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真・摂政戦記 007話 殲滅 

【筆者からの一言】


GoGo飛行船!

見たかアメリカ人! これが我々の力だ! これが日本の力だ!

というお話。


 1941年12月11日 『アメリカ 中西部アイオワ州 ダヴェンポート市』


 市内で激戦が続いていた。

「桜華乙班白桜隊」による内陸主要30都市での無差別殺戮作戦。

 その一作戦として、このダヴェンポート市でも「桜華乙班白桜隊」による無差別殺戮作戦が行われ、それを阻止しようとするアメリカ陸軍、警官隊、武装自警団との激しい戦いが繰り広げられていた。


 ダヴェンポート市の「桜華乙班白桜隊」は追いつめられていた。

 市街の一角を占領し頑強に戦闘を継続していたが、既に兵力の6割が失われている。

 それでも、なお彼、彼女らの士気は高く与えられた任務を果たそうとしていた。


「桜華乙班白桜隊」には市内における戦闘について一つの指示が出されている。

 高いビル、または建築物の一つを占拠する事である。

 そして西の空を見張れ、飛行船が見えたら緑色の発煙弾を上げろと。


 ダヴェンポート市のビルの屋上を陣地として熾烈な銃撃戦を繰り広げていた白桜隊の一人が声を上げた。

「来ました! 分隊長! 飛行船です!」

 自分の眼でも確認した分隊指揮官が指示を出す。

「発煙弾を上げろ!」

 兵の一人が直ぐに準備されていた発煙弾を一定の間隔で打ち上げ始めた。

 緑色の煙がダヴェンポート市の上空に立ち昇った。




「なんだあの緑の煙は?」

 ダヴェンポート市でアメリカ軍を指揮していた指揮官は突如、敵が打ち上げ始めた発煙弾を訝しんでいた。

 何かの作戦の合図か?

