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真・摂政戦記 0014話 宣言 

【筆者からの一言】


アメリカ連邦政府無き今、州政府が健在なところは、戦うにしろ中立にしろ州政府が当然、方針を決めるでしょう。

では州政府が消滅したところは?

今回はその一つのケースのお話です。


 1941年12月下旬 『アメリカ ジョージア州 コロンバス市 市長室』


「だめだ。どうにもならん。知事も副知事も未だに行方不明だ。恐らく日本の特殊爆弾にやられたんだろう」

 机に両肘をつき両手で顔を覆った市長は、そう言って嘆いた

 長年の友人で、これまでにも影に日向に色々と助言して来た判事は難しい顔をして腕を組んでいる。


 大統領を殺され他の閣僚も全滅し連邦政府は崩壊した。

 太平洋・大西洋の両艦隊も海の藻屑と消えた。

 アメリカ本土では日本軍の特殊爆弾により60もの都市が壊滅し大勢の犠牲者が出ている。

 

 州都アトランタ市も特殊爆弾で壊滅し知事をはじめとして州議会議員の多くは行方不明となっている。

 死亡が確認されていないから行方不明になっているが、死んだのは確実だろう。

 ジョージア州政府は連邦政府と同様に消滅してしまったのだ。


 これからどうしたらいいのか……

 軍の指揮系統は混乱しているらしく、まともな返答は返って来ない。

 州内にある他の都市の市長と連絡をとっても右往左往して混迷の度を深めているだけだ。


 お隣のフロリダ州はアメリカ合衆国からの脱退と独立、更には中立を宣言した。

 驚いた事に日本はそれを認め、フロリダが攻撃しない限りは日本も攻撃しない事を約束した。


 できればジョージア州もフロリダに倣い独立と中立を宣言したい。


 だが、州都は壊滅し知事は恐らく死んでいる。

 どうしたらいい……

 どうすればいい……

 このままでは何れこのコロンバス市も日本の特殊爆弾により壊滅させられるかもしれない


 市長はその難題と責任に押し潰されそうになっていた。

 コロンバス市民5万人の安全確保はひとえに市長の双肩にかかっているのだ。


 難しい顔をして考え込んでいた判事が口を開いた。

「一つ提案がある」

「何だ? 何でも言ってみてくれ」

 藁にも縋るような思いを胸に市長が問い掛ける。


「無防備都市宣言をするんだ」

「無防備都市宣言?」

 聞き慣れない言葉に市長は戸惑った。

 そこで判事はその意味を説明する。


「そうだ。無防備都市宣言だ。ハーグ条約(陸戦の法規慣例に関する条約)には、防衛されていない都市には如何なる手段に依っても攻撃してはならない、とある。(第25条・防守されない都市への攻撃)

コロンバス市には軍はおらず防衛されていないと宣言するんだ。少なくとも国際法的には攻撃されれば違法となる」


 このハーグ条約の第25条では、防衛されていない都市、村落、住宅、建物がその対象となっている。


 史実における後世、1979年にジュネーブ諸条約に追加され発効された「1949年8月12日のジュネーヴ諸条約に追加される国際武力紛争の犠牲者に関する議定書」では、第五章「特別保護を受ける地域及び地帯」の中で、第59条「無防備地域」があり、無防備地域となって範囲が拡大されている。

 ただし、この第59条では、第一項に「無防備地域を攻撃する事は手段の如何を問わず禁止される」とはあるものの第二項の中に「敵国による占領のために開放されているものを無防備地域と宣言する事ができる」としており、敵国に占領される事を前提とした条約になっている。

 

 その為、1941年の時点では「無防備都市宣言」をしても、敵国軍の占領を前提としたものでは無いと言えるが、ただ単にハーグ条約、つまりは国際法を守って下さいと宣言しているだけともとれるものであった。


「その宣言を出したとして日本は尊重してくれるだろうか?」

 市長の不安は消えない。


「わからん。だが、やってみるしかない。だめでも元々だろう。宣言をしたからって状況がこれ以上悪くなるわけじゃない。逆にうまくいって日本軍の攻撃を避けられるやもしれん」


「……そうだな。」

 判事の説得に市長は頷いた。


 この後、直ぐに市長はコロンバス市の「無防備都市宣言」を行う。


 それが吉と出るか凶と出るかは、今暫くの時が必要であった……


【to be continued】


【筆者からの一言】


書くべき事は山ほどあるけど時間が足りない……



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