57話
ちょっと祭りの様子かな?
低気圧で頭痛が…‥
‥‥‥都市メルドランでの秋の収穫祭。
この収穫祭はこのグレイモ王国の各都市で行われており、開催時期は回っていきたい人がそれぞれ楽しめるようにずれているそうである。
そして、それぞれの都市での収穫祭は特徴が分かれており…‥‥
「この都市には魔導書を持つ者たちが集まるグリモワール学園がある、つまり魔導書を利用した祭りとなるのか…‥」
「にしても、これはこれでかなり面白い雰囲気よね」
「こういう使い方もあるのかと、勉強になるな」
あちらこちらでの魔導書による演出や、それらによる商品づくりの過程などを見て、思わずルースたちはそう感想を述べた。
「基本的に武器に扱う事が多いけど、こうやって祭りに利用されているというのも面白いな」
魔導書は基本的に魔法を発動させ、武器として扱う事もある。
でも、その他の使い道として農作業や家事などに役立てたりもできるし、この祭りで多種多様な使われ方を学ぶ事が可能なのだ。
「水色の魔導書で、あんな綺麗な氷の彫刻も作れるのね…‥ふむ、ルース君の氷像も作れるのかしら?もしくは本人から型も取れるかな?」
さりげなく何やら物騒な事をエルゼがつぶやいたが、ルースは聞かなかったことにした。
絶対に、型にされる前に氷を溶かして逃げてやる‥‥‥。
「おおおお!!赤色の魔導書であんな火の芸もできるのか!!…‥そうだ、あの魔法を参考にして、ナイフを投げて燃える刃物なんて事もできそうだ!」
こっちはこっちで、レリアが武器としての使用方法を思いついているのだが‥‥‥さすが戦姫、軍事利用の方に思考が向いたのか。
「というか、今更ながら気が付いたけど、二人ともなんで俺と一緒に回っているんだ?」
収穫祭の露店を見て回る中、ふとルースはその疑問を口にした。
「え?いつも通りに普通にしているだけよ?ルース君のいくところ、あたしありじゃない。それに、変な女が近づかないようにもしているのよ」
「私は別に、ただいつもの訓練メンバーで回っているつもりだったのだが?‥‥‥決してお前と二人きりになろうとして見たけど、こいつに邪魔されたとかはないからな?」
二人とも、当たり前のようにそう返答した。
‥‥‥というか、ちょっとだけ周囲からの視線がいたいような気がするのは気のせいだろうか。
と、そこでルースは知り合いの顔を見かけた。
「あれ?スアーンなにやっているんだ?」
「あ、ルースたちか‥‥‥いやまぁ、ここで少々厄介な奴に見つかってな」
ルースたちの友人であるスアーン。
そんな彼が、なにやら綿あめのような店の手伝いをしていることに、気が付いたのである。
「この露店の経営者が親戚でさ、かりだされたんだよ‥‥‥俺っちだって、こういう時ぐらいは阿保みたいに遊びたいのにさぁ!!」
どこか悲痛な声で、そう叫ぶスアーン。
「‥‥‥普段から阿保じゃないか?」
「下僕は阿保よね?」
「あ~私はよく知らんが、見る限り阿保っぽいな」
「お前らひどいな!?」
思わず一致したルースたちの言葉に、スアーンはそう叫んでがっくりしたのであった。
…‥‥というか、最近影も薄いなと思ってもいたりする。
店を見て回るけど、秋の収穫祭という事もあって、秋の作物をだしにしたものも多い。
「…‥あれはどう見てもハロウィンのだよな?」
中には、どことなく前世の地球にあったハロウィンのジャックオランタンのような、カボチャをくりぬいて顔を作ったものも飾られていた。
でも確かそれは収穫祭じゃなくて、霊とかそういう関係のものだったはず‥‥‥いや、魔族とかモンスターがいるこの世界には幽霊も実在するらしいけどね。
「ん?あれはパンプキリアン族の替えの頭の屋台よ?」
「飾りとしても面白いから、売っているようだな」
「替えの頭?」
どうやら魔族の「パンプキリアン族」とかいう方々の替えの頭らしい。
なんでも、この時期にのみ現れる一族だそうで、頭がジャックオランタン風、中身は靄だからつかみどころがあるように黒い布でテルテルボーズのような見た目でもあるそうだ。
そんな彼らは時折古くなった頭の交換をすることがあり、その時に売りつけられるようにああして職人が作ったという頭を店頭に置いてあるのだとか。
…‥ちょっと脳裏に、某頭がパンの人が思い浮かんだけど、似たようなものなのだろうか?
そう考え、思わずルースは引き出しそうになり、こらえるのであった。
‥‥‥その舞台裏で、実はエルゼとレリアが手を組んでいたことに、ルースは気が付いていなかった。
実は、この収穫祭開催中、ルースの下へ近づこうとする不審な者たちがいたのだ。
祭りの最中に、偶然を装い、親しくなってしまおうという輩もいたようだったが…‥‥ここでエルゼとレリアは撃退していたのである。
そもそも、あの巨大な怪物‥‥‥ディゾルブゴーレムの件以来、ルースに対しての何かしらの意思を持った視線があることに、二人は気が付いていたのだ。
ルースはややそれには鈍いようだが、ルースに近づく害のある輩に対しては鋭いエルゼと、この件で警戒心を上げたレリアの前ではその居場所は感嘆に暴かれる。
それぞれ公爵令嬢と、帝国の王女という立場も活かして人員を割り振り、密かにルース周辺の警備を拡大。
そして、効率化を図るために二人は手を組み、密かに害になりそうな者たちを排除していたのだ。
‥‥‥ルースには一切気が付かれず、何かあった時は短時間ですぐに出向かい、水や氷で拘束したり、炎であぶって尋問したりして、そして終わればすぐさま自然に合流し、守り通す。
この鉄壁の防御の前には、ルースに近づこうとしていた者たちはなすすべがなく、この収穫祭の期間中は全く事態に進展をもたらすことができないのであった。
‥‥‥が、やはりそうは問屋が卸さない。
この件で、相手側は対抗策を考え、新たな作戦を投入。
そして、今まさに新たな事件が起きようとしているのであった‥‥‥‥
いくら鉄壁があろうとも、どこかにもろいところはある。
そのもろいところに付け入るために、新たなものが投入されることを、ルースたちは知らない。
果たして、新たな騒動の火種となりうるのだろうか?
次回に続く!!
‥‥‥ハロウィンネタを入れたい。モフモフも補充したい。ついでに新たな人も登場させたい、話しも進めたい。…‥‥やりたいことが多いなぁ。