 そう思う間もなく部下から新たな情報が入る。

「准将、西から大型の飛行船が1隻近付いてきます!」

「何だと、どこの所属だ? 民間か? 海軍か?」

「わかりません」

「無線で呼び掛けろ!」

「わかりました!」 




「第2東遣航空艦隊」所属、第二戦闘飛行船の艦橋で、双眼鏡を使い見張りをしていた下士官が声を張り上げた。

「前方12時の方向に緑の煙を確認!」

それを聞いた艦長が操舵手と格納庫班に指示を出す。

「針路そのまま! 格納庫班、投下準備! 投下準備!」

 艦内で任務を果たそうと格納庫では慌ただしい動きが起こる。

「投下準備急げ!」

 下士官の発破に兵士達が必死の形相で作業している。


 そして、発煙弾が打ち上げられている上空にさしかかった時、艦長の命令が発せられた。

「投下せよ!」

「投下します!」

 格納庫より巨大な箱が投下された。全長4メートル、幅2メートル、高さ1メートルの鉄の箱だ。


 落下していく箱は暫くすると落下傘を開いた。

 そのままゆらゆらと落下していき、それはアメリカ軍陣地のすぐ近くに凄い振動を起こしながら着地したのである。




「何だあれは? 敵の補給物資か?」

 飛行船が投下した箱を見てアメリカ軍の指揮官が訝しむ。

「おそらくそうでしょう」

 同意する参謀の声も冴えない。

 物資の補給にしては杜撰なやり方だ。

「ともかくあの箱を確保させろ。敵の手に渡すな。それと飛行船について司令部に報告をいれておけ」

「了解!」

 指揮官の指示に参謀や通信士官が慌ただしく動き出した。




 アメリカ軍の箱の確保は難航した。

 目の前に箱があるとはいえ、敵は盛んに撃ってきている。

 大きさが大きさだけに直ぐに担いで持ってくるなんて事はできない。

 箱を挿んで敵との激烈な銃撃戦が展開された。


 箱が投下されてから20分が過ぎた。

 その時、突如、箱が爆発したのである。

 それはとてつもない爆発だった。

 高温の熱線と物凄いエネルギーを内包する爆風が生じた。

 爆心地には何も残らなかった。あらゆる物が一瞬のうちに消え失せた。

 爆心地を中心に巨大な破壊のエネルギーが荒れ狂いあらゆる物を破壊し人の命を奪っいく。

 そして立ち昇るキノコ雲。

 核爆発だった。

 ダヴェンポート市は「ウラン爆弾(原子爆弾)」による核攻撃を受けたのだ。

 この日、ダヴェンポート市は人口の六割を失い壊滅した。


「ウラン爆弾(原子爆弾)」による惨劇はダヴェンポート市だけでは無かった。

「桜華乙班白桜隊」が無差別殺戮作戦を行った内陸主要30都市に「ウラン爆弾(原子爆弾)」は投下されたのだ。


 中西部のオハイオ州のコロンバス、シンシナティ、クリーブランド。

 中西部のケンタッキー州のルイビル、レキシントン。

 中西部のミシガン州のデトロイト、グランドラピッズ。

 中西部のインディアナ州のインディアナポリス。

 中西部のウィスコンシン州のミルウォーキー、マディソン。

 中西部のイリノイ州のシカゴ、オーロラ、ロックフォード。

 中西部のミネソタ州ミネアポリス。

 中西部のアイオワ州デ・モイン。

 中西部のミズーリ州セントルイス、カンザス、スプリングフィールド。

 中西部のカンザス州のカンザスシティ。

 南部のテネシー州のナッシュビル、メンフィス。

 南部のサウスカロライナ州のコロンビア。

 南部のジョージア州のアトランタ。

 南部のオクラホマ州のオクラホマ・シティ、タルサ。

 南部のアーカンソー州のリトルロック。

 南部のテキサス州のダラス、フォート・ワース、サン・アントニオ。


 これらのアメリカ中西部から南部にかけての大都市が核攻撃により壊滅した。

 他にも東部の18の都市が核攻撃により壊滅した。


 東部の都市では「桜華乙班白桜隊」は作戦を行ってはいない。

 東部では、人目にあまりつかない自給自足のできる広い農園という拠点を確保する事が難しかったからだ。


 飛行船による核攻撃は中西部から始まり南部、東部に行われた。

 しかし、その報が中西部から南部や東部に直ぐに届く事は無かった。

「ウラン爆弾(原子爆弾)」の爆発により強力な電磁力が発生するEMP(エレクトロ・マグネチック・パルス)効果が発生しており、電話や無線の内部部品をダメにして使えなくなる事態を引き起こしていたし、破壊工作員も各地の通信網を破壊していたからである。

 

 アメリカ側は飛行船による攻撃に完全に不意をつかれた。 

 日本軍がよもや飛行船をアメリカ本土奥深くに侵攻させてくるなどとは、アメリカ軍も民間人も夢にも思っていなかったのである。


 しかも飛行船は各都市に1隻しか現れなかったし、国籍を示すものも付けられていなかった。それに飛行船のガスの詰まっている大きな気嚢には「LOVE & PEACE(愛と平和)」と英語で描かれていたのだ。

 そんな飛行船が攻撃して来ると思えるわけもない。

 

