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164話

ちょっと都市サイド。やや行ったり来たりな感じになるかな。

――――――突如として出来上がった壁に、都市メルドランがつぶされて3時間が経過していた。


 いまだに都市全体を覆う壁には何の変化が見られなかったのだが、とある音が響いてきた。



ドゴーン!!ドゴーン!!ドゴーン!!



 まるで何かを殴り続けるような破壊音がどんどん大きくなっていき、徐々に覆っていた壁のほんの一部が盛り上がり始める。




ドゴーン!!ドゴーン!!ドゴーン!!ドゴーン!!ドゴーン!!ドゴーン!!


 打ち付ける音が大きくなると同時並行して、その盛り上がった部分もどんどん大きくなっていき、全体で見れば小さなこぶだが、近くで見ればようやく大人一人ぐらいの大きさにまで盛り上がったところで…‥‥



ドゴーン!!ドゴーン!!…‥‥ドッガァァァァァァアン!!

「どえっせぇぇぇぇぇい!!」


 盛大な掛け声とともに、そのこぶが内部から突き破られ、中かから人が這い出てくる。


 角を生やし、金棒を持ち、鬼人が…‥‥ミュルが出てきたのだ。





「ふぅ、なんとか出られたでアルな」


 やっとこさっとこ中から出てきて、一息をつくミュル。



 そう、彼女はずっと覆い被さってきた壁を殴り続け、根性で破ったのである。


 周囲を見渡し、都市全体が壁であったものに覆い被さっていると確認し、ミュルは首をひねる。



「うーん、これ一体なんでアルかね?この不気味な色合いは間違いなくフェイカーのものでアルけど、こんなものなど見たことないでアルな」


 反魔導書(グリモワール)組織フェイカーの幹部であったミュルからしてみれば、この壁の色合いからしてほぼ間違いなく組織が関係していると断言できる。


 だが、彼女が幹部であった時に見たことが無いものであった。



「突如として出現し、倒れて都市を潰すなど……やり方もちょっと組織とは異なるような気もするでアル」


 フェイカーの場合、もっぱら隠れて活動することが多い。


 いつぞやかの戦争時には兵器を貸し付けたり、道具を売りつけて試してもらったり、実験台になってもらったりなど、大抵は後方支援をしてその成果を見ていることが多い。


 そもそもここまで大規模に目立つようなことは好まず、きちんと国を倒すには隠れてやろうというのが大体の指針なのだ。



 その為、こうも大規模かつ盛大な攻撃のような事をするとは考えにくいと、ミュルは予想した。


「となれば、別の誰かの犯行でアルか?」


 フェイカーとて一枚岩ではない。


 組織内でミュルを殺そうとする輩がいたように、元々の組織の根幹を違え、犯行を盛大に行うような輩だっているし、出世のために蹴落とすような輩もいる。


 となれば、この規模でも単独犯の可能性が高いとミュルは考えた。




 まぁ、なんにせよ、今はもう組織を抜けた身ではあるし、そこまで考えないほうが良いような気もする。


 とりあえずはギリギリ助かっているであろう都市の人達を助けるためにも、再び壁のあちこちを壊そうとして、金棒を振るおうとしたその瞬間であった。




ドチュン!!

「っ!?」


 何かが飛んでくる音が聞こえ、バッと身をかわすミュル。



 その数秒後に、彼女のいた場所には何かが着弾し、破裂した。



「…‥‥溶解液爆弾でアルか」


 じゅうううううっと音を立てて解ける着弾地点を見て、ミュルは分析しそうつぶやく。


 飛んできた方向を見て見れば、いつの間にか集まってきていた、気持ちの悪い虫のような大きな怪物たちであった。



「‥‥‥フェイカー製の怪物、それも新種でアルか。こりゃちょっと厄介そうでアルな」


 肩をすくめつつ、金棒を構え直すミュル。


【【【ギュゲェゴガァァァァァァァァ!!】】】


 ミュルを見て、雄たけびを上げる気持ちの悪い怪物たち。



 数えてみれば数十体ほどで、どれもこれも不気味な色合いに加えて、ギトギトしていそうで触るのも嫌であるほど気持ち悪すぎる。


「本当ならばルースやその他の戦力がいればいいでアルがなぁ」


 つぶやきつつ、ミュルはぶぉんと金棒を振りかぶり、具合を確かめる。



「ま、帰ってきていないようだし、それまでに都市から這い出てきて戦闘に加わってくれそうな輩もいるはずでアルな。今はとりあえず、殲滅するのみでアル」



 幹部を辞め、一教師としてこの都市に来たミュル。


 しかし、その実力は衰えてはおらず、むしろ組織によって暗殺される可能性もあったために腕を磨き続け、実力は以前よりも上がっている。



「さぁ、化け物どもよ、殺り合おうでアル!!」

【【【ゲェゴギェプァァァァァァァァ!!】】】


 ミュルがくいっと指を立て挑発し、その意味が分かったのかいら立ちの声を上げる怪物たち。



…‥‥今ここに、たった一人の鬼人と怪物たちの戦闘が繰り広げられ始めるのであった。



数十体の怪物を前に、逃げることもできるが、それはこの都市を捨てて、まだ生きているであろう人々を見殺しにするような選択となる。

そのような事は嫌であり、そして帰って来るであろうルースたちのためにも、その鬼人は戦いを挑む。

数的には不利でも、やり遂げようと…‥‥

次回に続く!!


……なにげに作中で、主人公を一度は殺めかけた力はあるからね。実力ではかなり上なんだよ。あのトラウマ共がそれを凌駕するだけの恐怖を持っていただけだし、別にミュルは弱くないのである。

さてさて、次はルースたち側だけど…‥‥彼らが到着するまでミュルは持つかな?

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