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閑話 真夜中の乙女の戦い part1

謹慎中の出来事です

・・・・・・謹慎から数日。


 ルースがすごしている寮の謹慎部屋は今、タキ、エルゼ、レリア、あとバトが同室となっているのだが、夜に寝る時は必ず男女に分かれて仕切りを作って就寝をしていた。


 理由は男女の間違いがないように、ある程度の距離を置かせるということなのだが・・・・・・ルースには元々間違いを犯す気はなかった。


 

 その気がない理由としては、迂闊に手出しができないような相手だからというのがある。


 まず、エルゼは公爵家の令嬢、レリアはモーガス帝国の王女である。


 二人とも身分としてはルースよりも上であり、迂闊に何か起こしてしまえば両家からいろいろな目に遭わされるのは目に見えているのだ。


 また、バトは体が妖精ゆえに小さくて手乗りサイズなので話すぐらいしかないし、タキに至っては人型なのだがモンスターでもあり、そう手出しをするような相手ではないのだ。


・・・・・その他にもそれぞれの個性なども理由にあげられるのだが、とにもかくにもルースは毎晩仕切りを敷いては普通に熟睡をしていたのである。


 


 だがしかし、それはあくまでルース側の考えであり、エルゼたちはそうではなかった。



「‥‥‥では、今晩も『互いに見張ろう会』を開始しましょう」

「ああ、そうだな」

【我は別にどうこうされるつもりはないが・・・・・今は召喚されていないとはいえ、主殿に見の危険があるのは見過ごせぬのぅ】


 ルースが寝静まったころ、エルゼ、レリア、タキの3人はそれぞれ目を覚まし、集まって互いを監視していた。




 エルゼとしては、ルースの事が病的ストーカーに好きであり、この際既成事実があったほうが良いと思ったのだが、肝心のルースはさっさと寝てしまい、襲うような兆候もないため逆に夜這いをかけたかった。


 レリアとしては、以前の帝国に恨みを持っているやつらの企みに巻き込まれた時以来、ルースに好意を持っているのだが、明確に恋とは自覚していない。


 けれども、それでもルースに対して好意を持っているがゆえにエルゼが怖くとも独占が許せずに、そして貞操観念にしてもこの中ではまともな方なので、何かが起きたら見過ごせないのだ。



 タキとしては、彼女は長い間を生きてきたモンスターであり、元々は極東の方にあった国の遊女たちに買われていた一匹。


 その場所で育ったがゆえに、貞操に関しては少し緩いところもあったが大事なことはしっかりと理解できている。


 それに、召喚してくれるルースにはここ最近酷い目にしか合っていないとはいえ、それでも長い時を着てきた彼女にとっては新鮮な相手でもあり、それなりに好意はあるのだ。


 その為何か危機にさらされるのは見過ごせず、また、この中では一番の年長者ゆえに彼女たちが暴走しないように見張ろうという義務感があるのだ。・・・・・・今何歳なのかは、数えていないが。



 その為、謹慎以来こうして一緒に版を過ごす日が出来てしまったがゆえに、互いの暴走が起きぬようにストッパーになり合って監視しあう夜が続いているのである。


 ちなみに、バトが加わっていないのは、妖精である彼女はどうも深夜は眠気がひどく、既に就寝しているために何かすることもないだろうと思われているため、省かれたのであった。




「・・・・・しかし、何でルース君はあたしたちを襲う気もないのかな?魅力がないのかしら?」

「いや、当り前に身分差や常識などを彼が考えているからだろう。魅力とか言う前に、常識を考えれば分かることじゃないか?」


 エルゼのつぶやきに、レリアはそう答える。


 エルゼの場合ストーカー部分で少々ねじ曲がったところがあるのだが、レリアは戦姫とも呼ばれていただけに規律は守り、常識はあるのだ。


 その為、答えられたエルゼは何も言えなかった。



【まぁなんにせよ、主殿は睡眠欲の方が大きいのじゃろう。というか、どこか達観しているような気もするのじゃが・・・・・】

「当り前よ。ルース君って昔から人よりも冷静で、ツッコミもよく入れていたもの。精神的にはあたしたちよりも大人なのは間違いないわね」

「というか、ツッコミをよく入れる状況って何をしていたんだ?」

「具体的には、ルース君をいじめた子を丁寧につぶしてあげたり、どこかの貴族家のバカ息子が婚約を結ぼうと圧力をかけてきて、あたしがルース君に気があるのを見て彼を排除しようとした企みに対して1000倍返しをしたり・・・・・・・色々あり過ぎて覚えていないわね」

