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隠されたものたち  作者: 千代三郎丸
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第一話:母に会いに

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

〈ガンガンガン〉


大地はロケットの形をした巨大な釘で、岩盤にたどり着くまで突き抜かれて揺れている。そんな那覇の街。赤瓦が続く昔ながらの家並みが少なくなり、再開発地域が増えて至る所で揺れを感じさせる。


『揺れ』とは、人の心が『感じる』のもあり、全く影響を受けない人もいるだろう。


空港横の自衛隊基地が減ってからというもの、道路の幅が広がり、モノレールがその中心を通った。ショッピングセンターやホテルが立ち並んだ。


しばらく時を経て訪ねると、新しい町に来たように感じる。見覚えのある建物や横道を確認しながら歩かないと、道に迷ってしまいそうだ。


台風が近づいていた。ちぢこまったクレーンの高さに合わせるかのように、緑の葉が揺れていた。目を凝らすとバナナの大きな葉がチョイと顔を出している。横には古い赤瓦の家があり、屋根にはシーサーの足だけが残っていた、強風で吹き飛んでしまったのだろうか。


そんなことを考えながら、玄関の表札には未だに、『佐々木』とあるのを見ると懐かしく感じた。鉛筆でその横に小さく『しんご』と、ひらがなで書かれてある。


ドアをゆっくりと開き、神妙な足取りで玄関を通った。東京から十年ぶりに自分の生まれ育った家に帰ってきたのである。


明日はこの家で、母親の十三年()を行うつもりだ。父から聞いた話によると、『人の命を司る干支(えと)が一回りする大事な年、いわゆる繰り返すこと』だそうだ。難しいが、大事な日だといった。慎吾自身は()年で、三回目を超えている。それしか知らなかった。東京に住む父が体調を崩して飛行機には乗れず、変わりに出向いたのだ。


東京で好き勝手な事ばかりして、母親の最後を見届けることができなかった。脳梗塞だった。伯母(おば)が慎吾のバイト先を探し出して、連絡してきた時には、もう病院の救急室で息を引き取っていた。


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