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36話

ちょっとしたチートモドキ。

モドキなのは、あくまで自然に思いついただけだからである。

‥‥‥たった一日で、夕暮頃にルースたちはバルスト村の入り口に到着した。


 タキの速さは相当なものだったようだが、バルション学園長の特訓を受けていたルースとエルゼにとっては、かなり快適だった。



 だがしかし、そんなものを受けておらず、楽が出来るからという想いだけで搭乗していたスアーンは…‥‥


「もう二度と乗らねぇ‥‥‥一瞬で暗くなって、気が付いたらここってどれだけだよ」

「ブラックアウトってやつか?」



 ブラックアウトとは、加速して負担がかかると、そのGによって血液が目にいかず、目が見えなくなって失神する非常に危険な症例。


 グレイアウトという一段階下の症状もあるのだが、おそらく今回スアーンが退官したのはブラックアウトの方であろう。



‥‥‥非常に危険な症状ではあるが、辛うじて頭の血管が逝ったりはしていないので、ギリギリセーフのようだ。


 そんな症状をスアーンは起こしたが、ルースもエルゼも平然としていることから、どれだけ学園長の特訓が厳しいのかと言う話になりそうだが‥‥‥それは後にしておくことにした。




「じゃ、タキ打ち合わせ通りに5分後に再召喚するからな」

【了解なのじゃ!】



 召喚が解除され、タキの姿が煙のようにその場から消える。



 ここに来る前、学園の方で少し実験し、その成果をここで試してみるのである。






 5分後、改めてタキをルースが召喚して見ると…‥‥


【お望みの品、きちんと一緒に持ってこれたのじゃ!】

「よっしゃ!!」


 


 タキが背中に大きな風呂敷を背負って出てきたのを見て、ルースは成功を確信した。




 その風呂敷の中身は、タキの家に置いて来たルースたちの宿題であった。





…‥‥以前、タキを召喚した際に彼女は引っ越しそばをもって出現したことがあった。


 それはつまり、彼女の持ち物も召喚時に一緒に持ってこれることを表していた。




 その事をルースは思いつき、今回の宿題を持ってきてもらう荷物の移動方法を考え出したのである。



 いわば、「召喚モンスター式転送術」とでも言ったところであろうか。



 

 モンスターの召喚前のその居場所に荷物を置き、召喚時に一緒に持ってきてもらえば、その荷物も一緒に持ってきてくれる。


 戻すのであれば、モンスターに持って帰ってもらえばいいので、荷物を極限まで軽くして。移動することが出来るのだ。



 欠点としては、モンスターが触れていないとその荷物は運ばれないようで、その周囲にあるだけでは一緒に召喚されないのことぐらいであろうか。



「全く‥‥‥ルース君のこの荷物の運び方はある意味革命に近いですわよ」

「そういうものか?」

「そうだろ!!これを使えば一気に大量の物資を運べるかもしれないんだぞ!!



 この世界の移動手段は、基本的荷馬車であるのだが、その道中には盗賊が出たりもする。



 その際に襲われ、商人たちとかは商品を奪われ痛い目を見ることが多いのだ。





 だがしかし、この方法…‥‥モンスターの召喚によって、荷物を一気に運べる手段が出来たと擦れば、商人は移動するだけで、目的地までに被害は受けないし、到着後は召喚によって持ってきてもらえばいい。



 まだいろいろと問題点はあるのだが、この世の中にとってはこれほどまでに便利な荷物の運搬方法は、まさに革命と言っていいほど安全な方法なのであった。




「誰でも思いつきそうなものなんだがなぁ‥‥‥」



 この方法を思いついた当初、エルゼたちに驚愕されたのだが、そのすごさをルースは今一つわかっていなかった。



 だがしかし、この方法であれば安全にものを運搬できるうえに、使い道は幅広い。


 この方法が広まれば、今以上に物資の流通が増え、経済に影響を与えるのは明らかであった。





…‥‥後日、ルースはエルゼに言われて、彼女の父親であるカイゼル公爵へこの方法を持ち掛けた。


 公爵はその方法の有用性に目を付け、特許をとるように手続きをルースにアドバイスし、更に後日その方法が世の中に出回った。


 召喚魔法はできるまでの手順が多く、めんどくさいものであったが、この方法が知れ渡ったことにより人気が上昇。


 しかし、召喚魔法を扱えるほどの者は需要に比べて少なく、物資の運搬に役立てたい商人や、戦場での運搬に役立てだてたい各国の軍の間で壮絶な争奪戦が起きたのは言うまでもない。





 そのせいで、莫大な特許料がルースの懐に入って来たのだが‥‥‥‥その事を彼が知り、その金額の多さから卒倒するのは、また別のお話。


‥‥‥ちなみに、このせいで戦争に関してもさまざまな面倒ごとが出来たのだが、いち早くその重要性に取り組んだ公爵家が、その欠点や補い方を研究してトップに立っていたのもまた別のお話。

「これだけであの小僧が済むとは思えんな‥‥‥‥まだまだ何かをやらかすぞきっと」


「‥‥‥なんだろう、今ちょっと悪寒が」

「抱きしめて温めてあげましょうかルース君?それとも一緒にお風呂に入る?」

「いや、拒否するぞ」


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