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173話

人と言うのは悩み始めると中々そこから抜け出せなくなる…‥‥

スランプ気味と言うか、何と言うか‥‥‥

「将来に関してのアンケート調査か…‥‥」


 冬も迫って来た本日、グリモワール学園にて、アンケート調査が実施された。


 と言っても、このアンケートは書いて期限内に提出をすればいい、宿題方式とでもいうようなやり方で取っているために、回答するまである程度の時間がある。




 だが、時間があったとしても、ルースには書ける内容は特になかった。


「将来ね‥‥‥いやまぁ、何がどうなるかもわからないしなぁ」

「あれ?ルース君結構悩んでいるわね」


 ルースが考え込んでいると、エルゼがやってきた。


「ああ、将来に関するアンケートだが‥‥‥俺はどうしたらいいのかちょっと悩んでさ」

魔導書(グリモワール)があるのだから、それを活かせるような役職につけばいいのではないか?特に、ルースのは複合魔法を扱えるのだから、様々なところで役に立つと思うのだが」


 と、一緒にレリアもやってきてルースに意見を出す。


 だが、その生かせる仕事というのは案外多い。



 水魔法を活かすのならば、火災発生時に消火活動を行う消防士や、水不足時に水を供給する農家の助っ人。


 木魔法では植物の成長を促して農家の手助けをしたり、もしくは建築材料を生産して大工の助っ人になるなど、魔法を扱えるからこそその職業選択の幅が広く、定まりにくいのである。


 これがまだ赤や青、黄と言った一色の魔導書(グリモワール)所持者であれば、自然と定まったはずである。


 だがしかし、ルースの持つ魔導書(グリモワール)は金色であり、複合魔法などを扱えるので、なんにでもなれる可能性があるのだ。



「国の防衛の役割を持つ魔導書(グリモワール)部隊とかもあるが、有事の際に戦前に立つことになるし、できれば命大事で行きたいんだよな…‥‥」


 まぁ、そもそもタキといった国滅ぼしのモンスターを従えている時点でルースの戦力が大きく、放っておくところはない。


 と言うか、だいぶ周辺諸国にも噂されてきたのか、段々勧誘の手紙などが増えてきたようにルースは思われた。




「おや?悩んでいるようでアルな」


 昼休み時、昼食のために食堂へルースたちが向かうと、ルースの表情から察したのかそこにいたミュルがルースたちの元へ来た。




「実は‥‥‥‥」


 一応、今は教員のミュルにルースはその将来についての悩みを相談する。




「ふむ、将来が定まらないアルか…‥‥そりゃ、そうアルよね。ルースの持つその力はフェイカーでも危険視されていたし、下手すりゃ一国を潰せるからこそ、引き入れようと画策したことがあったぐらいアルからなぁ」


 ルースの相談を聞き、うんうんと納得するようにうなずくミュル。


 もともとはフェイカーから学園に生徒として潜り込み、ルースの勧誘か殺害を企んでいた人物でもあるため、その言葉の説得力は思い。


「いっその事、誰かのヒモになるのはどうアルか?」

「ヒモ?…‥‥いやいやいや、流石にそれはダメだと思うんですけど」


 からかうようなミュルの提案に、ルースは拒否を示す。



「それでもいいんじゃないかしら?」

「え?」


 だが、その発言を聞いたエルゼがそう口にした。


「ルース君が将来路頭に迷うようならば、あたしの方へ婿入りしにくればいいでしょう?どうせ将来告げる訳もなく、婿が入れば適当な男爵の位でももらって、領地の一部でのんびり過ごせるのよね」


 

 エルゼはミストラル公爵家の令嬢だが、それでも3女と言う立場。


 姉たちの誰かの婿が公爵を継ぐことになっており、エルゼはその中に入らない。


 現当主であり、エルゼの父は娘たちを溺愛しているそうだからそう酷い扱いとかはないのだが、やはり立場的には微妙なのである。また、エルゼの姉たちはいるはずだけど、見ることがめったになく、どういった人だったのかもはや覚えてはいない。




…‥‥と言うか、この発言って逆プロポーズにも聞こえる様な気がしたが、気のせいだろう。




「それだったら帝国へ来るのはどうだ?」


 エルゼの発言の後に、レリアが食い入るようにそう提案した。


「モーガス帝国へか?でも、特にやることはないような……」

「いやいやいや、実は帝国には結構いろいろあるんだ。ちょっと前までは戦争で領土拡大などをしていた国だが、今、父は…‥‥皇帝は政治の方に力を入れている。教育面に力を入れることによって国民全体の水準を高め、国が荒れないようにしているんだよ。だがなぁ…‥‥」



 色々と改革も行い、現在かなり発展しているモーガス帝国。


 様々な水準が上がり、国全体が豊かになってきているのだが、当然反発も出てくる。



 過去に帝国に潰された国の残党や、以前レリアを誘拐しようと企んだ者たちなど、そう言った輩が多く出てきており、また、改革を推し進められることによって、これまで甘い汁を吸って来た者たちが猛反発してきたりして、人手がやや不足しているのだとか。



「力で押さえつけず、できれば対話路線で向かう。だが、それでもどうしても収まり切らなかったりすれば、当然犠牲が出てしまうんだ。そこで、ルースが帝国に来ればその力で抑止力として働けるんだよ」

「うーん、でもそんな力目当てなのはなぁ‥‥‥それに、帝国にいたら、絶対にあのレリアのお母さんが毎日模擬戦を挑みに来そうなんだよな」


 その言葉に、その可能性を思い出したのか、「うっ」とレリアは言葉を詰まらせた。




 レリアの母にして、現皇帝の妃ルーレア=バルモ=モーガス、別名『赤銅絶対防壁』。


 帝国の影の支配者とも呼ばれているそうで、大の戦闘狂……は言い過ぎかもしれないが、とりあえず戦闘に明け暮れる人。



 前に帝国へ訪れたときに、出会う機会があり、模擬戦をさせられたが…‥‥学園長のライバルとも言われており、その実力は確かに高く、苦戦を強いられたのである。


 そして模擬戦を挑んできたりして、相当疲れたという経験をルースは思い出したのであった。





……結局、アンケートに書く内容が決まらない。


 そもそも、自分は将来何になりたいのか、何を目指すのか、何を成し遂げるのか。



「改めて考えると、俺には何があるのかな?」


 今までは学業に専念しつつ、たまに来るフェイカ―の襲撃を対処してきた。


 だが、この様に将来について考える機会が特にない。



 フェイカ―を潰すことだけは確定しているが、その後の事…‥‥どうなるのかをルースは考えていなかったのだ。



「そう考えると、まずは自分を見つめ直すべきなのだろうか…‥‥」


 そうつぶやき、ルースはアンケートの紙を見て考え始める。



 冬に入り始め、ルースにも迷いの時が来たようであった‥‥‥‥


自身の将来を考え、悩み始めるルース。

悩みを乗り越えてこそ人は成長するのだが、果たしてその悩みを乗り越えることができるのだろうか。

ついでに、色々と周辺も騒がしくなりそう……

次回に続く!!


……フェイカーを潰すと言うのは確定しているけれども、その後が問題である。

力はあれども、その活かす道が見つからない。いや、多すぎて定まらないのかな。

国滅ぼしのモンスターを従え、怪物を葬り去る力を持ち、精霊としての力もある‥‥‥‥どう考えても他国からしてみたら喉から手が出るほど欲しい人材となりそうだけど、これが本当に面倒ごとを引き寄せるんだよなぁ…‥‥力ある者に平穏はないのだろうか。

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