【‥‥‥なんじゃろう、たまにこの小娘が本気で怖いのじゃが】

「どう考えても聞いている以上の事をやらかしているようにしか思えなかいからな‥‥」



 エルゼの言葉に、タキとレリアは思わず体を震わせた。


 この中で最恐といえばエルゼかもしれないという認識は一致しているのである。


 


 戦姫という呼び名が付くほど戦闘に長け、スタイルの全体的なバランスが良いレリアや、昔は国を滅ぼしたことがあるモンスターのタキでも、やっぱり怖いものは怖いのだ。


 とはいえ、ここで恐怖心に負けていては彼女の暴走を許しかねないという事で引き下がることはなかった。



「とにもかくにも、今晩も何もなくて平和に済みそうね・・・・・・まぁ、先日ルース君を探ろうとした馬鹿たちを見つけて、公爵家の権力で捕えて吐かせていますけど・・・・・・・」

「ああ、私の方でも見つけた馬鹿たちか?確かその黒幕というか、自ら探しに来ているバズカネェノ侯爵なんて輩の情報も出てきたな」

【人間というか、欲深い者たちは愚かな事しかしないのじゃと思いつつも、我も似たような者たちが学内に侵入しようとしたのが気配でわかったからのぅ。謹慎の身ゆえに出れないのじゃが、連絡手段はあるので友のエルモアに頼み、捕縛してもらってしかるべきところに引き渡してもらったのじゃ】


 それぞれの想いがずれていたりしても、やはりルースの事が大切なのは変わりない。


 ゆえに、こういう時ばかりは一致して対応しているのである。


「まぁ、少なくともバズカネェノ侯爵・・・・確か今は、子息に家督を譲ったようだけど、滅亡は免れないわね」

「帝国でも見るか見ないかの屑らしいからな・・・・・・その子息も相当な屑らしく、何かをやらかしそうなので経過観察中だな」

【愚者というのはまさにそういう者の事を言うんじゃなぁ】


 何にせよ、彼女達にとって大事な人を利用しようと企む相手には無慈悲な制裁を下している。


 そして、今晩もまた一つの家がその制裁対象にされたのであった。



【ぬ?そういえばバトはどこじゃ?確かそのあたりで寝ていたはずじゃが・・・・】

「まさか!」


 ふと、タキが寝ているバトの姿が見えないことに気が付き、エルゼは直ぐに察した。


 音を立てず仕切りを超え、ルースが起きないように彼の就寝している様子を見つつ、布団を少しはがすと・・・・


―――――すぴーっ、すやぁーっ




 バトがしっかり布団に潜り込んで寝ていた。


 しかもくっついて。



「「【・・・・・・】」」


 その様子を見て、三人は口を閉ざし、互いに目で応答し、そっとバトをつまみ上げる。


 そして、そのまま仕切りの向こうへもっていった。





 その晩、一体の妖精が悪夢にあったのは言うまでもない。


―――――ギャァァァァァァァ!?

「油断していたわね」

「小さいとはいえ、やはり加減はしないほうが良かったか」

【何にせよ、主殿に害はなかったとはいえ、摘める芽は摘んでおきたいのぅ】

自業自得というか、一体の妖精が犠牲となった。

謹慎が解けるまで毎晩同じようなことを繰り返していたりもする。

とにもかくにも、次回から話を進めるために新章予定。

次回に続く!!


「簀巻き?翅をもぐ?」

「いやいや、ここはあぶってだね・・・」

【そんな物よりも、妖精が苦手とするような香を焚いてその中に入れてじゃな・・・・・】

―――――許シテエェェェェェェェェェェ!!

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