「愛と平和」と描いてあるのに「ウラン爆弾(原子爆弾)」を投下させるのだから悪趣味である。


 この核攻撃は全ては摂政のシナリオ通りの展開だった。

 開戦初日に西海岸の沿岸大都市を核テロ攻撃により壊滅させ西海岸の防衛網を混乱させる。

 その隙をつき「ウラン爆弾(原子爆弾)」を積んだ大型飛行船がアメリカ本土に侵入。

 そして「桜華乙班白桜隊」は大都市で派手に無差別大量殺戮を行う事で、各基地に駐屯しているアメリカ軍を大都市内部に引き付ける。

 そこに飛行船が到着し「ウラン爆弾(原子爆弾)」を投下して、味方ごと大都市とアメリカ軍を一掃する。

 それが摂政の描いた核攻撃作戦だった。


 内陸主要30都市で無差別殺戮作戦を展開した「桜華乙班白桜隊」は餌に過ぎなかったのだ。

 最初から使い捨ての囮部隊である。


 使用された「ウラン爆弾(原子爆弾)」は沿岸大都市で使用された物より小型の物だった。

 船ならば大型の「ウラン爆弾(原子爆弾)」も運べるが飛行船では重さと大きさも限定される。


 飛行船用の「ウラン爆弾(原子爆弾)」は投下用コンテナと落下傘、それに爆弾が落下の衝撃に耐えられるよう緩衝材を詰めている為、6トンの重量になった。

 メーコン型の貨物積載量は20トンを軽く超えるので充分に積載でき、1隻につき2発の「ウラン爆弾(原子爆弾)」が搭載され使用された。

 爆発を時限式にして20分の余裕を持たせたのは、飛行船の安全を計算しての事だ。

 

 こうしてアメリカ本土への飛行船による核攻撃作戦は成功裡に終わったのである。


 飛行船によるアメリカ本土空襲は摂政が最初に構想したというわけではない。


 第一次世界大戦においてドイツが飛行船によるアメリカ本土爆撃を計画している。

 大西洋と太平洋の違いがあるもののドイツが20年以上も前に先に計画していたのだ。

 そのLZ112のナンバーを付けられた飛行船は全長約211メートル。総重量66トンの大型飛行船だったが完成する前に戦争は終わったので活躍する機会は無かった。


 なお第一次世界大戦においてドイツは飛行船により何度もイギリスやフランスを爆撃しているが、その飛行船の大きさは約198メートルから約226メートルクラスで最大爆弾積載量は27トンから38トンだった。

 

「ウラン爆弾(原子爆弾)」による攻撃を成功させた「第1東遣航空艦隊」「第2東遣航空艦隊」の飛行船艦隊はアメリカ中西部に引き返す。

 補給の為である。


 中西部にある「愛と平和の教団」の農村共同体(コロニー)のうち30ヵ所に、飛行船の為の補給基地としての機能が造られていた。

 飛行船はここで燃料や食料を補給する。

 その燃料はアメリカ国内に設立したダミー会社の観光飛行船会社を通して確保したものである。

 基地の要員が補給にとりかかっている間、飛行船の乗組員は休養している。

 これから再び日本に向け長距離飛行を行うからだ。


 無事、日本に帰投できたとしてもそれで終わりではない。

 飛行船艦隊は再びアメリカ本土に出撃する事になる。

 

 摂政の対アメリカ本土作戦はまだ終わりを見せない。


 【to be continued】


【筆者からの一言】


摂政戦記では内陸部の都市で無差別大量虐殺をする「桜華乙班白桜隊」の役割は、アメリカ人に日本軍への恐怖を刷り込むと共に、アメリカ軍を引き付けるものでした。その間に南部で有色人種を蜂起させると。

しかし、この作品での「桜華乙班白桜隊」の役割はアメリカ軍を誘き寄せる為の完全な餌です。

味方諸共、敵を殲滅するのが摂政の基本戦略。



「総長戦記」ではアメリカ本土で行った核テロの犯人をドイツに擦り付けドイツ・イタリアの枢軸とアメリカ・イギリスの連合の戦争を激化させて中立の日本が最後に漁夫の利を得ようというストーリーです。


「摂政戦記」では核テロを含むアメリカ本土攻撃で打撃を与え、ヒスパニック、インディアン、黒人、そしてメキシコ合衆国を動かして、アメリカの白人VS有色人種連合の戦争、つまり人種戦争に持ち込むというストーリー展開です。


そしてこの「真・摂政戦記」では殲滅戦です。

初日の沿岸都市への第一次核攻撃、そして内陸部の都市への飛行船による第二次核攻撃により大打撃を与えました。

しかし、まだまだ戦争は続きます。

アメリカは移民でできた多民族国家なので民族浄化という言葉は当て嵌まりませんが、アメリカ浄化作戦に近い状況を摂政は狙っているようです。


「総長戦記」「摂政戦記」「真・摂政戦記」この三作品は始まりは同じでも、ストーリーは大きく違って来ています。

 それぞれの違いを楽しんでいただけたらと思っています。


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