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67話

忍び寄ってくる面倒ごとの足音。


 グレイモ王国に北のルンブル王国が宣戦布告し、進軍を開始した。


 どうやらルンブル王国の開戦派と呼ばれる派閥が力づくで国内の他の派閥を押さえつけ、強引にその事を決定し、戦争を決意したようであるという情報も、学園内に流れていた。



 どうやら他国中の間諜とかが潜り込んでいたようであり、そのせいで人の口に戸は立てられぬというように、いつの間にか様々な情報が飛び交ってしまったらしい。


 噂には尾ひれがつきやすいものでもあるが、流石に戦争に関しての噂には尾ひれがつきにくいようであった。





‥‥‥とはいえ、グリモワール学園がある都市メルドランに攻めて来るまでには時間がある。


 都市が他にもいくつか間にあり、またグレイモ王国側の軍がやり返したりするので、この都市へ火の粉が降りかかる可能性は低いそうだ。


「とは言っても、あまり聞いてて良い気持ちはしないよな」

「戦争なんかよりも平和的にやるほうが良いわよねぇ」

「まぁ、これは案外すぐに終わるだろうな」


 お昼時、学園の食堂で戦争の噂話を聞き、ルースたちはその話題で話していた。


―――――人間同士、何故争ウノカナ?


 バトが今日の昼食にあった果物を少しルースから分けてもらってむしゃむしゃと食べながら、そう尋ねてきた。


「それを言われると、本当になんて答えて良いのやら」



 こういうごたごたした争いは、何処の世界でもあるのだろう。


 でも、その根本を考えてみると様々な物がある。


 資源の不足からの略奪による補充、単に戦争を起こしたい馬鹿、領土拡張を狙う等、様々な理由があるのだが、今回の戦争はどうやらその中の資源不足からきているらしい。



 北のルンブル王国はどうやら今赤字が多くなっており、赤字解消のために国内の資源を増やそうと思い、他国を攻めて、鉱山などを奪い取ろうとしているのがこの戦争の理由であるとされている。


 また、国内に不満がたまっているそうなので、そのガス抜きとしての目的もささやかれているらしい。



「こういう時ってさ、このグレイモ王国が襲われているようなものだし、モーガス帝国の王女でもあるレリアは避難として帰らなくても良いのか?」


 ふと、その事を思い、ルースはレリアにそう尋ねた。


‥‥‥内心、王女だったと忘れていたのは内緒である。


「ん?それはない。むしろ自分の身は己の力だけで守れというようなところもあるし、このままとどまっていても問題はないんだ。まぁ、それ以前にこの都市まで相手が進行できるかどうかというのもあるし、帝国の方からもこの国に救援しに来るだろうよ」


 ルースの質問に対して、レリアは返答する。



 まぁ、そもそも帝国の王女がいる時点で帝国側としてもできるだけ守るために、グレイモ王国に対して救援を送り、手助けしてこの都市まで来ないようにするだろう。




‥‥‥そう考えると、少し不可解な点がこの戦争にはあった。


「あれ?帝国からの救援がある可能性も否定できないのに、なんでルンブル王国はよりによってこの国に宣戦布告を仕掛けたんだ?」


 モーガス帝国も相当な兵力があり、グレイモ王国と合わせてしまうととんでもない兵力差が生じる。


 それなのに、ルンブル王国がわざわざ宣戦布告を仕掛けてきたのが意味不明なのだ。



「そういえばそうだよな‥‥‥こういう時に考えられるのは、2国の兵力にも負けないような兵器なんかをルンブル王国が手に入れたのだとか?」


 ルースのその疑問に対して、レリアも考えてそうつぶやく。



「…‥何にせよ、俺達がどうこう言える問題ではないな」



 ルースたちは学生であり、戦争になったとしても早々手を出すようなことはできない。


 それに、魔導書(グリモワール)を持っているとは言っても全てを蹂躙できるような事もないし、力に驕ってしまうような事もしたくはない。


 今はただ、自分達ではなく戦場に行く兵士やその事に関して一生懸命に働く大人たちの方に任せればいいという結論で、今日の昼食での話は終わった。






 だがしかし、「関係ない」の一言で片付くはずであったこの話は、後にめんどうくさい方向へと向かうのであった‥‥‥‥

‥‥‥関係ない。その一言で終わるはずだった。

だがしかし、そうは問屋が卸さないとでもいうかのように、そこでは終わらなかった。

厄介事がそこにあったから…‥‥

次回に続く!!


…‥バトの定位置が、ルースのポケットになった。

「なんでそこに入り込むんだよ?」

―――――ココガ楽ダモン。

「「‥‥‥(うらやましい)」」


あれ?そういえばスアーンは?‥‥‥ああ、影が薄いだけか。

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