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52話

ちょっと長いな

‥‥‥人というのは己よりも強そうな相手に出会ったらどうするのか。


 逃げる、気絶する、死んだふりをする、仲間を裏切って囮とする、誰かに任せる、自ら動いて対応するなど、パッと思いつくだけでも様々な手段が存在する。



【ウボアァァァァァァァァァァァァ!!】


 ドロドロに、どことなく某巨神兵の腐った状態みたいな感じで腕を振りかぶって来たディゾルブゴーレムに対して、ルースたちがとった行動は‥‥‥



「タキ!避けろ!」

【言われなくともわかっているのじゃ!】


 タキの上に載っていたルースがそう叫ぶと、素早くタキはその腕の線上から逃れ、紙一重で回避した。


 ただ、ギリギリだったという事は、どうやらあのディゾルブゴーレムは思った以上に素早い動きが出来るようで、足の部分がドロドロになってないように見えて、相当フットワークが軽いのであろう。


 

べちゃぁぁぁん!!


「なんか当たると絶対に嫌な感じの音がしたな」

【べっとべとのぬっとぬとになっていそうで嫌じゃな!】


 着弾地点とでもいうべきか、地面から腕が持ち上がると、その地面がものすごい不気味な色合いに変色し、ぐじゅぐじゅになっていた。


「溶解した感じか?」

「当たると絶対にまずいやつよね」

「しかも、どうやら一部が残るようで、油断が出来ないな」



 この場合、迂闊に攻撃でもしようものなら、相手の体があたりにばらまかれて最悪なことになる可能性は高い。


 そう、台所とかに這いずり回っていそうなやつらを、気が付かないでプチっと足で潰したときのようにまずい可能性が高いのだ。


‥‥‥うう、実体験だけど嫌なことを思い出したな。ビジュアル的にはまだディゾルブゴーレムの方がましだけどさ。



「さてと、ここからどうするかが問題なのだが‥‥‥逃げて振り切れるか?」

【ちょっと無理じゃな。ここからあの時計塔が見える距離、あそこまで走って逃げたところで、我々の追跡をあきらめたやつは都市の方に襲撃を駆けてくるじゃろうし、ここである程度足止めし、救援を待つのが正解じゃろう】


 ルースがそう尋ねると、タキは少し考えてその意見を述べた。


 逃げるだけなら容易い。


 だがしかし、放置しておけば結局被害が出るのは変わらないし、むしろその間に犠牲者が増えるのは避けたいのだ。



「何かいい手があればいいんだけどな」

「でろでろのぐじゅぐじゅだし、水魔法で流しても結局戻ってきそうよね」

「炎は・・・・いや、あのような得体のしれない物を焼却したら絶対に毒ガスとかがでそうだからダメか」

【出来れば動きが鈍くなってくれると助かるのじゃがな】


 なかなかいい案がでず、タキがルースたちを乗せた状態で攻撃をかわしつつも、状況は硬直したままである。


「膠着状態というべきか、この動かない状況…‥‥待てよ?動かない…‥でろでろした相手‥‥‥水魔法…‥そうだ!」


 ここでルースは閃いた。


「エルゼ、水魔法であいつの全身に水を大量にぶっかけられないかな?」

「え?出来るといえばできるけど‥‥‥かけるだけ?」

「その後にもう一つ、水色の魔導書(グリモワール)ならではの能力にあの魔法もあるじゃん。複合とは違うけど、似たようなことが」

「…‥そうか、その手があったわね!」


 ルースの言葉に、エルゼは何が言いたいのか理解したようである。


【ウボアァァァァァァァァァァァァ!!】


 ディゾルブゴーレムが雄たけびを上げ、その腕を再び振り下ろしてきた時、先にルースが動いた。


「『マッドアッパー』!!」


 魔法を唱えると、地面から泥で出来た腕が勢いよく飛び出し、相手の腕をしたから防ぐ。



ズゥゥゥン!!


 ぶつかり合う衝撃が来て、地面が揺れ動く。


 タキの方はバランス感覚が良いのか平気そうだが、ドロドロのディゾルブゴーレムにはたまらなかったようで、バランスを崩したのか全体的にどべしゃぁっと、上半身しかないように見えるとはいえ転んでしまったような動作を相手はし、そこに隙が生まれた。


「いまだエルゼ!まずは全身を水びだしにしてやれ!」

「『フォールウォーター』!」


 魔法を唱えると同時に、相手の頭上から一気に水が大量に落ちてきて、全身を一気に濡らす。


「ここで水ごと凍らせればいい!!『アイスプリズン』!」

「『アイスボール』!!」


 水魔法と氷魔法の複合でルースは相手の全体に大きな氷の檻を作製し、中にいれられたディゾルブゴーレムに対して、エルゼが氷魔法を放ち、あっという間に凍らせた。


 全身をびしょ濡れにさせることで、その水分を利用して全身凍結を狙ったのである。


 作戦としては即席だが、とりあえずうまいこといったようだ。


「とりあえず、これでしばらくの間は凍りついて動けないはずだ」

「氷の檻に、汚い氷像がいれられたようにしか見えないわね」

「でも、これで時間稼ぎもできるし、このまま砕いてしまえば倒せそうだな」

【いや、不定形に近い体から見て、砕いても解けたら再生する可能性はあるのじゃ。今の隙に都市へと戻り、直ちにぶち倒すように救援を要請しに行ったほうが良いのぅ】



 全身が氷像と化したディゾルブゴーレムを見て、都市に戻って後始末を頼むことを決め、ルースたちがその場から去ろうとしたその時であった。



‥‥‥ビシィッツ

「ん?」


 どう考えても、いやな音がした。


ビシィッツ!!   ビキキッツ!!   ビキビキビキビ‥‥‥



「おいおい、嘘だろ…‥」


 見てみれば、氷像に大きなひびが入っている。


 自壊するのかと思いきや、内部から何かがうねうねとうごめいており、中かな破壊しているのが目に見て取れた。


「タキ!全速力でこの場から逃げろ!!どうも氷漬けは効果が今一つだったようだ!」

【言われなくとも分かっているのじゃ!!】


 いやな予感しかせず、ルースがそう叫ぶとタキが逃走を開始しようとしたその時であった。


バリィィン!!

【ウボアァァァァァァァァァァァァ!!】


 上半身の氷を吹き飛ばし、ディゾルブゴーレムは大きな咆哮を上げ、両手を大地につけ、その下半身(・・・)を周囲にさらけ出した。



‥‥‥完全に、死角であった。


 相手はドロドロとしたディゾルブゴーレムであり、ドロドロで何とか人の上半身だけが形作られたかのように見える見た目。


 だがしかし、それが氷山の一角という可能性は無かっただろうか?


 そもそも、おかしな薬品を飲んで人間二人が混ざり合って融けて巨大化したのだから、まだその質量というか、体積は増えていた可能性がある。


 その増えていた分が、上半身の方になかったとするのであれば『地面の下に埋まっていた』という事にならないだろうか?



 その巨大な、地中の方に埋めていたまるで巨大なタコのような部分をさらけ出し、全てをディゾルブゴーレムが見せつけるのであった…‥‥

…‥上半身はオマケ、下半身の巨大なタコが本体だったようである。

この怪物に、なすすべはあるのだろうか。

次回に続く!!

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