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20話

ちょっとシリアスなのかな?

‥‥‥謎の液体の襲撃。


 それは、この都市内で突如起きた悲劇であったが、短時間で収束し、人々は安堵した。


 だがしかし、一体だれが何の目的であのような液体をぶちまけたのかは…‥‥‥




「ふーん、こいつがその犯人ねー」


 牢獄に入れられた人物を見ながら、バルション学園長はつぶやいた。



‥‥‥液体襲撃後から時間が経ち、バルション学園長が都市に戻ってきた時に見たのは、あちこちの路上で起きている惨劇と、それと同時に辺りを覆っていた謎の液体の消滅であった。


 その消滅のタイミングで、バルション学園長は時計塔がその根源と素早く見抜き、その場へ駆けつけたときには、その騒動を引き起こした犯人はものすごく衰弱した状態で倒れており、その近くには犯人から情報を聞き出すために、本当はやりたくないだろうけども、可能な限りの延命治療の回復魔法をかけているルースと、周囲の警戒をしていたエルゼとタキがいた。


 ルースの持つ魔導書は金色…‥‥複合魔法を扱うので、癒しの魔法も扱えたのであろう。


 ただ、そういった系統の魔法に関してはまだ不十分な知識しか得れていないようであり、止血や心臓が止まらないように電気信号を送る程度であった。



 そこで、バルション学園長は事情を2人と1匹から聞いた後、まずは犯人の延命治療を学園長自身が行って、完了させてから牢獄にぶち込み、ルースたちからここに至るまでの経緯を聞かせてもらった。



 いわく、昼頃からの襲撃であり、突如広がり始めたまがまがしい液体があって、それは人を切り裂いていた事。


 なにやらものすごく良くないようなマジックアイテムをこの犯人は扱っており、ここまで衰弱しているのはその生命力を代償にしていた可能性があるという事。


 タキが見る限り、まがまがしい力のようなものがあり、その力にこの犯人は呑み込まれたようで、暴走を引き起こしたのか止まる様子がなかった事。


 なぜこのような事をしたのか、情報を得るためにも命を奪わずに、少々気絶してもらった事。



 何が起きたのかを、バルション学園長はその説明で何とか理解した。



 とりあえず、二人には後でまた参考人として呼ぶ可能性があるからという事で、寮へ一旦戻るように学園長命令を出して、この場からいなくなってもらった。


 その後、衛兵等を呼んできて、都市内の被害状況の確認も頼み、ついでに犯人が再び暴れ出さないように、念のために都市にある牢屋へ放り込んでもらったのであった。




‥‥‥そして、今の牢屋前で検証に至る。



「これが例のマジックアイテムね‥‥‥‥」


 普段の延ばすような口調はなく、真面目な学園長。


 犯人が持っていたとされる証拠物のマジックアイテムを見て、学園長の表情は険しくなった。



…‥‥本来、マジックアイテムとは生活の役に立つために作られる不思議な道具であり、魔導書(グリモワール)がなくとも、魔法に近い現象を起こせる道具である。


 だがしかし、戦争に利用されたりするので、その扱いにはそれなりの注意が必要であった。



 そんな中でも、今回の犯人が使用したマジックアイテムは特に異様である。



 見た目が魔導書(グリモワール)に近い形状をしており、かと言ってその色は何色とも言い表せないような不気味な色を持っており、そして、今はどうやら壊れているようなのだが、それでもなお脈動を打つかのように鈍く輝いたり曇ったりする様子に、ぞっとするような忌避感や嫌悪感を学園長は抱いた。



…‥‥けれども、実はバルション学園長にとって、このようなマジックアイテムを見るのは初めてではない。


 そう、約20年ほど前にも、同様の事件があり、その時に押収されたマジックアイテムを見たことがあるからこそ、学園長は分かってしまったのだ。



「このマジックアイテムは…‥‥まさか、20年前の‥‥‥」



 理解はすれども、出来れば理解したくない事実。




 当時の記憶を思い出し、バルション学園長は何が起きているのかを認識した。


「…‥‥まずは、国王に報告しかないか」



 何が起きてしまっているのかは理解できたが、今すぐに動くことはできない。


 迂闊に動けば国内がパニックになるだろうし、その隙をついて他国が攻めてきてもおかしくはないのである。



 まずは、この事件に関して慎重になるようにと知らせるために、学園長は報告書を作成し始め、この国の国王の下へとその報告書を届けるのであった‥‥‥


 











 その頃、学園の寮ではルースとエルゼが話し合っていた。


 今回の事件で、犯人を二人は取り押さえたのだが、未だに突然の事件であったためにまだ混乱が生じているようで、正確に二人が犯人を抑えたという情報は回っていないようである。


 学園長の方から提案として、事件を大きくし過ぎないためにも緘口令が敷かれているようであり、憶測が飛び交う程度であろう。



「‥‥‥にしても、結局あのマジックアイテムとか、液体とかいったい何だったのだろうか?」

「生理的に受け付けないような、そんな不気味さがあったわね」


 その時の事を思い出し、不気味さにルースとエルゼは思わずぶるっと体を震えさせた。


 なお、タキに関しては既に召喚を解除しており、この場にはいなかった。


 召喚を解除して送り返す際に、彼女の方でもいろいろと調べるようだが‥‥‥‥そういえば、召喚していない普段はどこで何を彼女はしているのだろうか?不思議に思うけど、それはまた今度にしよう。



「タキの話だと、あの犯人は何かマジックアイテムの力に呑み込まれているとか言っていたけど‥‥‥‥なんだろうか?」



 ここで似たような例をルースが思いつくとすれば、ツタン○ーメンのマスクや、妖刀のような呪いのアイテムといった類であろう。


 この世界に呪いなんて非科学的な物は…‥‥‥信じたくはないけど、考えてみれば魔法があるこの世界だからこそ、呪詛や呪術といった呪いのようなことが有ってもおかしくはないのである。



「全く分からないわよね…‥‥こういった話はやはり、大人の方たちに任せたほうが良いのかしら」



 いくら犯人逮捕に一役買ったとはいえ、どうも予想以上に厄介ごとのような感じだとルースは思う。


 ここで自分から動いたとしても、すぐにわかるわけもない。



「そうしたほうが良いかな。今回、俺達はあくまで元凶をぶっとばしただけであって、事件の全てを見たわけでもないし、その背後に何があろうが、今の俺達じゃわからないことばかりだしな」



 こういった時、熱血とか正義感溢れるような者であれば、自らの手でその真実をつかみ取ろうと動くだろう。


 だがしかし、こういう類はどうも自分たちのいる領域とはまた違ったようなものであり、迂闊にはいり込めないのである。


 己の領分をわきまえないと、待っているのは破滅しかないのは、なんとなくルースたちはわかっているのである。




 その為、今回の事件に関しては学園長に話すこと以外は、特に口にしないことを二人は決めた。


 自分たちで出来る範囲が分かっているからそ、その範囲を守っていくのが最善策なはずである。


 もっとここで学び、力を付ければいけるかもしれないが‥‥‥‥今はまだ、その時期ではないことを二人は理解しているのであった。




‥‥‥さてと、この事件に関してはひとまず学園長に丸投げして起きたほうが得策な気がする。

けれども、そううまいこと丸投げし切ることはできないのである。

次回へ続く!!


‥‥‥学園長、一応白い魔導書(グリモワール)の持ち主だから、癒しの魔法も得意である。

でも、基本的に攻撃の方に扱っているので、全く癒しの魔法が使えるように見えないのであった。

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