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77話

隠し事はいずれバレる。

その時に、隠していた期間分やその内容によってバレたときのことは盛大になっていくのだ。

・・・・・・網にかかった魚(逃れようにも逃れようのないこと)、一難去ってまた一難(一つの災難をようやく切り抜けたと思ったら、また別の災難に襲われること)、一災起これば二災起こる(災難は、連続して起こるもの)、危急存亡の秋(危機がそこまで迫っていて、生き残れるか否かの、瀬戸際の意)、等の様々な似たような意味を持つことわざがルースの頭に浮かぶ中、いかにして逃れるべきか考えていた。



「・・・・・でー、昨日何をやーらかしたのかなー?」


 にこやかに問いかけてくるバルション学園長。


 だがしかし、全身から発せられる威圧は全くの逆で、恐ろしいものであった。






 本日、往生から速攻で帰還してきたらしいバルション学園長に呼ばれ、学園長室にルースは来たのだが、入る前に気が付くべきであった。


 隠れていた威圧が室内に入ると同時にむき出しとなり、逃げようと思ったがドアが施錠し、開けようがない。


 しかも、気が付けばエルゼにレリアも室内にいて、同じような顔で威圧を放っているのだ。



・・・・・・どうやら、昨日タキと一緒に、あの襲撃してきた怪物を葬り去ったことに関して、耳にされたらしい。


 そこでなぜエルゼやレリアも学園長のように無言のにこやかな笑みの威圧で押しかけてくるのはわからないが、とにもかくにも黙っていたことが逆鱗に触れたようである。


 はっきり言って、あの怪物よりも今のバルション学園長たちの方が圧倒的に怖かった。




「えっと、その・・・・・昨日ってなんのことでしょうかね?」

「・・・・・ねぇルース君。物事って隠すとね、あまりいい事は無いのよ」

「そうそう、嘘つきは首をはねられることだってあるし、今のうちに白状したほうが良いぞ」

「生徒二人はよ-くわかってくれるねー。で、君も良ーくわかってくれるだろうかーな?」



 あ、これごまかせない。確実に嘘を吐いたら殺される。



 そうルースは悟り、ごまかすのをあきらめた。


「で、では説明をしたいのですが・・・・・タキを召喚して、彼女からも話してもらうのはだめでしょうか?」

「んー?いいよー」


 よし、生贄兼身代わり兼威圧の配分相手追加決定。




「『召喚タキ』!!」


 召喚魔法を使い、ルースはタキを呼びだしたが‥‥‥出てきたのは、一枚の紙きれだけだった。


 なにやら書いてあるので、読んでみれば「召喚拒否」の4文字のみ。



「‥‥‥あの野郎逃げやがったぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 実は召喚魔法は、相手側のモンスター自身が拒絶して逃げることが可能でもある。


 以前、エルゼの怒りで呼びだした時には拒否せずに出てきてしまっていたが、あれは単純に勘を察知し損ねていただけである。


 で、今回はこの場の状況を素早く感知し、二度は失敗しないとばかりに召喚を拒否したのだと予想できた。



「あーらあら、まぁそのあたりは予想できーていたから、対策済みなーのよね」

「え?」


 その召喚拒否を見て、バルション学園長は手を叩いた。



 と、それと同時に学園長室の扉が開き、エルモア先生が入って来た。


・・・・・・簀巻きにして、口をふさがれ身動きできないタキを引きずって。


【もがもがもががががーっ!!(何をするんじゃお主はーーー!!)】

「・・・・・すまないな。バルション学園長に少々研究費用をもらえると聞いて、ついやってしまったかな。まぁ、そもそも私はこの学園の教師でもあるし、逆らえないな」


 起こっているタキに対して、エルモアはどこもすまなそうにせずにそう告げた。


 タキならこの程度すぐに逃げ出せそうなものなのだが、よく見ればなにやら簀巻きの表面にいくつもの御札のような物が貼られていた。


 おそらく、タキが逃げ出さないようにするためのものなのだろうけど・・・・・なんでそんな物があるの課はさておき、これでは逃げられないことが確定したのであった。











「なーるほど。森の中で怪物にあーってしまい、襲撃されーて、逃げ切れなーかったから戦闘し、消し去ってしまったと・・・・・」

「はい、そういうことです」

【正直言って、我自身威力にびっくりしていたのじゃ。でも、これは不可抗力じゃし、正当防衛という事で解放してくれぬかのぅ?】


 全てをルースとタキは白状し、昨日あった怪物遭遇事件を事細かに説明した。


 もうこの周囲の威圧がすさまじ過ぎてルースは恐縮し、タキを見れば彼女の頭の方にあった狐耳が完全にぺたりと倒れており、降参しているのが目に見て取れる。


 

