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39話

汗水たらして作った作物が化け物になったら、枯らすよりもショックが大きいかな?

「ぎゃあぁぁぁぁ!!」

「助けてくれぇぇぇぇ!!」

「おらの家の作物が化け物にぃぃぃいl!?」



「‥‥‥なんだこのカオスな状況!?」


 家の酒蔵で発酵作業をしていたルースと、その横でずっとルースを見つめていたエルゼは、外の悲鳴に気が付き、出てみたのだが、そこにはカオスな光景が広がっていた。



 村中の畑にあった作物が、どれもこれも目玉と牙の生えた大きな口のついた化け物に変化し、村人たちを襲っていたのである。


 一体何をどうすれば、ただの農作物たちが化け物に、いや、モンスターとでもいうべき存在に変化するのかなどの疑問はあったが、今はこの事態にどうにかして対応しなければならなかった。


「お!!ルースお前たちは無事だったのか!!」


 ふと、名前を呼ばれたのでその方向を見れば、茶色の魔導書(グリモワール)を顕現させ、土の魔法で作物たちを抑え込むスアーンの姿があった。



「一体何があったんだこの状況は?」

「それが…‥‥」



 スアーンの話を聞き、ここに至るまでの経路をルースは理解した。


 専門家の人が来て、調べるために収穫しようとしたとたんに、作物たちが攻撃を仕掛け始め、そのまま目玉とかが付いて異形のモンスターとなり、襲い掛かって来たというのだ。



‥‥‥バイ〇ハザード?


 ルースは密かにそう思った。ちょっと違うかもしれないけど。


 言うなれば、プラントハザードでもいうのだろうか。



「とにもかくにも、今村中の魔導書(グリモワール)を持つ奴らで鎮静化をはかっているんだ!!頼むから協力してくれ!!」

「頼まれなくてもわかっている!」


 流石に故郷での異常事態には、ルースは全力を出すことにした。


「とりあえず、この状況だとうわぉっつ!?」

【ギャシェェェェェ!!】



 ルースが魔導書(グリモワール)を顕現させようとした瞬間、死角の方向から一体の化け物作物が襲い掛かって来た。


 が、それはその作物がとった一番の悪手だった。



…‥‥ちょうど、ルースの傍にはエルゼがおり、彼女から見れば死角ではない。


 そして、ルースを襲ったという点で、その作物の命運は尽きたも同然であった。











「ふぅ、ルース君を害しようなど1兆年早いわよ!!」


「…‥‥さすがにそれはやり過ぎなんだが!?」

「なんか相手に同情を感じたぞ!?」


 その一瞬の、エルゼによる作物への蹂躙劇に、思わずルースとスアーンはツッコミを入れた。


 ルースは間一髪でかわしていたから怪我はなかったが、どうやらエルゼの逆鱗に触れたようである。


 そのせいで、その襲ってきた作物は描写が禁じられるほど悲惨なことになり、少しルースとスアーンのトラウマになりそうであった。


「このまま放っておけば、作物共はルース君を襲うから、今のうちに殲滅するわよ!!」


 ごうぅ!!っと、燃え上がるように気迫をまき散らすエルゼ。


 その迫力たるや、何処のモンスターよりも殺気立っており、思わず村中の生きとし生ける者たちはびくっと震えた。


「いやエルゼ殲滅は流石にまずいって!!元々税に出す用の作物だろうし、ここで全部消し炭にしたら無くなるってば!!」

「その前に消し炭で終われば軽い方だと思うのだが…‥‥」


 慌ててルースはエルゼを沈め、ぽつりとスアーンはその被害の大きさを予想して、冷や汗をかいたのであった。



「じゃあどうするのよルース君!」

「どうするもこうするも…‥‥元はただの作物だっただろう?なぁスアーン?」

「あ、ああ間違いないはずだ。収穫前までただのでかい作物って感じだったし、化け物のようになった理由はわからんが‥‥‥」


 いくら何でも、自然に育てていて、ただの作物が化け物になるなんてあり得ない。


 つまり、人為的な要因が加わっているだろうとルースは考え、どのようにしてそうなったのか予想した。



「育てていたとしても、夜間とかに何かされたらすぐにわかるわけじゃない。誰かが畑に、例えば何か薬を捲いたとか考えられないか?」

「その可能性はあるが…‥‥じゃあどうしろと?」

「薬とかそう言った類ならば、あの魔法が使えるはずだ!『魔導書(グリモワール)顕現』!」


 改めてルースは、先ほど妨害されたことを実行し、金色に輝く黄金の魔導書(グリモワール)を権限させた。


「要は悪いものが作物の中に入ったのだとすれば、それを抜くか浄化すればいいからこの魔法で行けるはずだ!!『ホーリーレイン』!!」


 魔法を唱えた瞬間、上空が一気に雲に覆われる。


 ただの雲ではなく、雨雲のようにどんよりと濁っておらず、どこかキラキラと輝いているような綺麗に見える雲。


 そこからぽつりとしずくが落ちてきて、それをきっかけに雲から雨が降って来た。


 それも、ただの雨ではない。


 よく見ればキラキラと輝く雨であり、村のみに降り注ぐ。



 そしてそれらが化け物作物たちに降りかかると‥‥‥



ジュワァァァァア!!

【ギシェェェェェ!?】

【ギシャァァァァ!!】


 何か濁った煙のようなものが作物たちから吹き出し、天に昇って消えていく。


 そして、雨が降りやんだその時には‥‥‥‥ただの作物へと戻っていた。


 ただし、大きさはそのままで。




「癒しと水の複合魔法…‥‥範囲が狭いけど、村中だけなら何とかなったようだ」


 その効果を見て、ルースは満足そうにそうつぶやいたのであった。


―――――――――

『ホーリーレイン』

癒しと水の複合魔法。上空に雨雲を形成し、癒しの力を持った雨を降らせる魔法。その効果は、現段階では軽い擦り傷程度ならばすぐに治り、そして毒物など外となる成分のみを体外へ放出し浄化させる。

ただし、限度があるので今回以上の物が来た場合は無理があった。





たまには主人公らしく解決するルース。

というか、エルゼの方が圧倒的に強いような気がしてきたけど気のせいだろうか?

何にせよ、この騒動は収束を向かえそうだが‥‥‥‥

次回に続く!


‥‥‥エルゼの化け物作物に対する描写を書かなかった理由?

書いてみたら色々とグロイというか、エグくなって、作者の判断で載せるのを止めたのです。流石にこれはあかんやつや…‥‥というか、ここまでするエルゼって何者だよ…‥‥

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