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40話

ちょっとした事後処理話?

SIDEアバウト=ラルフ


‥‥‥突如として襲った、村の中での作物のモンスター化。


 その騒動がルースの魔法によって何とか収束し、この件に関して村長は、皆の代表としてこのバルスト村の領主でもある公爵家に報告した。


 何しろ、作物の異常成長からの、人々を襲う凶悪なモンスターへの変貌は前例にないからである。


 植物型のモンスターというのは存在するのだが、少なくともただの作物がモンスターに変化するという事はない。



 誰かが人為的な工作を行い、この騒動を引き起こしたというのは容易く想像できたが、その誰かというのは不明だ。


 もしかしたら、この村だけではなく、他の国内の…‥‥いや、国外のそう言った農村部にも同様の事件が起きているかもしれないし、これから先引き起こされる可能性がある。


 その為、重要視して公爵家は当主自らが王城へ報告に向かった。



‥‥‥そして、一応その公爵家の娘であるエルゼは、使用人とかも一応いるのでそのまま屋敷にいて良いのだが、今回のような件がすぐにまたあるかもしれないという理由で、素早く行動を共にできるように、この夏休みの間、ルースの家の一室に泊まることになったのであった。


 


「というわけで、これからよろしくお願いいたしますわお義母様」

「あらら、そうかしこまらなくてもいいのよエルゼちゃん。貴女の屋敷よりは狭いけど、くつろいでいいわよ」


 そうにこやかに、あいさつしに来たエルゼに対して、ルースの母であるアバウトはそう返答した。


 



 その後、エルゼの寝泊まりする部屋をみせ、中にエルゼが入って内装を整えている間、アバウトは自身が経営しているバーの中に入り、カウンターに立った。


‥‥‥まだ日は高く、本来であればこの時間帯は客が来ないはずである。


 だがしかし、少し経つとドアが静かに開かれ、そこから全身が目立たないような格好をした人物が入って来た。



「‥‥‥さて、今回の件に関して話し合いましょうか、アバウト様?」

「ええ、どうぞ」


 そうつぶやいたその人物に対して、アバウトは普段の優しい表情から一転し、真面目な表情でそう返答した。



 その人物とは‥‥‥表向きはこの村に来た、農業部担当調査官ファームラーである。


 だがしかし、その本当の裏の顔は違い、こうしてアバウトに対して敬語を使い、独特な語尾が消えうせているのである。


「ファームラー、今回のこの件に関してだけど、あなたの見立てではどうなの?」

「今はまだ何も言えませんが、おおよその予想としては‥‥‥例の、あの潰れたはずだと言われている組織、フェイカーによるものでしょう」

「フェイカー‥‥‥となると、この村で起きたこの事件はもしかすると、実験的な意味で行われたのかしらね?」

「その予想であっているでしょう。どこにでもある普通の農村部に、万が一があってもすぐに野党に襲われたなど、そう言ったことでごまかしがききやすそうですからね。また、多分ですが‥‥‥このグレイモ王国の貴族たちの中にも、その協力者はいる可能性が高いと思われます」


 その言葉を聞きながら、アバウトはシャッシャッとカクテルを混ぜ合わせる。


「すでにこの国に食い込んで、準備しているというわけね…‥‥となれば、他国にも同様の手の者が紛れ込んでいる可能性があるわ。そのあたりにも注意して調べなさい。私としては、あの私が愛した人との思い出のあるこの村を守りたいし、あの子の母でもあるから守りたいのよ」

「御意」


 アバウトのその言葉に、深くうなずくファームラー。


 彼女の命令を聞き、これから先動き始めるために、素早く何か予定を懐から取り出したメモに書いていく。




「‥‥‥にしても、母として成長し、立派になられましたねアバウト様」


 ふと、アバウトを見ながらファームラーはそうつぶやいた。


「ええ、私だってここまでおとなしく、この村で生活し、子育てすると昔は思わなかったわね」

「昔はよく、まだ幼かったわたしたちをコテンパンに叩きのめし、よく脱走し、モンスターたちを素手で殴り倒しまくり、貴女様のお父様の髪の毛をいたずらで引き抜き禿げにしたというほどでしたのになぁ」

