第十四話:激しい嫉妬
『結婚してくれるなら、東京へ行く』
と書かれた彼女の手紙を最後に、二人の心は離れていく。
信吾は、彼女の様子を知りたくて、友達に電話を、
めまいがする人は世界の方が回っていると思うものです。
by シェイクスピア「じゃじゃ馬ならし」より
(敬子さん……)
ハーフ特有のシャープな顔立ち、煌めいた瞳、開放的な性格。
そのせいもあって、男子生徒から話しかけられることが多かった。特に隣クラスの大城は、何かあるごとに顔を見せては、彼女に声をかけていた。彼は卒業間際に、県内の私立大学に合格していた。
その後、それが信吾が新たに、知り得たことだった。
高校を卒業して一ヶ月後、大城は同窓会を企画した。不思議と先生は、誰一人として呼ばれていない。
(敬子が目的だ……)と、察した。
側にいた奴の話によると、会が終わり次第、「二次会だ」と言って、彼女の腕を無理やり掴み、皆とは違う方向へ、歩き出したらしい。
(どこかで襲ったんだ、それ以外、考えられない)
その後、自分の女にしたとの話題に加え、抱き心地、彼女のあそこの具合を自慢げに、口元に泡を吹かせながらしゃべり続けたと。最後には、何度も、やめられなくなったと、よもやま話まで出てきた。
五人目の電話が通じた。
「あいつ、こんな事も、言っていたぜ」
「こんな事って?」
「聞いたら、元カレだったら、死にたくなるよ」
「いいから、教えろよ!」
「確か、
『アメリカンサイズは俺のミサイルにフィットするぜ、間違って、そのまま発射してしまったよ』
と、そういう感じだったかな……。
『子供が出来るかも』、と心配もしてた」
〈ガッ、ガッ、ガッ〉
衝動的に受話器を、電話機本体に激しくぶつけていた。母親、敬子との電話、それ以来三度目だった。あまりにも激しい嫉妬の念に捕らわれ、苦痛のあまり電話を止めた。
彼女の屈託のない言葉、行動力が好きだった。純粋に笑って、自分をほめてくれた。時には、怒ることも。
それが、あいつに奪われて、汚されたと……。
「うっ」
慎吾は電話ボックスの中、真下に崩れ落ちた。




