47話
なかなか話を進ませにくいのが、小説を書く身としてはもどかしいところ
秋が深まっていく中、グリモワール学園のある都市メルドランでは、この時期になると「秋の収穫祭」と言う物が開催されるそうである。
とはいえ、周辺が銛も有れども平野が多く、畑があるわけではなく、そして都市では商人たちが行きかったりもするのに、なぜ「収穫祭」というものが開催されるのだろうか?
その理由は簡単な事で、このグレイモ王国の各地で同様の祭りが開催されるからであった。
いわば国の行事でもあり、その主たる目的は国家の繁栄を祈ってというのがあるという、
どうやら開催する日にちとかは、都市ごとに異なり、やろうと思えば開催する都市を巡りまくって、しばらくの間常に祭りを楽しみ続けるという事も可能だというのだ。
そのうえ、祭りの様相も地域ごとに異なるので、その違いを楽しむのも一興とされているようであった。
「で、このメルドランではあの巨大時計塔ベルビックンが飾られていくわけか‥‥‥」
「学園の方でも学園祭を行うそうだけど、それはこの収穫祭が終わった後の方になるようだし、もうそろそろあたしたちも準備に追われることになるのね‥」
本日は休日という事で、たまには召喚という形ではなく、普通に都市内でエルモア先生と同居しているタキのところへ行こうとルースは思いつき、エルゼはルースがタキと妙なことにならないかという艦下のために、一緒に向かっていた。
一応、タキの現住所は学園の教師の一人であるエルモア先生の家でもあるので、一応あいさつ代わりにお菓子を途中の店で買っておくのを忘れない。
本日のお菓子は「ロシアンルーレッドラヤーキ」という、ちょっと変わったものでもあった。
当たりは赤字覚悟の最高級ドラヤーキで、はずれはデスソースの300倍の辛さであるキングペッパーというものがつまっているらしい。
…‥‥というか、絶対に転生者とかが関わっていそうなのだが。ロシアンルーレットをどら焼き風に改造しただけなような気がする。
それ以前に、そのはずれのものは致死量じゃないかな?エルゼは怖いとして、タキがそれに当たってしまったところは見てみたい。
少々無自覚なSを持つルースはそう思いつつ、タキたちの家へ向かっている時であった。
「へぇいへぇいそこの活かすねぇちゃ~ん、俺らといいことしてあそばなーいかい?」
「いや、断る。今日はそんなことをするつもりはないからな」
「ん?」
「あら?」
ふと、物凄くうざいようなナンパをかけているような声と、聞き覚えのある声が聞こえ、ルースたちはその声の方を見た。
見れば、いかにも遊び人というか、三下のようなチンピラの見た目をした男たち3人と、それに対峙して物凄く迷惑そうな顔をはっきりとしているレリアがいた。
彼女の服装は何処か鎧の要素が入った衣服だが、その点を除けばまともなワンピースのような衣服である。
どうやらレリアは一人で出歩いているところで、あのチンピラたちに声をかけられたようであった。
チンピラ共の目は明らかにいやらしいものであり、レリアの身体だけを見ているところは‥‥‥気持ち悪い。
「え~いいじゃん、いいじゃん、おれたちといいことしようぜ」
「だから断ると言っているだろ!まだ私はこの都市に不慣れであり、その様相をよく見るために休日である今日はわざわざ出かけて歩いているのだ!」
「不慣れなら不慣れで、おれさまたちが案内してやるよぅ」
「そうそう、手を取っていいところとかを案内してやるでやんす」
「だから要らん!!」
本気で迷惑そうに言うレリアに対して、チンピラたちはこの獲物を逃すかというような目で、しつこくすがっていた。
・・・・・・・ここで帝国の王女とかをばらしていないのは、権力をかさに着るようなのは好ましくないと思っているようだし、なおかつそれでさらに面倒ごとに巻き込まれても困ると思っているからであろう。
だがしかし、このままでは無限ループかもしれないし、いくらレリアが魔導書を扱えるからと言っても、強硬手段にあの頭の悪そうなチンピラ共が出るかもしれない。
その場合、犠牲となるのはあのチンピラ共だけであるかもしれないが。
とにもかくにも、偶然通りがかったし、これも何かの縁なのでルースは放っておけなかった。
まぁ、チンピラ共の話し方にイラついてきたというのもあるが。
「エルゼ、ちょっとあれ助けに行っていいか?」
