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178話

連続主人公不在回。

主人公がこうも出番ないのはいつ以来だろうか…‥‥

「…‥‥」

「すまん、今、何と発言された?」


 グレイモ王国の王城、会議室にて、その場に居た全員があっけに取られている中、出席していた一人がこの空気にさせた発言者に対して尋ねた。



「変な事ではなーいわよ」

「いや、そうじゃなくて……その内容についてだが」

「ええ、言ったーでしょう?私、これから生徒の一人でもあーり、議題に出ている人物……ルースに対して、色々とやってみよーうかと」


「「「「「‥‥‥‥はい?」」」」」



 バルション学園長が答え、そう宣言した言葉に、再び出席して居た全員はあっけに取られ、間抜けな声を漏らす。




‥‥‥本日、王城内にて開かれた議題は、前回行われた議題で解決策がでなかったことに対する話し合いを行うという目的であったが、その目的の一つにある「ルースに対してどうするか」という議題。


 その議題の開始早々、バルション学園長の発言によって、会議室内の空気が固まったのであった。




「そ、それはつまり…‥‥自身が彼の伴侶となって、この国に何とか居させようという心からなのか?」

「まー、そういーう感じかしらね」


 質問に対して、バルション学園長はそう答える。


「とはいーえ、彼を狙うのは多いのよーね。彼自身気が付いているのか微妙なーところだーし、水面下で動いたほうが得策なーのよね」


 その説明に対して、出席していた者の内数名ほどがどこか面白くない表情を抱いたのを、バルション学園長は見逃さなかった。


 

 ルースに女性達が狙いを定めている状況は男として面白くないと思っているのか、それとも密かに取り入れるために企んでいて、それを邪魔されたようで苦々しく思っているのか。



 とにもかくにも、何かしらルースを隠れて利用しようと企んでいる者たちがいたとすれば、その目論見をある程度潰せたも同然であろう。


「まぁ、我が国の国王陛下に比べーて、しっかーりと身を固めーようとしている感じーですよ」

「ああ、そう言われると文句はないな」

「ゆるゆる国王だしなぁ‥‥‥」

「説得力がすごいというか、感心してしまうことに悲しむべきか」



 そのバルション学園長の発言を聞き、思わずその場にいた全員が同意をするようにうなずいた。



 このグレイモ王国の国王、ハイドラ=バルモ=グレイモは一応愚王ではなく、それなりに善政を敷けているのである程度の人徳はある。


 正妃の王子1人、王女1人と側室の王子2人、王女1人と、ある程度の王位継承権を持つ子供も残しており、今の時期は次期王になれる王太子選定中であり、国王としての義務ももうそろそろ退任される頃合いなのだ。



 だがしかし、そんな国王の唯一の汚点として周知の事実となっているのが、女性関係のだらしなさである。


 公言された王子、王女たちはしっかりと身元が判明しているからいいとはいえ…‥‥女性関係にだらしないせいで、大勢の落胤がいるという話があるのだ。


 ただの根も葉もない噂ではなく、れっきとした根拠があるという事も、この国にとってはかなりの汚点かもしれない。


 幸いと言うか、その落胤たちが王族の血を引いているとはいえ、そんなことも知らずに過ごしていた李、知ってしまったとしても、きちんと王族としての教育を受けた王子や王女にかなうはずもないとあきらめて王位継承権があろうとも確実に放棄しているのである。



…‥‥とはいえ、そんな下半身ゆるゆる残念大魔神国王に比べれば、現在把握できているルースの女性関係はかなり清廉潔白な物であり、文句は特になかった。


 というか、この国の国王のだらしなさに皆頭を抱えていたので、ルースの方が100万倍以上綺麗な関係を持っているように見えるのである。




 さらりとこの国の国王に対する暴言がでたが、特に誰も気にすることはない。


 なお、王妃及び側室たちがきちんと把握しており、制裁をきっちり下しているという話もあるのだが…‥‥たまーに鞭の音や、何か情操教育に悪そうな音がするのだが、皆聞かないふりをするのであった。









 とにもかくにも、一旦その議題は疑似的な解決として、バルション学園長が動き出したという印象をその場に居た者たちに与える。


 そして、彼女以外の全員はある事に気が付いた。



(あれ?でも一応きちんと学園長が結ばれるとは限らないのではないか?)

