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63話

少しづつ変化を付けて騒動まで行くのが大変である。

‥‥‥ルースが魔導書(グリモワール)から注意を受けて数日後。


 起床し、寮の食堂へ朝食をとりにいくと、なにやら噂が聞こえてきた。



「おい知っているか?なんでも最近、冷え込みが例年以上に早いって話があるそうだ」

「うっそだろおい!?寒いのは苦手なのによぉ。せめて、この食堂メニューだけでも体が温まるような物が欲しいぜ」

「にしても、例年とかいうけどまだ俺たちはここに来て一年も経っていないから、真偽は定かじゃないよなぁ」



「冷え込みが例年以上って…‥聞くだけでもなんか嫌だなぁ」

―――――ウン、寒イノハ嫌ダヨ主様。


 ルースのつぶやきに続き、いつの間にか胸ポケットに入り込んでいたバトが顔を出しながら、そうテレパシーで同意していることを伝えてきた。


 ふわふわもこもこの綿毛のような繭だったはずなのに、数日ほど経過したある日、羽化しちゃったのである。


 出てきたのは、本当になんというか、妖精としか言いようがない。


 人間の10代後半…‥よりちょっと前の15~6ほど?のような少女の見た目であり、頭には繭時代の名残か触角がアホ毛のようになって、肌は白く、綺麗な金髪の長髪で、そしてその翅だが‥‥‥まさかの金色。


 いや、ルースの持つ魔導書(グリモワール)に合わせてとかではなく、本当に偶然にも美しい金色の翼を彼女は持ったのである。


 ちなみに、残された繭は再利用され、今は彼女の防寒具となっていた‥‥‥ちょっと残念。



 一応、顔もきれいな方であり、きちんと口があるからテレパシーに頼らずしゃべることも可能である。


 だがしかし、まだ発音には不慣れな様で練習が必要そうだ。


 


 と、寮の朝食を食べようと食堂の角の方に座ると、エルゼたちもやって来た。


「おはようルース君」

「あ、エルゼ」


 ちゃっかりエルゼはルースの隣の方に座り、一緒に朝食を食べ始める。


 ちなみに、スアーンはもう少し遅く起きるようで、レリアの方はかなり早起きをして鍛錬に出かけているらしい。


 ちょうどルースとエルゼはその中間のようなものなので、どうも一緒に朝食をとる時間帯があってしまうようなのであった。


「そういえば聞いた?例年以上に早く冷え込みが来ているって話」

「ああ、聞いたわよ。あたしは水色の魔導書(グリモワール)を持って、氷の魔法を扱えるとはいえ、冷え込むのは嫌よね」


 ルースの問いかけに対して、エルゼはそう答える。


 水や氷の魔法を扱える水色の魔導書(グリモワール)といえども、本人たちがその手の体勢を持つわけではない。


 中には、極度の寒がりな人だったら絶望するという話もあるぐらいなのである。‥‥‥暑がりは歓喜らしい。


 ただし、色が変われば反応も変わるようだが…‥‥



「魔法に暖まれるようなものが無いかなぁ」

―――――主様、ソレナラコレ着ル?


 バトが自分の来ている繭で作った防寒具を指し示し、ルースに問いかけてきた。


「いや、いくら何でもサイズ的に無理があるだろう‥‥‥」

「それは同意するわね。あ、だったらルース君、今度の休日の時に冬用の防寒具を買いに行かないかしら?」


 エルゼが何やらナイスアイディアとばかりに手を打ち、そう問いかけてきたが‥‥‥ルースは首を横に振り、断った。


‥‥‥女性の買い物が長いのは、前世今世含めて全世界共通である。


 エルゼもそれに当てはまる部分があるようで、経験上お断りを丁寧にするルースであった。




「というか、よく考えたらタキを召喚すればいいか。あいつなら毛皮でモフモフでぬくぬくだし、解決するな」


 ルースが名案とばかりにポンっと手を打った瞬間、瞬時に辺りが絶対零度のような寒さに包まれた。


「…‥ならばあの女狐の毛皮を剥いで、コートにしてあげましょうか?」

「怖いんだけど!?」

―――――人間ノ中デ、コノ人一番怖ッ!!


 にこやかで、それでいて目の奥が笑っていない零度の笑みを浮かべるエルゼを見て、思わずルースとバトはその威圧に震えた。


 ついでにその余波というか、とばっちりで寮の食堂にいた全員が寒さを感じたのは言うまでもない。












 食堂での氷河期を乗り超え、授業を受けたのちに放課後、恒例のバルション学園長直々の訓練が開始された。


 ルース、エルゼ、レリアの三人で受けさせられているのだが、本日は優しい方の訓練になるようである。


「といーうわけで、本日はドッカンバッカンやーらない、きわめて優しーい方法でやーるよ」


 バルション学園長のその言葉に、ルースたちはほっとする。


 いつものであれば、魔法を撃ちあったり、武術とかも必要だといわれて格闘技になったりするのだが、これならばまだ楽な方である。


「良かった…‥今日はまだ命の危機を感じずに済みそうだよ」

「たまには平和的なのもいいわね」

「私の場合は自分から志願したとはいえ、結構きつかったからな」

――――――主様達、遠イ目ヲシテイルヨ。


 バトが皆を見て、そう感想をつぶやく。


 妖精の彼女は参加せずに、安全席から見るだけなのだが、見ているだけでもかなり大変そうなのは理解しているのであろう。



「で、こーれを持って更衣室できーがえてきてね?」

「「「え?」」」


 と、バルション学園長がどこからか持ってきて手渡してきたのは‥‥‥水着?


 寒い今の時期、水着、まだ優しい方法…‥‥これらの事を合わせて考え、ルースは何が行われるのかを理解した。


「まさかとは思いますけど…‥寒中水泳とかないですよね?」

「そーのまーさかが大・正・解☆」



 …‥‥ああ、上げて落とすとはこういう事か。



 3人の心が一致して、思わずうなだれたのであった。


「つーいでに、泳ぐ場所はちょっとこの都市から出た場所へ馬車で移動すーるから、道中ずっと水着だーよ」



 それはつまり、街中を馬車の中とは言え、水着姿でこの寒空の下目的地まで行かせるという事なのだろうか。


 ここに、本当の鬼を見たような気がして、ルースたちは絶望するのであった。


 でも、少しエルゼたちの水着姿が楽しみなのは内緒である。というか、その事をうかつに口にだしたら、エルゼからはそれを利用したアプローチ、真面目なレリアからはぶった切られかねん。


季節外れなうえに、寒空の下での水着回。

しかも、気温が低下しつつある午後であり、例年に比べ冷え込みも早いそうである。

‥‥‥風邪?この学園長がその事を理解していないとでも?…‥してないだろうなぁ、というか惹いたことがなさそうだよなぁ。

次回に続く!!


‥‥‥正直言って、この水着回とかが表現が大変である。

「というか、俺達だけ寒い思いってのはきついし、こうなればタキを召喚して泳ぎ終えたところで温めてもらおう」

「いや、そこは身ぐるみをはがしてドボンと巻き添えにするのが良いわよ」

「一人よりも二人、いやもっと大勢でやればいいからな‥‥良い案だと私は思うぞ」

「あら?珍しく意見があったわね」

「ああ、そうだな」

「「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」」


「…‥どうしよう、寒さに耐えかねて二人が壊れたんだが」

――――――ドウシヨウモナイネ。

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