「ねぇルース君ってバカなの?そういう時って素早く逃げてこっちに来てくれれば手助けしたよ?」

「何やらやばそうな怪物のようだけど、それでも真正面からやりかえすなんてことはなかったんじゃないかな?確かに、攻撃されたら応戦するのは先方としてはあるけど、今回は勝てたから良いけど負けたら死んでいた可能性があるから逃げる手もあったんだよ?」

「まぁ、王城の方で入手しーた情報だと、そーの怪物はおそらーくルンブル王国からの逃げーた秘密兵器だっーたようだし、脅威はなーくなったけど・・・・・・正々堂々挑むとは、ずいぶん自分の強さに自信を持ったねぇ」


 三者三葉、それぞれの容赦ない言葉と圧力がルースたちにのしかかる。


 なお、エルモア先生は既に退避済みのようである。逃げたよあの先生。


 というか、あの怪物ってルンブル王国の秘密兵器だったのか?



「なんでそんな物があの森に・・・・・」

「なんでーも、暴走して逃げだしーたというのが有力な話しらーしいね」



 暴走の結果ルンブル王国軍から逃げ出し、グレイモ王国内へと侵入。


 そして宛もなくさまよい続けたところ、ルースたちのいる場所にたどり着いてしまったようだ。


 戦闘し、消滅させちゃったけど・・・・・



「で、調べてみーると、かなり吹っ飛んでいるーんだよね」

「ほぼあの怪物の攻撃です」

【そうじゃよ。あやつ体液をまき散らし、それを向けてきたんじゃもん】


 学園長のその言葉にぎくりと身体を震わせたルースとタキは、この際あの怪物に全面的な被害を押しつけることにした。


 が、ダメだった。


「物凄い光線が出ーてきて、怪物が消滅しーたとさーれるけど・・・・・あなーたたちの仕業よね?」

「【・・・・・・はい】」


 睨まれ、ルースたちは話すしかなくなるのであった。


 逆らえない。あれは確実にバレているし、嘘をついたら殺される・・・・・・







 全てを吐き、その話を聞いたバルション学園長は頭を抱えた。


「・・・・・なーるほど。タキの攻撃をルース君が強化し、その結果放たれーた光線だったのね」

「はい、その通りです」

【遠距離攻撃は苦手じゃったし、久し振りにぶっぱなしたからどのぐらいの威力なのか今一つわからんかったのじゃ。召喚主殿の手助けを交えての威力ゆえにバカみたいな威力になったのじゃろうな】

「はぁ、こーれじゃ時間の問題ね‥‥‥」




 この話を聞き、バルション学園長はルースとタキ、この二人(一人と1匹?)がそろう事でルンブル王国軍の秘密兵器を消しされるだけの力があるのなら、その力がほぼ確実に目をつけられる可能性に頭が痛くなった。


 今回ばかりはその姿を見られていないとはいえ、どう考えても隠し通しきる事が出来ない。


 そうなってしまえば、戦場へ派遣される可能性があり、さらにその力に目がくらんだ有象無象な輩が無理やり勧誘しようと動く可能性もあるのだ。


 生徒たちを学園長として守りたいのだが、これでは守り切れない。



「…‥‥はぁ、なら勝手に動いーた処分を下すーわね」

「しょ、処分ですか」

【あのまま放置しておけば被害が広がった可能性が】


「黙りなさい!!」

「【ひっ!!】」


 バルション学園長の言葉に、ルースたちは互に怯えた。


「被害がでなくなった?倒せたからよかった?そんな話じゃないのよ!それだけの力の事がうかつに広まってしまえば色々と面倒事が起きてしまうのよ!!それに勝てたからいいかもしれないけど、あなたたちの命が無くなった可能性があるし、タキさんはまぁどうでもいいけどルース君。君は私の生徒であり、その生徒の命が失われることはこちらにとっても、そして今そこにいる彼女達にとっても辛いのよ!」


