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真・摂政戦記 0013話 強まる風

【筆者からの一言】


フロリダ州だけじゃなかった……

今回はそんなお話。


 1941年12月下旬 『アメリカ』


 フロリダ州のアメリカ合衆国からの離脱と独立、中立宣言はアメリカ市民に驚きをもって迎えられた。

 今やフロリダ州はフロリダ共国となった。

 

「裏切だ!」

「売国奴!」

「利敵行為だ!」

「反乱だ!」

「許せない!」

 フロリダを批判するアメリカ市民は多かった。

 特に日本軍の新型特殊爆弾や狂気の日本兵に肉親を殺された者達からの批判の声は大きい。


 しかし、その一方で事態を冷静を見つめ、フロリダ共和国の例に倣おうという州政府も少なからずあったのである。


 連邦政府が壊滅し国内大都市が軒並み大打撃を受け連邦軍も大損害を出している状況となっては、戦争続行は不可能と判断してもおかしくはなかった。


 摂政は現在までに60の大都市を新型特殊爆弾(ウラン爆弾という名の原子爆弾)で壊滅させていた。

 その殆どが人口20万人以上の都市である。


 ただし、アメリカにも人口の偏りはある。


 現在、アメリカ本土には48州があるが、州別に見ると、その中で新型特殊爆弾(ウラン爆弾という名の原子爆弾)が使用されたのは28州だ。


 新型特殊爆弾(ウラン爆弾という名の原子爆弾)は使われなかったが、「桜華」部隊による攻撃が行われた州は11州だった。


 州の中には人口が少なく、20万人どころか人口が10万人規模の都市さえ無い州も存在する。

 優先すべき戦略攻撃目標が存在しない州もあった。

 

 そうした種々の事情から9州は日本軍による攻撃が大規模には行われていなかった。通信設備の破壊等、軽微の破壊工作が行われたくらいだった。

 その9州は以下の通りとなる。

 東部、デラウエア州。人口約26万人。

 東部、ウエストバージニア州。人口約190万人。 

 東部、バーモント州。人口約36万人。

 中西部、ネブラスカ州。人口約130万人。

 中西部、ノースダコタ州。人口約64万人。

 中西部、サウスダコタ州。人口約64万人。

 西部、アイダホ州。人口約52万人。

 西部、ユタ州。人口約55万人。

 南部、ミシシッピ州。人口約220万人。


 この時代、新型特殊爆弾(ウラン爆弾という名の原子爆弾)が使用される前の全米第一の人口を誇る都市はニューヨーク市であり、その人口は約740万人。第二の人口を誇るのはシカゴ市で約340万人。


 日本の攻撃を受けなかった9州は、州ではあるがその人口はシカゴ市一つに遥かに及ばない。

 この9州のうちユタ州とネブラスカ州を除く7州には人口が10万人に達する都市は一つも無かった。

 それらの多くは人口密度の薄い農業主体の州だ。


 これらの州政府はフロリダ州の独立に揺れた。

 

 特にフロリダ州が世界に向けて独立宣言をしてから数時間後には、早くも交戦国たる日本がフロリダ共和国を承認したのである。

 日本はフロリダ共和国の中立も承認し、フロリダ共和国から日本に敵対しない限りは、日本もフロリダ共和国を攻撃しない事を伝えてきた。

 ただし、その代わりアメリカ連邦軍のフロリダ領内通過の禁止、武器や物資や兵員の供給禁止を条件としている。

 これは国際法における中立国の義務の範疇であるから理不尽な要求でもない。


 このフロリダに対する日本の対応を見て、フロリダに倣い独立し中立を宣言すれば日本軍の攻撃は避けられるのではないかと考える州政府が続出したのである。


 それは既に新型特殊爆弾(ウラン爆弾という名の原子爆弾)が使用され被害を受けた州政府も変わらない。

 これ以上、新型特殊爆弾(ウラン爆弾という名の原子爆弾)を使用されてはたまらないと、分離と独立を検討する州政府が少なからず出て来る。


 また、アメリカ西部、中西部では気球に乗った日本兵が昼夜を問わず舞い降りてきており、アメリカ人を殺害している。

 いつ、どこに降りるのかわからない気球に乗った日本兵の出現に、これらの地域に住む人々は、ろくに夜も眠れず恐怖している。

 故に西部と中西部では日本の攻撃を中止させる為にも、分離と独立を真剣に深刻に検討していた。

 


