の(ほと)どが、『Kちゃん』と呼んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