172話
新しい章に突入。
この章では、人間関係や将来についてなどを整理していく感じになります。
……こじらせて変なことにならなければいいんだけどなぁ。
――――――グレイモ王国の王城内。
会議室にて、今、とある会議が行われていた。
「‥‥‥であるからして、先日の都市メルドランでの襲撃は反魔導書組織フェイカーによるものだと断定。首謀者は組織の幹部と名乗る人物であり、捕縛を完了し、ただ今情報を吐かせています」
いつもの伸びた口調ではなく、真面目に報告するバルション学園長。
先日の「メルドラン蓋と怪物襲撃事件」についての報告がまとまったので、この場でさせてもらっているのである。
「なるほど‥‥‥またフェイカ―か」
「しかも幹部クラスが出てきたとなると、かなりの大事だな」
「いつもは伸びた口調のあの人が真面目だと、かなり深刻な事態になっているのだと分かるな‥‥‥」
バルション学園長の報告を聞き、出席していた会議室内の貴族たちのひそひそ話が飛び交う。
フェイカーについてはもはや放ってはおけない組織であり、何とかして壊滅をさせたいのだが…‥‥
「二十数年前の時には完全に壊滅したと思っていたが、結局は復活してきた。それはつまり、壊滅できなかったことにあるのだろうが‥‥‥」
「根幹からどうにかしないといけないはずだが…‥‥その相手がどこにいるのが誰なのかすらわからないし、そもそもフェイカーの主導者が誰なのかさえもつかみ切れていない。一体どうやって相手をすればいいのだ」
その疑問を論議するが、答えは出ない。
魔法でどうにかできないのかと尋ねた者もいたが、あいにく魔法も万能ではない。
とはいえ、このまま何も動かない時間と言うのも、無駄なような空気が漂い始める。
(‥‥決定打がなーいし、今回の襲撃のよーうに手が足りない時もでーてきたわね。かと言って、あらかじめ予測するこーとができないし……面倒な問題よね)
バルション学園長はそう心の中で思ったが、結局この問題に関しては、一時保留ということになった。
解決策が出てくるまで常に守ることになるのだが…‥‥その守りはいつまで持つのかはわからない。
かと言って、現状、このまま議論しても時間の無駄でしかなく、各自で考えるしかないのである。
「‥‥‥と、ここで一旦保留にして、次の議題だが…‥」
司会役の人が議題を切り替え、他にある問題などについて議論されていくのであった。
…‥‥それから数時間後、ようやくある程度の議題が片付いたところで、フェイカーの件は保留にして数えないとして、最後の議題が出された。
「現状、フェイカーに対してこれまで退けてきた少年、ルース=ラルフについてのことだ」
(…‥来たわね)
その議題内容が出された瞬間、学園長は素早く会議に集中し始める。
「フェイカーに対して、これまでの功績を考えると中々才能があるといえよう。報告によれば黄金の魔導書、国滅ぼしのモンスターを従えるなど…‥‥聞いているだけでも色々とあるが、その彼について、ある事が今回の議題となる」
「ある事とはなんでしょうか?」
司会の述べた議題について、出席者の一人が質問をした。
「ある事とは‥‥‥彼がこの先、どう進むのかについてだ」
「なるほど」
その説明に、その場に居た者たちは理解した。
現在、国にとって脅威となりうるフェイカーを撃退しているルースについては、その功績からかなりの実力がある事を皆は理解していた。
それだけの力を持つのであれば、確かにフェイカーを相手取る事は可能である。
フェイカーと完全な敵対関係にあるため、寝返る事が無いのもわかっているのだが…‥‥問題はその先にある。
仮に、フェイカーが潰れてしまった場合、相手がいなくなる。
ならば、ルースがどう出るのかわからないのだ。
村へ戻ってのんびり生活するのか、その魔導書を活かして役職につくのか、様々な予想が立てられるのだが、問題はこの王国にとってどうなるのかということ。
別に王国にとどまっていても、もしくは友好国などに移住しても、この国にとって害をなさないのであれば別に良い。
だがしかし、万が一にでも彼が国に反旗を翻してしまうようなことがあった場合……その対処が怖ろしく難しくなることが目に見えているからだ。
情報によれば、ルースに対して好意を抱いている者たちがこの国出身や、友好国からの相手なのは良い。
その者たちと婚姻を結べば、この国に害をなすような事はよっぽどの事が無い限り無さそうだからである。
……だが、彼の持つ力は大きく、すでにその情報が他国へ洩れている可能性があり、もしかするとルースを引き込む国があるのかもしれないのだ。
その国の中には、この王国とも敵対しているようなところもあるので油断ができない。
「報告によればハニートラップなどは効果が薄そうである。なぜならば、彼の周囲にいる者たちが、あくどい目的で近づこうとしている輩を見ぬき、すべて排除しているのだとか。中には他国の間者などもいたそうだが、トラウマをしっかり刻まれて送還されているようだからな」
「トラウマって‥‥‥」
「正直言って、そのルースと言う少年よりも、その周囲の方がよっぽど危険なような気がするのだが‥‥‥」
その内容を聞きつつ、それぞれ思わずつぶやく。
まぁ何にせよ、ルースの将来については避けられる問題ではない。
強い力を持つ者が守ってくれるのは良いのだが、その力の行き先がどうなるか不安定になった時、人はどうしても疑いたくなり、中には悪心を抱いてしまうものがいたりするからである。
何にせよ、こちらもフェイカーの件同様に、特にたいした案も出ず、この日の会議は終わったのであった。
…‥‥その帰宅道、都市へ戻る馬車の中でバルション学園長は考えていた。
確かに、フェイカーに関してもそうだが、自分の受け持つ生徒体の将来がどの様になるのかは、まだ決まっていない。
魔導書を活かして生活する者もいれば、むしろ抑制し、頼らずに生きていく者もいる。
最悪なのは、きちんとどのように扱うのかなどを学びつつも、悪行に手を染めてしまう者が出てしまうことだが‥‥‥そうなる前にどうにかしたい。
「‥‥‥そーうね、いっその事、アンケートでもとーってみるべきかしら?」
ふと、自分の学園の生徒たちが、今どのような将来の目標意を持っているのか学園長は調査することに決めた。
調査をすれば自然とルースについても分かることがあるだろうし、その内容によっては対処しやすくはなるだろう。
……できれば、何か面白おかしいものであったとしても、悪い道へ進むようなものではないことを彼女は祈るのであった。
さてさて、学園長が何やら考えつつも、この時期になれば自然と考えるようになっていくはずである。
とはいえ、どのような将来があるのかを予想すると山のようにあるのだ。
…‥‥しかし、一体どれになるのかは、考える自身でさえわかっていない。
次回に続く!!
エルゼとかははっきりしているけどね。とはいえ、はっきりしている分、意見の衝突も起きやすそうだ。
と言うか、タマモやヴィーラのようなモンスター組や、バトのような妖精姫とかはどうしようかね。
あれはあれで色々となぁ‥‥‥下手なことをして争いで世界を滅ぼしたくないよ。
あ、ifストーリーってのも面白そうかな。