表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/339

44話

トラウマから復活。

メンタルがごりっとやられたが、何とか回復できた。

…‥‥あの黒い奴、この世から駆逐してやりたいけどね。

「‥‥‥あの、そのだな、ルースと言ったっけな?昨日はすまなかったな」


…‥‥昨日の恐怖の学園長による鬼ごっこ特訓の翌日。


 昼食時、食堂にてレリアがルースに向けてそう言った。



 その言葉は、教室内にルースが飛び込んだ際、自主鍛錬で暑くなって、誰もいないだろうと油断したレリアが服を脱いで体を冷やしていて、その姿をルースが見て、魔導書(グリモワール)をぶん投げたことに対してであろう。



 正直言って、見てしまったルースの方に非があると思うが…‥‥



「あの、何でレリアさんが謝っているんですか?」

「‥‥‥いや本当に聞かないでくれ。お前を気絶させた後に、その女が来てだな」



 何やらものすごいガクブルと震えるレリア。


 ふと、その目線の先にいる原因となったであろう人物、エルゼの方をルースは見てみると、彼女はにこにこと、何もないように笑っていた。



‥‥‥だがしかし、そこから感じ取れる気配は笑っていないが。



 ルースは悟った。


 己が気絶した後、おそらくエルゼがその現場を自分なりに解釈して、何か誤解したのであろうと。


 何とか説明して撤回はしたのかもしれないが、その時に怒気とかに当てられたのだろうと。


 名前を知っているのも、その時にエルゼがそう話したかもしれない。




 ほぼ当たっているであろうその予想。


 なんとなくルースは同情しつつも、いや、周囲の皆もおそらく察したようで、レリアに皆同情の視線を向けたのであった。



「あー‥‥‥本当は俺の方が謝るべきなんだが…‥」

「ルース君?」


 ルースが言おうとすると、ぽんっとエルゼに肩を叩かれた。


 恐る恐る振り返えると、表情は先ほど同様変わらぬ笑顔。


 だがしかし、その背後のオーラというべきものが何やら語っていた。


――――――――勝手にこの女の下着姿を見たよね?私の方じゃなくて。



「っ!!」


 その語るようなオーラで、ルースは悪寒を感じた。


 そして周囲でもその様子で察して、飛び火としてガクブルと震える者たちが出たのであった。











「‥‥‥まぁなんだ、お前も苦労しているんだな」

「ああ、レリアさんの方こそなんかうちのエルゼがごめん」

「いや、別に気に良いし、あとこの学園では基本的に平等が基本だろ?さん付けはいい」

「じゃ、そうさせてもらうよ、レリア」


 互いに同じ相手の恐怖をしっかり味わったことにより、ルースとレリアの間には何かの友情が生まれた。


 とりあえず、せっかくなので一緒に昼食をとることにしたのである。


「はぁ、本当に私はまだまだだと改めて思えたよ。世の中って広いのだな…‥」

「ま、気持ちはよくわかるよ。俺だって辺境の方の村出身だし、この学園とこの都市だけでも十分広いと思えているからな」

「まったくだ。どれだけ自分がこの世の中で小さかったのか、この身に染みたよ」

「うんうん、同意できるなぁ」


 ルースとレリアは互にどことなく意気投合し、雰囲気がいい感じになる。



「ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ…‥‥滅茶苦茶にしてやりたいというか、邪魔したいわね…‥」

「抑えてください!!相手は帝国の王女でもあるし、国際問題を起こされても困るって!!」


 その雰囲気に対して、ぎぎぎぎっと歯ぎしりしながら、物凄い怒気を発するエルゼであったが、迂闊に国際問題レベルまでにならないように、必死にスアーンがストッパーとして抑え込む。


 周囲にいた他の者たちは、そのエルゼの怒気で気絶する者たちがいたが、ルースとレリアはあえて気づかないふりをしていた。


 というか、気づいたら気づいたで、その現実を直視したくないという想いが互いにあるのだった。


(‥‥‥怖いけど、見てしまったらそれこそ終わりだろうしな)

(ああ、まさにその通りだよ。現実ってものは、恐ろしいこともあるからな)




 気が付かないふりをしつつ、話題をとりあえず二人は変えた。


「にしてもだ、昨日はルースたちは何をやっていたんだ?いきなり教室に、まるでなにか恐ろしい者から逃げているような…‥あいや、あの女ではなくてだな」

「ああ、バルション学園長の特訓を受けさせられていたんだよ」

「特訓?この学園では生徒に対して学園長自らが行うのか」

「ま、俺とエルゼだけがいろいろあって受けさせられているだけだがな」

「なるほど‥‥‥‥ふむ、それって私も受けることはできないか?特訓というからには己を鍛え上げ、強くなることをするのだろうしな」

「‥‥‥出来るだけお勧めしないと思うけど、本気で受ける気なのか?」

「受ける気だ。こちらとしては、己を高めることが出来ればいいからな」


 ルースの問いかけに対して、レリアはそう堂々と答えた。


 彼女にとって、己を強く出来ることであるならば良いのだ。


 とはいっても薬物とかズルではなく、正々堂々としたものに限定されるのだが…‥‥




 とにもかくにも、バルション学園長との放課後特訓に、レリアが加わろうという事であれば、少しは大変さを分散し、分かち合える仲間が出来る。


 そう考えると、ルースにとっても悪い話ではないのであった。



 背後では、乙女の勘とでもいうべきもので嫌な予感を感じたエルゼがものすごい気迫を放っており、その気に当てられて気絶する生徒が続出していたが‥‥‥‥


 ルースとレリアは、本当にその現実を直視しないように知らぬふりをするのであった。


(いや本当に、後ろを向くのが本気で嫌だな)

(現実とは、かくも厳しいものなのだろうか)

現実というのは、直視しがたいものでもある。

とにもかくにも、レリアを加えるかどうかはバルション学園長次第である。

果たして、彼女は学園長の特訓に加わることが出来るのだろうか?

次回に続く!


‥‥‥イメージ的には、真面目騎士(王女だけど)。そのうちツンデレかもしくは何かを加えていきたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