79話
事後処理かな?
・・・・・・ルンブル王国は今、混乱のさなかにあった。
戦前にいた軍が戻ってくるやいなや、その勢いのままに王城へ押しかけ、そこで会議していた第2王子のゲンドール=ルンブル含む開戦派の者たちを捕縛したのである。
事実上のクーデターのようなものだが、其のまま軍がトップに君臨するのではなく、すぐに調べ上げ王城の地下にとらわれていた国王や第1、3王子たちを解放した。
どうやら穏健派や中立派たちを捕縛していたのは良いのだが、すぐに処刑したりはせずに、何かに利用しようとでも考えていたのだろうか。
そのまま調査を深めると、あの秘密などを取引していた相手に国王たちを引き渡そうとしていたことが判明した。
その引き渡しによって再度秘密兵器を得ようとしていたようだが、この時点で第2王子たちは詰んだ。
何しろ、確かに政権をすべて掌握した状態とはいえ、まだ国王は国王のままである。
ウィードルン=ルンブル国王は王権を渡すように脅迫されたらしいが、断固として拒否。
その為、既に第2王子たちは国家反逆罪として罪に問われる立場となっていたのである。
だがしかし、国王の命令の証明である印鑑などを勝手に偽造し、軍に渡して戦争を起こすようにしていたことまで発覚したのだ。
・・・・・・この無駄にした戦争のせいで、ルンブル王国はその出費で大赤字。
しかも、食料などを軍に当てており消費済みで、国民たちにいきわたった状態ではなかった。
つまり、目前になった真冬で、国民たちに食料がいきわたっていないので、このままではが示唆や後尾勢でることが予想されたのである。
すべては、第2王子含む開戦派の強硬的な開戦によって。
そのうえ、彼等に武器などを渡していたらしい組織はすでに撤退済みのようで手掛かりもなく、まさに立つ鳥跡を濁さず、何処へ向かったなどという証拠も綺麗になくなって行方は知れない。
金も支払っていたようで、国庫は空っぽ。
ゆえに、他国から食料を輸入しようにも国はできない。
その事実をすべて知った時に、皆、諦めた表情になったのであった。
「そして、敗戦を認め、今後属国となる代わりにどうにかして国民に食料を回してくれるようにと言うことか・・・・・・」
グレイモ王国、王城の謁見室にて、ルンブル王国のやつれた使者たちから事情を聴いて、国王ハイドラは苦い表情を浮かべた。
「戦争を仕掛けてきたのはそちらからであり、こちらも被害を被っている。返す当てもないのだろうか?」
「ぐっ・・・・ど、どうしてもこうでもしなければ、国民たちがダメになってしまうのです!!」
ハイドラ国王の鋭いにらみに対して、使者たちは文句を言えないのを分かってはいるが、後に引けないのでそう答える。
ハイドラ国王とて、他国であろうとも人々が苦しんでしまうのは嫌になる。
だがしかし、戦争を仕掛けてきたうえにそんな国内のごたごたに巻き込まれた形だというう理由を考えると、国のトップとしてはそう首を頷けないのが困りどころなのだ。
「・・・・・・ならば、敗戦をきちんと受け入れ、なおかつ今回の戦争にかかった費用などの賠償金をきちんと支払う手立てが整えば考えよう」
ハイドラ国王はそう判断を下した。
現段階では、ほぼ確実に大赤字で破産が間違いなさそうなルンブル王国。
その為、現状のままでは賠償金が払えないのが目に見えている。
そこで、それらもすべてきちんと払う手立てなどが確立さえすれば、そのことから食料を供給してもいいとしたのだ。
まぁ、その為にはほぼ確実にルンブル王国は身を切らねばならないところがあるだろう。
けれども、調べによるとルンブル王国が苦しくなってきたのは浪費などが多くなったことなどであり、切り崩そうと思えば切り崩せるはずなのだ。
それをせずに戦争を仕掛けてきて、それで得た領地などを活用しようと考えていたのは甘いと言いたいが・・・・・・とにもかくにも、ここではっきりとした誠意を見せてくれさえすれば、ハイドラ国王はルンブル王国の国民たちのために食料供給を行う事を約束した。
ただし、裏切れば二度と何もせず、兵士たちを攻めさせて滅亡させる気はあった。
世のなか全てがきれいごとで動かせるわけではない。
どこかで落としどころが必要になり、必ず誰かがその分を埋め合わせなければいけないことを彼は理解していたのであった。
ちょうどその頃、グリモワール学園は授業中であった。
ルースは謹慎ゆえに学業に出られず、エルゼとレリアが出ているため、今は謹慎部屋にいない。
その為、暇なのでババ抜きをしてルースたちは遊んでいた。
なお、タキは本来ミノムシの刑の状態であったが、トイレなどの問題ゆえに、服にお札を大量に張り付けることで何とか自由を勝ち取った。
ただし、ルースに何か危害を加えようとしたら即座にミノムシ化するように仕掛けているらしい。
一体どういう構造なのやら・・・・・・
―――――コイコイコイコイ、ジョーカーコイ!!
真剣な表情で、バトが翅を動かしてルースの持つカードを引いた。
―――――‥‥‥アアアアァァァァァ!!
思いっきりババを引いたようである。
物凄い表情に出やすいというか、全身でその衝撃を伝えているのが面白い。
――――――ナラバ!
きらりと目を光らせ、バトはその小さな体でカードを素早くシャッフルし、さっき引いたジョーカーがどれなのかわからないようにした。
ちなみに、普通のトランプのサイズだとバトにはでかいので、床に置いた状態でやってもらっていたりする。
こちらからは見ないように配慮しているのだが・・・
【ぐぬぬぬう・・・・・これじゃ!!】
タキが神経を集中し、バトのカードをとる。
その瞬間、バトの口元がニヤリとなったのをルースは見逃さなかった。
【の、のじゃあぁぁぁぁ!!】
どうやら引いてしまったらしい。
先ほどのバトと同様のリアクションをタキは見せたのであった。
・・・・・・というか、仮にもこの中で最年長で経験豊富な奴が分かりやすいリアクションをとるってどうなのだろうか。
【ぐぬぬぬ、召喚主殿の番じゃ!】
すばやくカードをシャッフルし、わからないようにするタキ。
自分で引いてしまった時は分かりやすいリアクションをとるが、流石に引かれる側になるときちんと分別をわきまえてポーカーフェイスになるようだ。
だがしかし、それは無駄である。
「こっちかな?」
ピコ!
「あ、やっぱこっちか?」
クテェン
「それともこっちか?」
ピコ!
「…‥‥タキ、尻尾でわかりやすぎだ。そして一抜けたっと」
【し、しまったのじゃぁぁ!?】
どう見ても、その九本ある尻尾が分かりやすい動きをしてくれたおかげで、無事にルースは最初に抜けたのであった。
感情が尻尾に出るってお前は犬か?
あ、狐はいぬ科だったし、間違ってもいないか?
さてと、次回はちょっと閑話かな。
謹慎中の話というべきか、ある意味乙女の戦いとでもいうべきか・・・・・
次回に続く!!
あ、その後新章予定。ようやく章が変わるね。