「…‥‥その話はやめなさいよ」


 ファームラーの語ったその話に、アバウトは睨みつけた。


 彼女にとっては、隠すべき黒歴史のようなものであろうが…‥‥実は彼女の故郷では、その話は有名になっている。だがしかし、ファームラーはあえてその事は話さないのであった。


 話したらほぼ確実に、ぶっ倒されているのが目に見えるからである。いや、それで済めばまだ軽い方か‥‥‥



「なんにせよ、もう私が帰ることのない場所だけども、もしかしたら息子が向かう機会があるかもね」

「いやそれは無理じゃないでしょうか?流石に『人間』ですし‥‥‥‥いや、アバウト様の血を引いているのであればもしかして‥‥‥」


 アバウトのその言葉に、ファームラーは一瞬その考えを思いついた。


 だがしかし、そう彼らの出身地にアバウトの息子のルースが向かう事はないだろうと思い、その考えを遠くへやったのであった。



「なんにせよ、今回の件とフェイカーとかいうバカ集団についてお父様に報告し、独自に調査しなさい。私の身は自分で守れるし、私の子もこの件で自力で身を守れることをしっかり目にしたしね」

「‥‥‥貴方様の子だし、出来れば変な方向に育たないことを願いたいですね」

「それどういう意味よ?」


 ぽつりとファームラーがつぶやいた言葉に、アバウトはバーのカウンターの中にある一応防犯用として置いてある鉈を持ちだす。


「い、いえ何も!!そ、それでは失礼いたしました!!」


 その殺気に押され、慌ててファームラーはバーから逃げ出したのであった。


「‥‥‥全く、何で私の故郷の人達はどこか一言が多いというか、ふざける部分があるのかしらね?」


 そうつぶやくアバウト。


 だがしかし、その言葉が盛大なブーメランになっていることを、彼女は自覚していないのであった。



――――――――

SIDEルース


「…‥‥なぁエルゼ」

「何かしらルース君?」

「いや、一応俺達って年頃の男女だろ?お前がこの家に泊まりに来ることに抵抗はなかったのか?」

「いえ、何もないわね。むしろ襲ってきてもいいのよ?」


 ルースの問いかけに対して、エルゼが手を広げ迎え入れる様な仕草をしたのを見て、思わずルースは頭を押さえるのであった。



 公爵家の当主が王城へ報告に向かい、その間、公爵家の屋敷でエルゼが使用人とかがいるとはいえ、一人暮らしに近い状態になるのは理解できる。


 防犯上の事とかは、彼女は水色の魔導書(グリモワール)を持っているため、魔法で解決できるのはいいだろう。





 だがしかし、今回のような件が再び起きるかもしれないという理由で、素早く対応するために、彼女がルースの家に泊まりに来ていいものだろうか?




 ルースとて、一応年頃の男の子であり、母が家にいるとはいえ、幼馴染の少女と同居するというのは理性的にやばい。


…‥‥まぁ、その幼馴染がストーカー気質なので、そのあたりの興奮とかが覚めて、むしろ逆に自身の貞操の危機を感じるのだが。


 できれば反対したかったのだが、ルースの母のアバウトがあっさりと許可した上に、この状況になることを見越していたのか、公爵からの手紙がすぐさま届いて問題ないとされてしまったのである。


 というか公爵、あなた絶対にこの娘を押しつけようと考えていませんかね?タイミングが良すぎるんですが。



 とにもかくにも、残りの夏休みの間、ルースの家にエルゼが宿泊することになったのであった。


 そして、今後部屋の鍵を増設し、更に防犯を高めようかとルースは考えるのであった‥‥‥‥自身の貞操が危機にさらされているというか、普通は逆じゃないかと言いたいが。




アバウトの故郷や隠し事などはまた別の話。

残りの夏休みの間、ストーカーとも言える幼馴染のエルゼと同居する羽目になったルースだが、果たして彼は自身の貞操を守り切れるのだろうか。

なお、村中からは事情を知るが故の哀れみの目線があるので、別に嫉妬されてはいないようであった。

次回に続く!!


‥‥‥果たして無事に夏休みを乗り越えられるのか、神のみぞ知る事である。

「本で読みましたけど、こういう時はラッキーなんとやらをやると良さそうですわね。繰り返していれば、きっとルース君も…‥‥」

「精神的に追い詰められそうだからやめて!?」

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