158話
新章開始!
そろそろ物語全体としては、ようやく予定の半分に達しそう…‥‥まだまだ長いな…‥‥
―――――世界のどこか、精霊しか知らないその場所。
その場所にて、精霊王はある手紙を読んでいた。
『おお、久しぶりの元娘からの手紙じゃな』
好々爺のような優しい笑みを浮かべ、嬉しそうな声で精霊王はそうつぶやいた。
その手紙は、今は精霊としての力も封じ、人間として過ごしている彼の娘からの手紙。
久しぶりに着たその手紙に、精霊王は心躍らせた。
『何々…‥‥ふむ?』
内容を読み置いていくうちに、精霊王の顔は難しいものになっていく。
その内容は、なんでも精霊王たちが密かに隠し持っている薬‥‥‥精霊薬と呼ばれるものを、彼の娘の子、つまり精霊王の孫が手に入れてしまったということであった。
元の場所に隠すこともできるはずだが、その場所にフェイカーと呼ばれる組織の怪物が入ってきたこともあり、完全に隠せないという状況だと言うのだ。
精霊薬は様々な用途があるとはいえ…‥‥普通の人間や魔族、はてはモンスターまでその効果を知ってしまえば誰もがのどから手を出すほど欲する物。
ゆえに、争いの種になるので、有事に限ってのみの使用を認め、それ以外では表に出さないようにしていたのだが‥‥‥何をどうしてか、孫がやらかしてしまったわけだ。
『なるほどのぅ。つまり、薬を隠すかもしくは他にいい案が無いか尋ねたいというわけか』
手紙を読み終え、精霊王は考えを整理してつぶやいた。
『‥‥‥ふむ、ならこの機会に、真正面から孫と顔合わせをするかのぅ』
以前、精霊王が呼ばれて向かった時には、彼の孫はその力があふれ、そしてこぼれまくった状態で意識を失っていた。
それを改善するように少々施したが、その時は用事が他にもあったので、孫が目覚めるまでそばにいることができなかったのだ。
精霊とはいえ、感情があり、そして祖父としての立場から孫を心配していた精霊王。
手紙からは元気にやっているようだが、やはりまだまだ危なさそうだとも彼は思った。
『‥‥‥待てよ、いっその事精霊の力に関しても、儂直々に正しい使い方を教えてあげるのもいいかもしれないのぅ』
ニヤリと笑みを浮かべながら、精霊王は返事の手紙を書き始める。
世界中にいる、自然そのもの存在である精霊たちを束ねる王としての立場に要る精霊王。
彼のイメージは、世間一般には荘厳で威風堂々とした、王としての器をしっかり持った存在。
だがしかし、今、ワクワクしながら手紙を書いている精霊王の姿は、他人から見ればただ孫と遊びたいだけの爺馬鹿にしか見えないのであった‥‥‥‥。
―――――ところ変わって、収穫祭が終わり、静かになった都市メルドラン。
メルドランにあるグリモワール学園、その公邸では今、ある工事が行われていた。
「校庭の拡張工事?」
「そーうね。こーこ数年ほーどあちこーち騒がーしいし、魔導書持ーちの子たーちを鍛えるたーめにも広さーを確保しようと考えたのよーね。以前、作ってくーれた訓練場もあーるけど、そこを使わなーい程度の、緩い訓練を行うーためにも必要だったーのよ」
ルースの疑問の言葉に、バルション学園長はそう答えた。
「ふーん、今以上にこの工程が広くなるのね」
「でも、そうなると周辺の市街地とかに影響が出ないだろうか?」
「大丈夫、そのあーたりはしっかり交渉済みでー、予算も確保してあーるわ。それに……」
ぴっとバルション学園長が指をさしているのは、シャベルを使って、校庭の土をまんべんなく叩いて固めている…‥‥ヴィーラの姿。
だが、その彼女の姿は今、あの巨大兎のような姿ではなかった。
‥‥‥兎の要素としてタキのように獣の耳が頭にしっかりとあり、足も靴のように変化しているが兎の足と変わらない。
腰の方には丸い兎の尻尾が大きくあり、全体的にモフモフした衣装を着ているので、モフもこもこ要素は失われていないだろう。
ただまぁ、手足がすらりとのび、その容姿が人間で言うと美人に入る物であると言うのは、驚きであった。
どうも彼女、タキ同様に人化できるようになったらしい。
ただし、タキならば衣服も自身の意思で自由に変えられるので、着替える際に脱ぐ必要はないそうなのだが、ヴィーラの場合はそうはいかないそうだ。
何しろ、毛皮と言うか、まともに表皮をはがされたのか、そのせいで人の姿になった時の衣服はいつも同じであり、脱ぐと元に戻った時に丸裸な兎の状態になってしまうのだと言うのだ。
タキいわく、おそらく心的なトラウマが影響し、衣服に限っては変化がうまいこと行かないらしいが…‥‥トラウマの原因って、間違いなくタキ含むエルゼ達による折檻だよね、とは流石にルースは言えなかった。
なんとなく、踏み込んではいけないような話だと思えたからだ。
まぁ、それはともかく、色々と迷惑をかけた償いとして、ヴィーラはこの学園で土木工事関係を受け持つことにしたらしい。
同様の目に遭ったことのあるミュルとは親友になったそうで、最近は晩酌を共にかわすらしい。
意外というか、同情しあってなったのであれば納得と言うか…‥‥とにもかくにも、ヴィーラはようやく立ち直ったようで、どことなくルースは安心したのであった。
ただし、ヴィーラに話しかけようとしたら一瞬ですごい視線が集まるのを感じ取ったが‥‥‥エルゼ達、まだ許していないのだろうか。
‥‥‥というか、ここまで執着を見せられると、ずっと今の関係を保てるのか、ふとルースはそう思った。
自身が危機に陥れば本気で激怒し、敵が何であれ滅する勢いでやってしまうエルゼ達。
好意を向けられているのに気が付いていないわけではない。流石にそこまで鈍感でもなくなってきたと、ルースは思う。
‥‥‥ただまぁ、ストーカー気質に、国滅ぼし、妖精姫、帝国の王女などと考えると、まだその答えを出したくないともルースは思えたのであった。
と言うか、決着を付けようとしたら今の関係が崩れそうで恐ろしい。
それに、シャレにならないような争いが起きそうなので、恐怖なのである‥‥‥‥‥
さてさて、何やら濃い色模様が気になり始めた模様。
それはともかくとして、精霊王からの返事も気になる処。
はたして、どうなっていくのやら。
次回に続く!!
‥‥‥新キャラも出してみたいけど、何かこう、ぶっ飛んだ人を出してみたい。割と思考的にみんなまともだけどさ、ドM・Sなんかも出したいんだよね…‥‥こう、年齢制限にかかりそうでやりにくいけれどね。ノクターン版を出してみたいけれども、それはそれで本編と絡めるのが大変だしなぁ‥‥‥、あいや、この場合ムーンか?