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74話

少し短め

 もうそろそろ真冬に入りそうなこの頃、本日の授業は召喚魔法からであった。


 この授業はバルション学園長が受け持っているのだが、どうやら何かあったそうで王城に呼び出しがかかり、代理として薬草学の方で教鞭をとっているはずのエルモア先生が来ていた。



「って、エルモア先生って召喚魔法を使えたっけ?」

「いや、使えないな。けれども、それなりに召喚魔法については精通しているし、モンスターについての知識も豊富だったから白羽の矢が当たったんだよな・・・・・めんどくさいけどな」


 ポロリと本音がこぼれたようだが気にせずに、召喚魔法をルースたちは準備する。



 いつも通り金色に輝く黄金の魔導書(グリモワール)を顕現させる。


「『召喚タキ』!」


 いつも通りの召喚手順でタキが召喚され、その他の受講していた生徒たちもそれぞれのモンスターたちを召喚し終える。



・・・・・・にしても、タキって九尾の狐姿だとやっぱりでかいな。他に召喚されているのが小鳥や子犬のようなモンスターなのに、サイズ差がでかい。


 人の姿だと平均的な身長よりも高めとどこかが大きめになるし、その質量的な部分がどうなっているのか気になる処である。



 そんなこんなで、召喚魔法の授業である。


「えー、では本日学園長が行う予定だったリストをもらってはいるが‥‥‥ふむ、これから召喚してもらったモンスターたちと共に、なにやらこの封筒に書かれたことを今日中にこなすというのがそれらしいな」


 エルモア先生が封筒をいくつか取り出し、受講している生徒たちに渡していく。



 書かれている内容は何かの買い物の指示だったり、他の人ともに組んでへんてこな体操を踊ったりするようだけど……



「・・・・・俺たちは木の実の確保か」

【『スッパリン』の木の実とは、これまた嫌なものを引き当てたのぅ】


 ルースに渡された内容を見て、あからさまにタキが嫌そうな顔をした。


―――――

『スッパリン』

超・酸っぱい木の実の中でも、究極的な酸味があるとされる木の実。

その木の実の汁一滴だけでも、どんな生物もたちどころに酸っぱさに悶え苦しみ、防犯用グッズとしても有効でもあるため、そこそこ重宝される。

なお、調理方法によっては酸味の程よいお菓子ともなるため、食用としても使用される。

ただし、なぜか栽培はできず、自然になっている木の実しか採取できない。

―――――


【この木の実、匂いが独特ゆえにどこにあるのかは分かりやすいのじゃが、迂闊にその汁を少しでも舐めると酷い目に遭うからのぅ。昔、うっかり大量になっていたスッパリンの木に激突して、とんでもないことになったのじゃよ】


 その時の事を思い出したのか、ぶるっと震えるタキ。


 とんでもない酸っぱさなのは確かであり、その木の実の周辺にはモンスターがそう寄り付くこともないそうなので、モンスター避けとしても、一時期は計画されていた話も聞いたことがあった。


 まぁ、扱いが難しいので実験段階で多数の犠牲者が出てしまったからその計画はとん挫したそうだけどね。





 とにもかくにも、この木の実を探しだしてくるのが今回の授業にて、ルースたちに課せられた課題のようだ。


「タキ、スッパリンの木の実の場所は分かるか?」

【そうじゃな・・・・・この間、都市外の湖に召喚主殿が呼んだときがあるじゃろ?あの湖の周辺にスッパリンの香りがしたから、おそらくそのへんにあるはずじゃ】



 案外、簡単に見つけられそうである。


――――――スッパリン?アレ、嫌ダヨ。


 バトは嫌がっていたので、エルモア先生に預けたが問題は特にないだろう。


 タキの背に乗り、都市から出てルースたちはスッパリン探しへと向かうのであった。



 たかが木の実を取って来るだけの簡単な課題だし、タキに乗れば移動が楽だから、これはこれで良い課題を引き当てたのかもしれない。


 何の問題もないだろうし、平和的にこなせるはずだよね?

・・・・・・何かどでかいフラグを立てたような気もするが気にすることはない。

ただ単に、酸っぱい木の実を確保し、それを持ち帰ってくればいいだけの話である。

都市外の、以前にも訪れた湖の周辺だし、問題はないだろう。

次回に続く!!


・・・・・ちなみに、タキの大きな九尾の狐姿は特に気にされていない様子。

国を滅ぼしたことのある情報を聞かなければ、今学年度の1年製が召喚できるモンスターで、乗ってみたいモフモフランキング1位でもあったりするからね。

「意外と人気があるんだなぁ」

【まぁ、今のところ我は国を滅ぼす気は無いし、穏やかに過ごせるから良いのじゃよ。邪魔する者だけを少々沈めるだけじゃ】

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