 ただし、中には州政府自体が新型特殊爆弾(ウラン爆弾という名の原子爆弾)により消滅してしまった州もあった。

 

 アメリカ合衆国の場合、「州都のある都市=州内で人口最大の都市」の公式は必ずしも当て嵌まらない。

 ニューヨーク州などはニューヨーク市が州内最大の都市であるが州都はオルバニー市である。

 オルバニー市は今のところは核攻撃を受けることなく無事である。

 数的には無事だった州都が多い。


 しかし、中には「州都のある都市=州内で人口最大の都市」で、核の劫火の中に消えてしまった州政府もあったのである。

 東部、マサチューセッツ州。ロードアイランド州、コネチカット州。ニュージャージー州。

 中西部、インディアナ州。アイオワ州。ウィスコンシン州。

 南部、テネシー州。サウスカロライナ州。ジョージア州。オクラホマ州。アーカンソー州。

 これらの12州では新型特殊爆弾による攻撃を受けた結果、州知事、副知事が亡くなるか、重症を負うか、行方不明で、他の州政府メンバーや州議会議員も少なからず被害を被り、州政府は混乱するか機能停止に陥っている。


 これらの州政府を失った州は困難な状況に陥り、市民は筆舌に尽くし難い苦難を余儀なくされたのだった……



 日本のフロリダ共和国承認は早かったが、それには理由があった。

 フロリダ州には「ウラン爆弾(原子爆弾)」は落とされておらず、主要港を破壊されるだけにとどめられている。

 人口が190万人と少なく20万人を超える都市が無い事もその理由の一つだったが、フロリダの気象も大きな理由だった。


 フロリダの地は毎年のようにハリケーンに襲われている。こない年の方が珍しい。

 それも強力で大被害をもたらすハリケーンが数年おきには必ずくる。

 つまり、わざわざ「ウラン爆弾(原子爆弾)」を使わなくても、大きな被害は自然現象によって数年おきに、酷い時には連年で引き起こされている。

 連邦政府が健在ならば、援助の手もあるだろうが、もはやその連邦政府は消滅した。


 現状ではフロリダが独自に高度な経済的発展を遂げて大国への道を歩む事は極めて難しいと言わざるを得ない。

 つまりは、フロリダが独立したとしても、どうという事は無いという判断があったからである。

 そうした判断とともに、このフロリダの独立をきっかけに他の州の独立をも促進させようという考えが摂政にはあった。

 だから摂政が日本政府にフロリダの承認を即座に行わせたのである。

 

 アメリカは独立戦争以後、一つの政府、一つの国として常に纏まって来たわけではない。

 過去には南北戦争が発生しており南部11州がアメリカ合衆国を脱退し、南部連合を結成してアメリカ合衆国と戦っている。南部連合は敗北した為に崩壊してしまったが。

 だがこの時、州の利益のためならば州政府はアメリカ合衆国から脱退する道を選ぶ場合もあるという先例ができた事には変わりは無い。


 その南北戦争から76年。

 理由は違えど再び州政府がアメリカ合衆国から脱退した。

 フロリダ州は南北戦争に続き2回目となる脱退だ。

 

 そしてフロリダ州の独立宣言に遅れる事3日。

 今度は西部のユタ州が独立を宣言した。


 フロリダ州に続くユタ州の独立宣言は各州政府を更に揺れ動かす事となる…… 


【to be continued】

【筆者からの一言】


分離独立の動きはどこまで広がるのか……

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