 いつもの延ばす口調ではなく、怒涛の言葉で言われ、ルースたちは事の重大さをいやというほど身に沁み込まされた。


 見れば、エルゼとレリアもバルション学園長と同じような表情になっており、同じことを言いたいのだろう。



「当分、確実にあなたたちを探る輩が増加するでしょうし、隠しきれる自信はない。だからこそ、隠れるために大体1ヶ月ほど寮での謹慎を言い渡します!!」

「・・・・・・分かりました」

「ついでにタキさん」

【は、はい。なんじゃろうか?】

「あなたは生徒ではありませんが‥‥‥召喚されるモンスターの立場とはいえ、召喚主を危険な目に遭わせないように動けなかったのかしら?そもそもこの中では一番の年長者がなぜ止めなかったのかしら?」

【・・・・・・・】

「何も言えないならそれで結構。その簀巻き状態で、ルース君の部屋につるし上げます」

「ちょっと待ってください学園長!!それじゃぁ、あの女狐とルース君が四六時中一緒になるわよ!!」

「そ、それだけは何とかやらないほうが良いと思うよ!!」



 学園長がタキに下した言葉に、慌ててエルゼとレリアがそう反論した。


 タキが常に一緒になるような状況が気に食わないのだろう。



 しかし、その決定は覆ることはなかった。


「これは学園長としての命令です。・・・・・・ですがまぁ、若い男女が同室になるのは・・・・若い?」

【何で疑問形で見るのじゃよ!?】

「まぁ、そのあたりはどうでもいいとして、同室になるのは確かに問題があるでしょう。ですが、あなた方が勝手に動かれるのも困ります。そこで、物は相談ですがエルゼさん、レリアさん。ある程度事情を理解している貴女たちでルース君たちが何か間違いを犯さないように見張ってくれないでしょうかね?男子寮の奥の方にある広い部屋で同室ということになってしまいますが・・・・・」

「了解です学園長」

「その命令、承りました」


 学園長のその言葉に、あっさりエルゼとレリアの二人は従った。


 それでいいのかよ二人とも。


 というか、二人とも女の子だしあまり変わらないような・・・・・いや、手出しをしたら確実に痛い目を見るのは分かるけど。



 とにもかくにも、この日ルースには1か月の謹慎とエルゼたちの見張りが付くことが決定してしまったのであった。


 学業の面で問題が起きそうになるので、そこはエルゼたちが授業のノートを見せてくれたりするようだが・・・・・


「ふふふふふふふふふふふふ、これで合法的に同室、いえ同棲の許可を得たも同然よね」

「な、何か間違いが起きないともかぎらないし、同室で見張るのは合法だよな。うん」


【‥‥‥なぜじゃろう。これ召喚主殿の貞操の危機が思いっきりあるようにしか思えぬのじゃが】

「タキ、その言葉には同意するよ」


 なんかこう、二人の目が獲物を捕らえた肉食獣のようになっているもん。


 学園長、憂さ晴らしも兼ねて俺達で楽しもうとしていないだろうか‥‥‥‥



 なんとなく身近な身の危機を感じ、ルースは悪寒で震えたのであった。


―――――主様、忘レテイナイ?

「あ、バトもいるんだった」


 正直言って、この妖精もいたことを忘れかけていたよ。


 というか、何時からいたの?え?威圧に押されてポケットから出られなかっただけ?


 忘れさられていたバトが機嫌を悪くし、直すのに時間がかかったのは別の話である。

・・・・・これってルースたちにとっては処分、エルゼたちにとっては棚から牡丹餅かも。

何はともあれ、1ヶ月の謹慎となったが、よくよく考えてみれば謹慎明けには冬休みとなるのだ。

なんにせよ、この期間を平穏無事にルースは過ごせるのだろうか?

次回に続く!!


―――――イイモン、忘レテイルナンテソノ程度ダッタッテ事ダモン。

「悪かったよバト・・・・・いや本当に、機嫌を直してくれ」

―――――ソレジャア、直スタメニ私ノホッペニキ、


ぎろり!!

―――――睨マレタカラ、ヤッパナシデ。本気デ怖イヨ。

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