151話
投稿している今の時期、寒波が猛威を振るっていた。
ここまで大雪なのはかなり久し振りだなぁ…‥‥
――――――収穫祭でにぎわう都市内。
客寄せをしたり、満員過ぎて嬉しい悲鳴を上げる露店もある中、スアーンはぶすっと膨れていた。
「畜生、こういう時は親戚がいなかったらいいなと俺っちは思うのになぁ」
「何をぶつぶついっているんやねん、これをさっさと入れ替えしいや!」
狩りだされて手伝わされている露店の主人、スアーンの親戚のボルモルンに言われて、スアーンは露店の後方にある荷馬車の荷物と、露店で出している商品の入れ替えを行う。
「なんでこんな薄くなっていく頭のおっさんとともに、仕事しなければならいないんだろうな」
「余計な事を言うなや!!」
スアーンのそのつぶやきに、毎年徐々に不毛の大地と化していく頭に不安を覚えるボルモルンはそう叫ぶ。
彼等がやっている露店は普通の商品を並べて売る露店。
だが、その商品はこの近辺では扱われることが無いような物をそろえており、そのため割と人気が出ているのであった。
「しかしなぁ、去年の5倍以上の売り上げを確保できるとは、やっぱりこの都市は儲けのための宝庫になっているんかいな?」
「そりゃ、例年時用に露店の数も増えて、その分客が来ているらしいからな」
モルボルンが感情している間、スアーンはめんどくさそうに言葉を帰す。
彼にとって、この環境は改善したい。
むさくるしいおっさんと一緒よりも、ルースのように周囲に可愛い女子などがいたほうが良いのだ。
ルースと友のポジションにいる理由としても、可愛い・美しい女の人との遭遇率が高そうだという下心が少々あったりするのだ。
だがしかし、現実は非常である。
今、この都市内でルースはエルゼやレリア、バトと女性陣と共にめぐっているのに対して、スアーンは親戚のむさくるしい波〇禿げへ近づくモルボルンと共に露店を経営している。
同じ村出身で、魔導書も扱えるのに……一体何がどう違うのだろうか。
まぁ、正直言ってエルゼのような執着が強いストーカーはお断りではあるが、それでもルースの周囲に女性の影があるのはうらやましいのである。
「ああもぅ、このおっさんも美女になればなぁ」
思わずそうつぶやくスアーン。
……だが、想像してみたらかなり気持ち悪くなった。
見た目は美少女、中身はおっさん。それも中年のハゲが進行する親戚だ。
正直言って、スアーン自身の想像力が貧困なのもあるが、生理的に受け付けないような者になるかもと思い直し、スアーンはその想像を辞めるのであった。
「しかしなぁ、なんか俺っちの勘が、再び奴に女性の陰がでそうなのを告げて‥‥」
「おおおい!!いつまで考え事をしているんだ!!さっさと手伝え!!」
最後までつぶやかさせてくれないモルボルンに対して、スアーンは少々殺気を覚えたが、溜息を吐いて現実に打ちのめされるのであった。
「ああ、何故俺っちだけはこんな目に遭うのだろうか…‥‥」
「‥‥‥あれ?」
「どうしたのよ、ルース君」
「いや、何でもない‥‥かな?」
ふと、何となく友が現実に打ちのめされたような感じがしたが、まぁ気にしなくても大丈夫か。
どうでもいい時に感知する勘は置いておくことして、そう結論付けるルースであった。
現在、モフモフ兎ことヴィーラも加わって皆で露店をめぐってはいるが、色々な店があるのは面白い。
「しかし、やっぱりこのモフモフは良いなぁ‥‥‥触らせてくれてありがとうございます、ヴィーラさん」
【アあ、別にいイよ。モフモフは減る物デないしね】
モフモフっと、歩きながら撫でるルースに対して、ヴィーラは答える。
このモフモフもこもこした手触りは、タキの毛とはまた違った感触である。
タキの毛が高級感あふれている毛皮だと擦れば、ヴィーラの毛は一般庶民でもなんとか手が届きそうなモフモフでありながら、それでいて至高に達している究極の毛であろう。
「まだまだこの世には、俺の知らないモフモフがあるのか‥‥」
「ルース君、それ真面目に言うことなのかしら?」
思わずエルゼはルースにそうツッコミを入れた。
――――――モフモフモフモフッテ、主本当ニモフモフ好キダヨネ。
上をパタパタと翼で飛びながら、バトが呆れたようにつぶやく。
妖精姫となったバトは体の大きさが人間サイズになったがゆえに、同時に大きくなった翅の風とかが来るかと思われていたが、そこまで大きな風は起こさないようだ。
というか、どう見たってその翅で飛べることがおかしいような気がする。
まぁ、魔法があるこの世界だし、飛行力学とかもわからないものになっているに違いないと思えば問題ない。
「いや、そこまでモフモフいわれることはないと思うがな」
―――――イヤ、ソウダト思ウヨ?