(狙っている異性が多いと聞くが、帝国の王女もそのうちの一人だったような)

(国滅ぼしのモンスターの方は…‥‥異類婚姻ということいなるのか?そんな例あったかな?)

(そう言えば、彼を狙っている一人はこの国の公爵家の娘だから、彼女が結ばれても同じことだよな)

(なんだろう、何かこう、言い表せないようなものというか、はっきりと言えそうなことは…‥‥)


(((((これ、下手すると壮絶な争いが起きるのではないだろうか?)))))



 嵐どころか大嵐の予感を感じ、いつの間にか冷や汗をかく者たち。


 何かこう、やってはいけないというか、火に油を注ぐ様な真似を行った瞬間を見てしまったのではないかと、その場に居た者たちはそう心に思ったのであった…‥‥。










‥‥‥ちょうどその頃、王城のとある一室で動きがあった。


「ここが、お父様が城を抜け出すのに使っている王族専用非常通路‥‥‥ここを抜ければ城下街、そして外へ抜け出せるはずですわ」


 本来、国王が執務をしている執務室に、その人物はいた。


 今、国王は入浴中であり、部屋の中には誰もおらず、空っぽの状態であったのだが、その人物はこっそり侵入したのである。


 そして、執務室の本棚の仕掛けを動かし、現れた通路を見てそうつぶやいた。


「‥‥‥誰もいないし、今しかないかしらね?もう、城での勉強はうんざりだし…‥‥野へ下りましょう」

「何をしているのでしょうか、お姉さま?」

「ひっ!?」


 突然背後から聞こえてきた声に、びくっと体を震わせその人物が振り向くと、そこには彼女の母親違いの妹が立っていた。


「さては、ここから抜け出して『自由になってしまったよーんひやっはぁぁぁ!!』となされるつもりでしたの?」

「い、いえ、そんなことはないですわ!!‥‥‥というか、そんなことよりもその掛け声は何ですか?」

「単なるノリですの。あと、お姉さまは嘘をついていましたの」

「え?」

「お姉さまは、昔から都合が悪くなると目をそっとそらすの‥‥‥今まさに、それをしていたの」

「うっ!!」


 指摘され、彼女は何も言えなくなった。


 もはやここまでか…‥‥と、諦めかけたその時、その妹は彼女の手を取った。


「安心するですの。私はお姉さまの味方で、告げ口はしないの」

「え?」

「その代わり。私も一緒に行くですの!勉強が嫌になったのは、何もお姉さまだけではないですの!」

「!?」


 その言葉に、彼女は目を見開いた。


 まさか、身近なところに同士がいたとは…‥‥想像もしていなかったのである。



「さぁ、何をぼさっとしているのですの、お姉さま。今のうちに逃げるですの!」

「ええ、そうですわね。さっさと逃げましょう!」


 二人で仲良く手をつなぎ、彼女達はその通路を通っていく。


 そして、時間経過によって自然にその隠し通路は閉じられ、その部屋は最初から何もなかったかのような状態となった。




…‥‥そして、これがさらなる騒ぎを引き起こすのだが、この時、その事態に気が付いていた者はいなかったのであった。


バルション学園長の発言は、企みがあった者たちにとっては障害となった。

だが、そんなことよりもとんでもないことが王城に起きようとしていた。

そして、そのとばっちりはいつものようにある人物へ降りかかる‥‥‥

次回に続く!!


‥‥‥ちなみに、国王がかなり女性関係にだらしないけれども、バルション学園長に手を出していないのは、色々と悲惨な目に合う未来しかないことを理解しているからである。

というか、本当に何でそんな国王でこの国がやっていけるのだろうか。

次代の国王には、ぜひとも節操を持っていただきたいものである。

ちなみに、国王自身の出番も当初はあった。出番もいくつかあったのに、いつしかフェードアウトしていったなぁ…‥‥

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