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175話

さてさて、動き始めたはいいものの、ちょっとスランプ気味。早くこのスランプから抜け出したいな‥‥‥

…‥‥アンケートに書く将来の内容について、ルースは悩んでいた。


 だが、今はその悩むことよりも別の問題が起きていた。



「なんかさ、いつもより皆近くない?」

「そう?いつも通りよ」

「そうそう、普通だぞ」

――――皆イツモ通リノ位置ダヨ。


「‥‥‥そうか?」



 ごまかすようにエルゼ達は言っているが、ルースはそうではないと思った。


 いつも以上に近い距離に、エルゼ達がいるのである。



 右にエルゼ、左にレリア、上にバト……いや、バトの場合はいつもよりも低い位置に浮いているといったほうがいいだろうか。


 とにもかくにも、なぜかいつも以上に港の距離が近いような気がルースはしたのであった。



「そ、そういえばルース君はまだ将来について悩んでいますかね?」


 なにやらごまかすようにエルゼがそう尋ねてきた。


「ああ、まだ決まっていないんだよな。フェイカーを潰すのは確定だが、その後の事とかがね‥‥‥魔導書(グリモワール)が扱えるのだし、それを活かした職に就くか、それともあえて使わずに村に戻ってすごすかとか考えてはいるんだけど……」


 正直なところ、先日の魔導書(グリモワール)との会話に置いて、記憶がない部分がある。


 明らかに消されたような、細工されたかのような感じがして、少々魔導書(グリモワール)に不信感をルースは抱いているのである。


 ゆえに、完全に依存するようなことは避け、なおかつ使う機会もできれば減らしたいが‥‥‥この世の中、魔法を扱えた方が便利な事も多いので、そう都合よくいかないのが現実なのである。


 何にせよ、さっさと決めたほうが良いような気がルースはした。



 なんというべきか、うまいこと言い現わせないが…‥‥さっさと決めることは決めないと、色々と面倒な予感がしたのである。


 主に、現在周囲を囲んでいる者たちによって。



 こういう時に限って冴えわたるルースの勘であったが、どう解決しろと内心ツッコミを入れたくなったのは言うまでもない。









 とにもかくにも、放課後となり、久しぶりの学園長との訓練の時間になった。



「『ライトメテオシャワー』!!」


 バルション学園長が魔法を唱え、大量の光球が降り注いできた。



「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」


 ズドン!!ズドン!!っと地面に当たるたびに爆発する光球から逃げ回り、時には防御するルースたち。


 本日は戦闘に対しての訓練のようだが、相変わらず容赦ないようである。




「こういう光の球は水で屈折させてやったほうがいいわね!」


 エルゼは水魔法で光球の入射角度を変化させ、軌道をずらし、


「燃やし尽くしたほうが早い!」


 レリアは火の魔法で一気に灼熱の壁を創り出して、光球を焼き切っていく。



「こういうのは打ち返してもありだよな!」


 光と氷の複合魔法でラケットのような物を作り、ルースは光球を打ち返す。


 いつもならば防壁を張るが、たまには強気に出て見るのも良いだろう。



「おーお!なかなーか成長しーているね!」

―――――皆スゴーイ!


 3人それぞれの防ぎ方を見て、バルション学園長がそう口にし、純粋に応援しつつ称賛の声をバトがあげる。



「‥‥でーも、これなーらどうかーな?『ドリルライトシャワー』!!」

「「「へ?」」」


 魔法を変更した学園長に、思わず驚きの声を漏らすルースたち。


 

 その魔法が唱えられた次の瞬間、それまでは光球だったものが急に回転し始め、ドリルの形状になる。



ギュィィィィィィィィン!!

チュィィィィィィィン!!


 大小様々なサイズに分かれており、回転する音が異なるが…‥‥一部が歯医者のドリルの音に聞こえるのは嫌だ。


 それはともかくとして、その魔法は先ほどまでの光の流星群とは異なり、貫通力が高まったようだ。



 水魔法で屈折させていたはずのものは、その屈折させる水の膜を突き破り、


 火魔法で燃やし尽くしていたはずのものは、回転することによって日の中を突き進む貫通力を得て貫通し、


 そして複合魔法で打ち返されていたものは、それすらを貫通していく。


「「「いたたたたたたたたたた!!」」」

―――――カナリヒドイネ!?


 ズドドドドドドド!!っと降り注ぐ魔法を防ぎきれず、ルースたちに命中していく。


 殺傷能力は弱められているらしいのだが、それでもかなりの激痛が走る。





 数分後、ようやくそれらが降り終わった時には、ルースたちは地べたに付していた。


 既にボロボロであり、体力を使い果たしてしまったといえよう。


―――――主様、生キテイル?

「な、なんとか…‥‥ぐふっ」


 バトが駆け寄って尋ねてきたが、返事をするので精一杯なほど皆疲労していた。


「やーれやれね。まだまだ甘いーというか、臨機応変さが足りなーいわね」


 呆れたように肩をすくめる学園長だが、この時全員の心は一つになった。


 それこそ無茶でしょ…‥‥、と。



 そのままがっくりと力尽き、ルースたちは気絶したのであった。



―――――主様達、気絶シチャッタ。

「やりすーぎたかしらね?…‥‥ふむ、手加減はしーていたけれども、ちょーっと怪我もあるわね」

――――――学園長ノセイデスヨ。ト言ウカ、アレデマダ手加減ナノガ驚キダヨ。

「皆ずーいぶん強くなっていたからねぇ…‥‥手当も兼ねーて、保健室へ運ぶのが良さーそうね。バト、手伝ってちょうだい」

―――――了解ダヨ。


 学園長がエルゼとバトを魔法で持ちつつ、バトはルースをぐっと持ち上げる。


 妖精姫になってから人と同じほどのサイズとなり、こういう時に人を持ち運べるのは便利そうだ。



「‥‥‥待てよ?保健室に寝かせーるなら」


 保健室へ皆を持っていく最中、ふと、バトに抱えられて運ばれているルースの姿を見て、学園長は閃いた。



――――――ッ!?


 何やら嫌な予感と言うか、乙女の勘で感じ取ったバトは身震いをした。


 だが、自身で同行するには少々実力差的に心もとなく、今はただ、状況が動くのを待つしかなさそうであった…‥‥



学園長との訓練で気絶したルースたち。

冬の季節ゆえに日も早めに沈みがちとなり、保健室内も暗くなっていく。

そんな中、何やら学園長がろくでもない企みを思いついてしまったようで…‥‥

次回に続く!!


…‥‥大人の女性だけに、他の皆とは違った動きが出来そう。タキとかヴィーラも精神・肉体的に大人だけど、学園長とはまた違った方向性だからなぁ‥‥‥

と言うか、次回の副題を「176話」じゃなくて「閑話 ルース貞操の危機」とかにしたくなった。

いやまぁ、それやったら下手するとノクターン行きになるのでギリギリしかできないけれども、閑話扱いにしたほうが自由度が高そうだなと‥‥‥‥ううむ、すぐに決められないというスランプにはまった‥・・・

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