46話
今回は主人公不在回
‥‥‥夏も過ぎ去り、秋深くなってきた深夜、グレイモ王国内のとある一軒家に集まる者たちがいた。
「‥‥‥間違いないのか?」
「ああ、ほぼ確実に間違いない。この国に今、あの帝国の王女がいるって話だ」
「国を離れた理由はつかめないが…‥何にせよ、これであのくそったれな帝国に一泡吹かせるチャンスがある!!」
ぐっとこぶしを握しめ、そう叫ぶ者たち。
その顔は、憎々しそうな柄も、機会が到来したことにうれしさを隠せないでいた。
彼らはモーガス帝国拡大の際に、属国にされたある小国の民の一部である。
割と早く従属したため、その国はほとんど被害もなかったのだが、その中でも従を求める彼らは抵抗し、そして捕えられた。
今その国は帝国の政策により、従属国となってからの方がより豊かになったのだが、そんなことよりも自由を彼らは勝ち取りたかった。
帝国に頭を下げるのではなく、自分たち自身で国をかじ取りし、率いるべきだと考えていたのである、
とはいえ、彼らには経験がほとんどなく、ほぼノリと勢いだけの考え無しだったので色々とダメだったのだが…‥‥捕えられた後は脱獄し、モーガス帝国に逆恨みをしているのだ。
とはいえ、流石にそこまで馬鹿でもなく、正面から堂々と攻め入るのは愚策だという事ぐらいは彼らは学習したのである。
そこで思いついたのが、帝国にとっての重要人物をなんとか人質にとり、彼らの祖国を解放させて独立させるという事であった。
…‥‥まぁ、そんな重要人物たちを彼らが人質に取れるほど守りも薄くなく、今まで失敗し続け、今では大半の仲間が再び捕らわれているのであった。
だがしかし、ここに来てチャンスが到来した。
なんと、今彼らが潜伏しているグレイモ王国のグリモワール学園に、モーガス帝国の第2王女が留学しに来たという話がでたのだ。
帝国では学べないことに関して来たのだろうけど、他国でならばその周囲の守りも薄いはずだと彼らは考えた。
帝国ではその王女は戦姫とまで言われているようだが、実力はなく、たかがその容姿でその名前になったのだろうと彼らは楽観的に思った。
「よし、それじゃあの忌々しい帝国に一泡をふかせるために、その王女を人質にする作戦で行くぞ!!」
「「「「「おおおおおおおおおおぅ!!」」」」」
指揮をとる者の掛け声に合わせて、皆は一致団結して叫ぶ。
…‥‥と、その時であった。
「ふむ、なにやらおもしろそうな事をしていやすね」
「っ!?誰だ!!」
突如聞こえた聞き覚えの無い声を聴き、その場にいた者たちが周囲を見渡すと、いつの間にかその場所に誰かが立っていた。
全身を何色と表現していいのかわからない不気味なフードで多い、その素顔は見えない。
けれども、どことなく怪しいような雰囲気だけはしっかりと醸し出していたので、彼らは警戒した。
「何者だお前は!!帝国からの手先か!!」
「いえいえ、そんなものではございません。ただの通りすがりの商人でごぜぇやす」
一人がナイフを突きつけ尋ねると、その人物は両手を上げて敵意がないことを示し、ものすごく胡散臭そうな声でそう返答した。
「商人だと?」
「ええ、この場所から何やら面白そうな会話が聞こえてきましてな。商売の香りがすると思ってきたのでごぜぇやす」
「商売って…‥‥何を売るつもりだ?」
「それはでございますねぇ…‥‥」
その謎の商人は一旦外に出て、いつの間にかその場に来ていた荷馬車に入り、そこから何かを取り出した。
その商売道具らしい物をその場にいた全員に説明し、実際にその性能を見せたた途端に、彼らは目の色を変えてそれを欲した。
「頼む!!それがあれば万が一があったとしても大丈夫なはずだ!!だから全員分売ってくれ!!」
「ええはいはい、最初から商売するつもりで、人数分足りるはずでごぜぇやす。値段はそうでやすねぇ…‥‥このぐらいでどうでやすか?」
荷馬車からその商品を全部下ろし、値段を突きつける商人。
少々交渉し、もう少し値下げしたところで商談は成立し、すぐさま彼らは金を払い、その商品を手に入れた。
「なかなかいい取引だった‥‥‥ありがとうな」
「いえいえ、こちらこそ値引きはしたけど儲けは出るでやす。では、さらばでやす」
そう商人は言うと、空っぽになった荷馬車に乗り込み、その場から立ち去った。
…‥‥彼らは気が付いていなかったであろう。
その商人が、別れ際に不敵な笑みを浮かべていたことを。
そして、知識不足だったがゆえに知らなかったのであろう。
その商人が来ていた服の色は、とある組織に由来するものであり、そしてその商品の方は彼らで実験するためのものとして、全て試作品だったという事を。
けれども、その事を帝国を憎らしく思う者たちは誰一人気が付かなかった。
その思いを利用され、自ら破滅に道へ進まされている事に‥‥‥
「どうでございやしょうかね、彼らが良い実験材料にあるかと思いやすよ」
「ふむ、まぁその憎く思う気持ちを利用させてもらう方が、こちらの活動を示すと同時に、今ある物の性能向上のためのテストにもなるからな。利益も出るし、良い感じだ」
彼らから離れたある場所で、その商人は一人の人物と密会していた。
「ま、品切れになったので今日はここまででございやしょう。では、また売りさばく際に最適な客を見つけておきやしょうかね」
「そうしてもらったほうがいいだろう。ただし、あの利用できる者たちで実験が終わってからだな」
商人が不敵に笑いながら言ったその言葉に、その者はそう告げる。
間髪入れずに連続して事を起こしたほうが、より衝撃的になるのかもしれない。
だがしかし、自分たちの事がすぐに露見しやすくなるのでそれは避けたかった。
そこで、ある程度感覚を起こしたほうが良いのだと、彼らは判断したのである。
…‥‥グレイモ王国に、再び面倒ごとの種が降り注ぎ、そして花を咲かせようとしているのであった。
・・・・なにやらきな臭そうな感じである。
果たして、その商人たちは何者であろうか。
そして、彼らが売りつけた物とは何だろうか。
次回に続く!!
・・・・・・執筆中に、再びトラウマの奴が来た。ハァイって顔で出てきやがった。そして逃げた。
絶対にバルサンか何かで家中から駆逐してやる!!