一応、エルゼにルースはそう尋ねておく。
ここで黙って行ったら、それはそれで面倒ごとになる予感がしたからだ。
「あたしもルース君と一緒に行くわ。なんかあのチンピラ共はムカつくものね!」
・・・・どうやらエルゼもあのチンピラ共になんとなくムカついていたようであった。その気持ちはよくわかる。
「いいじゃん、いいじゃん、ねぇねぇいいじゃん!!」
「ああもう、本当にしつこいな!!」
しつこいチンピラ共に対して、レリアはだんだんイライラしてきた。
何度も何度も断っているのにしつこく誘ってきて、その上この場から去ろうとすると、さり気なくその行先に回ってきて逃げ道を防ぐ。
しかも、よく見れば徐々に人気の少なさそうな路地裏へと誘導されており、このままでは明らかにこのチンピラ共に何かされるのは目に見えていた。
「連れねぇなぁ、だったらいいことをしっかりと覚えてもらうために、無理やりでもつれていくぞ!」
なかなか誘いに乗らないレリアに切れたのか、チンピラの一人がレリアに手を伸ばしてきた。
その手をレリアはすぐさま察知し、叩き落とそうとした時であった。
「ん?」
ふと、微細な振動を感じ、レリアがチンピラ共の足元に何かが生えてきたことに気が付いた。
そして、ほんの一瞬のうちに、それは一気に・・・・・・
キィン!! ゴキィン!! ブチュン!!
「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
ほぼ同時に、チンピラ共の急所をめがけて、地面から岩のような小さな柱が一気にのびて、直撃した。
すぐさま引っ込み、何もなかったかのようになったが、チンピラ共は股間を抑えてその場に悶絶し、倒れ込む。
「な、何が起きたんだ今のは?」
突然の事で、レリアは目をぱちくりとさせて驚いた。
「レリア!こっちだ!!」
「そのチンピラ共からさっさと離れるのよ!…‥あ、でもやっぱ助けないほうがよかったかも」
ルースたちの声が聞こえ、その方向を向くと彼らは少し離れた位置にいた。
ルースの手許には金色に輝く魔導書があり、どうやらチンピラ共に向けて魔法を放ったことで、あの直撃した物体を創り出したようである。
とはいえ、これ幸いと思い、レリアはチンピラ共から離れるのであった。
ついでに、後で何か文句を付けられて追ってこられるのを防ぐために、念入りにとどめを刺して‥‥‥
「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
「ふぅ、何か魔法で助けてくれたんだなルース。感謝する」
チンピラ共から離れ、ある程度進んだ場所にまで逃げ、レリアは改めてルースに礼を言った。
「なぁに、ちょっと目撃して、あいつらにムカついたから手助けしたまでだ・・・・・・末路には同情したが」
「ルース君が助けようと思ったから、あたしも動いたのよね」
少々あのチンピラたちに同情をするかのような表情をしたルースにたいし、エルゼは威風堂々とそう言い切った。
彼女がしたのは、ルースがチンピラたちへ向けてやった複合魔法に、追加でこっそり魔法を含めていたことである。
「俺が使ったのは、土と氷の魔法の複合で、霜柱を発生させ、それを土台にして石柱を一気に生やす魔法だったが‥‥‥」
「ついでに、尿意を意図的に限界にさせる水魔法の中でも微妙なものを付属して与えたのよね」
「なるほど‥‥‥それで、とどめを刺した後にあいつらから妙な臭いが出てきたというわけか」
ルースとエルゼの説明に、レリアは納得したようにうなずく。
あのチンピラたちの末路に、改めてルースは男として同情するのであった。
‥‥‥一応命は奪われていないけど、社会的には死んだような気がする。ま、いいか。
ルースとエルゼ、レリアが一緒になっていたその時、物陰から気配を消して彼らを見ていた者がいた。
そして、密かに行動を開始することを、仲間にその者は伝えに向かうのであった‥‥‥
チンピラのうち、約一名の音だけ何か潰れた音になっていなかった?
まぁ、末路としては皆仲良く平等にされたが。
こういうのを死体蹴りというのかルースたちは思いつつ、なにやら都市内では何かが起きようとしていた…‥‥
次回に続く!!
というか、助けがなくともレリア一人でも片付いていたような気がする。
戦姫だし、体術とかにも自信がありそうだしね。