ルースの言葉に、バトはジト目でそう言い返したのであった。
とにもかくにも、収穫祭は大賑わいである。
露店も活発になっており、徐々に日が沈み始めたがそれでも人の賑わいは減ることがなく、むしろますます増加していく。
まさに人の河というような、人の荒波に巻き込まれて……
「あれ?いつの間にかはぐれた!?」
―――――皆バラバラダヨ!?
【あリャ、いつノ間にかバラけたネ?】
ルースが気が付いたときには、エルゼとレリアがおらず、唯一上を飛んで難を逃れたバトと、目立つモフモフゆえにはぐれなかったヴィーラのしかその場にはいなかった。
「うわぁ‥‥てことは、あの人込みに彼女達がいるのか」
何とか出てきた路地にて、改めて状況を確認しつつ、混雑する人込みを眺めてルースはそうつぶやいた。
「バト、上を飛んで皆を探してくれ」
―――――主様モ飛ンデ探サナイノ?
「精霊状態なら確かに飛べるが、そんなに長時間使用可能というわけでもないからな。それに、ここにヴィーラさん一人だけにしたら、ここに人が入ってきた時にまた分からなくなるだろう?」
―――――ソレモソウダネ。
ルースの説明に、バトは納得する。
とりあえず、バトは翅をはばたかせて皆を上から探す間に、とりあえず集合場所を決めてその場所へルースとヴィーラは向かった。
【ほー、時計塔の下とハ、確かにこコならわかるね】
「目立つ場所の方が、良く分かるからな」
時計塔ベルビックン……その足元を集合場所にすれば、分かりやすい位置なのでたどり着くのは容易いであろう。
あとはバトが皆を探し出せば、ここに集合できるはずである。
「まぁ、皆が来るまで時間はかかるだろうなー」
【ふム、そうだロうな。ならば、暇つブしも兼ねて質問良いかネ?】
「え?」
質問と言われても、なにかあるのだろうか?
まぁ、この都市には観光目的で来たと言うし、まだ見ぬ観光できそうな場所の質問でならば‥‥
【‥‥‥精霊王、彼ノ居所を知らヌか?】
「え?」
なにやら予想の斜め上の質問をされて、一瞬ルースはきょとんと呆けた。
「あー‥‥‥すいません、今の質問なんですけど、もう一度いいですかね?」
聞き間違いかと思い、ルースは問いかけた。
【精霊王、奴の居場所を知らナいかと尋ねたぞ】
「‥‥‥精霊王の居場所?」
ヴィーラのその質問に、ルースは首を傾げた。
「いや、全然知りませんね」
ルースは精霊王の孫でもあるのだが、精霊王の居場所なんぞ全く興味を持って居なかった。
精々、そんな人が祖父だったのかという驚きを最初に抱いた程度であり、会えたら会ってみたい程度だったのだ。
そんな中で、突然のヴィーラの意図の分からないような質問には、答えることが出来なかった。
「えっと、精霊王の居場所とか言いますけど…‥‥なんで俺にそんな質問を?」
【なぜッテ、あなたが精霊の力を振るッテいたところを見て、精霊に関係、もしくは本人だト思ったからだ】
「‥‥‥ああ、そういえば」
ふと、その言葉にルースはあることを思い出した。
言われてみればヴィーラに初めて遭遇した時、あの謎の液体事件での液体人形を倒そうとして精霊状態になっていた。
その精霊状態時の気配とかで精霊王の血縁とかを感じ取ったのだろう。
国を滅ぼせるモンスターというからには、そのあたりの勘の鋭さもあるのだろうと、ルースは納得する。
「まぁ、確かに精霊といえばあたりでもはずれでもあるような‥‥‥」
【ン?どういウことだ?】
「精霊王って、俺の祖父らしいんですよね」
【‥‥‥‥なるホど】
ルースの言葉に、納得したような声をだすヴィーラ。
【デはつマり、精霊王の血を引イてもいると】
「そういうこ、」
そういうことです、そうルースは話そうとしたが、最後まで言い切れなかった。
瞬時にして目の前からヴィーラの姿が消えうせたのだ。
そして、背後に回り込まれたのだとルースが気が付いたときには、なにやらモフっとした柔らかい衝撃と、バァァン!!ッというような鈍器で殴られた衝撃を感じ取り、そのままルース倒れ込む。
……ああ、これがもしかして背後に警戒しろと言っていたあれなのかなと、この間あった魔導書との会話を思い出しながら、ルースは気を失うのであった‥‥‥‥
……何やら雲行きが怪しくなってまいりました。
突然の衝撃にルースは気絶し、そのまま倒れ込む。
果たして、何が起きたのか。そして、エルゼ達は気が付くのか?
次回に続く!!
……早い事収拾を付けないと、都市がやばそう。エルゼがルースを探すために水没させるとか、レリアが手加減して邪魔者を焼き払うとか、タキが吹き飛ばすとか、色々とピンチ。
あ、リメイク投稿始めました。詳し事は活動報告にて。