閑話 ??? その2
お久し振りの奴らです。
前回は名前なしだったが、仮の名前としてであれば出せるようになったのは良かった。
主に、セリフを誰がどの様に出しているのか書けるようになったところが‥‥‥名前がでないような奴だと書くのが本当に大変なんだよ。
――――――都市メルドランから遠く離れた山の中。
うっそうと茂る森に、一軒の明かに不自然な屋敷が立っていた。
そして、その屋敷の一室に彼等は集まっていた。
「…‥‥あーあ、結局あの改良版兵器はやられてしまったそうだね」
椅子に腰をかけながら、そうつぶやくのはこの中では割と常識人と言われるエルフルニア13世。
「おいおい、最後まで見ていないのにそう結論付けるのはどうなのだ…‥‥しかし、この土産の都市饅頭とやらはうまいな」
見かけがものすごいゴリラでありながら、熊の獣人であるリゴーラは饅頭を食べながら声を出した。
「なんでも勝った、負けたってところはすぐにわかるらしくてね、生体反応が消えて分かるそうらしいぜ」
自慢の長い鼻をこすりながら、リゴーラの言葉に返答するのはハンブルドーン。
彼ら三人は、この夏ルースとある一件で関わりを持っており、彼のその後の経過報告を聞く…‥‥反魔導書組織フェイカーの幹部たちであった。
元々は、ここにあと一人の鬼人が入って四幹部であったが、今は彼女が抜けてしまっている。
だが割とつい最近、新たな幹部が現れ、彼等と共に居た。
「‥‥‥なんかずいぶん余裕というか、こちら側が負けたことに関して悔しさを持って居ないようだね?」
三人の様子に少々いら立つのか、その新たな幹部は苛立たしげな言葉を投げかける。
「そりゃそうだ、いちいち気にしても時間の無駄だ」
「やられたことをしっかり学び、対策を立てるのが必要だし、勝利をもぎ取れればいいからな」
「正直言って、この集まりってそもそもいるのかなーとオレーッチは思っているけどね」
その新幹部の言葉に対して、三人はそう言葉を返す。
……今はもう、報告によれば敵対することになった鬼人の幹部の代わりにできた、この新幹部。
組織の中では早い出世を遂げているようだが‥‥‥‥だてに幹部を名乗るわけもない三人は、その新幹部の胡散臭さを見ぬいていた。
ゆえに、心を許さず、きちんと最初から上の立場にいることを選んだのだ。
「大体、あの我が組織で開発した液体型成体兵器がそう簡単に負けるとはどういうことだろうか?予定通りにいかねば気持ちが悪いというのに、そううまいこと行かないのは悔しいところであろう」
「予定通り、といわれても、物事は全て予定通り決まるわけではない」
「臨機応変に対応せねばいかぬ。それなのに、お前は決めてしまっているからこそ、なかなか襲撃をかけることをしなかったではないか」
「予定を組み直して3日、もう一度組み直して‥‥‥って、何度直せばいいんだろうね?」
「ぐっ…‥‥」
三人の言葉に、ぐぅの音も出ない新幹部。
「だ、だが、遭遇した超・危険人物……バルション学園長には深手を負わせたぞ。これであの都市は防衛機能がやや落ちるはずであり‥‥」
「と言っても、確かその学園長とやらは白色の魔導書所持者……回復魔法に長けているはずだ」
「自称攻撃魔法が苦手というが、回復魔法を扱えないとは言っていないはずだしな。腕前も高いし、すぐに直してしまうだろう」
「毒を塗った刃で攻撃したとしても…‥‥割と早めに復帰されるだろうね。むしろ、傷をつけた相手に対して本気を出してくるんじゃないか?」
反論しようと試みたが、三人の幹部の意見の重みに、その新幹部は潰される。
「ああもぅ!!もうこの場は解散だ!!やはりこのような幹部同士の集まりなど、無意味にすぎない!!」
いらだちが募り、その新幹部は部屋から出ていった。
「‥‥‥この程度で根を上げるとは、根性が無いな」
退出した新幹部の様子を見て、エルフルニアはそうつぶやいた。
「ああ、かなりないな。おそらく今まで障害もなく、サクサクと昇進してきただけに‥‥‥プライドが高くなっていたのだろう」
「でもな、オレーッチたちの組織にとっての目標は『グレイモ王国の破壊及び世界征服』が主なところなんだが、あいつはどう見てもその目標と外れたところを見ているな」
エルフルニアのつぶやきに続けて、リゴーラとハンブルドーンも声を出した。
あの新幹部は、組織内に不要な「欲望をもった目」をしていたのを見逃さなかったのである。
「何もかも完璧にできるわけではない。我々はそう心に刻みながら、何があろうとも目的を達成できるように素早く判断していくが‥‥‥」
「初志貫徹、最初の目的を貫くのはいいが、あれでは頭が固すぎる」
「というか、組織内にいらない派閥を作りそうだよね。勝手にやらかしたら組織の長が許さないと思うけどね」
とはいえ、この幹部の不仲は放っておいて良いことではない。
「この組織も長いからな。あちこちガタが来てもおかしくはない」
「実際に、組織に入る理由が力を求めてならまだいいが、権力をものにとか、気にらない相手を潰せるだけとか考えている者が増えている」
「となれば、早いうちに粛清しないとこの組織が自滅する可能性があるよね」
うーんと考えこむ三人の幹部。
本来は組織は一枚岩で目標を達成したいところだが、前幹部の鬼人が抜けて以来、組織内がばらけ始めているのだ。
「こうなってしまえば、この組織内で解決できなくなる」
「かと言って、内部抗争で弱体化するのは避けたい。いや、避けたとしても、誰かがこの組織の重要情報をばらしてしまいかねないな」
「そもそも、あの幹部が前幹部の鬼人のあいつを嵌め落としたという話もあるからね。勝手に兵器を使用し、亡き者にした、情報を吐くようにして裏切らせたという黒いうわさが絶えないんだよな」
何にせよ、早いこと解決しなければこの組織運営が成り立たなくなってしまうであろう。
「組織内の自浄作用は働かぬだろうし…‥‥こうなれば仕方が無いな」
「お?何か案があるのかエルフルニア?」
何かを思いついたらしいエルフルニアに、リゴーラが問いかける。
「組織内でも、志が違えばもはや別物だ。ゆえに、その部分を切り落とすという手段を取っても構わないだろう」
「…‥‥まさかとは思うが、仕向ける気なのか?」
「ええ?そんなことをして良いのかなぁ?」
エルフルニアの言葉で、リゴーラとハンブルドーンは何を言いたいのか理解した。
「ああ、大丈夫だろう。どうせ組織内の癌だ。こういう時こそ、彼との敵対関係を活かして切り取ってもらえばいい」
「つまり、あちらにとってはこの組織の弱体化を狙え、こちらにとっては組織の膿を除けるということか」
「でもどうやってやるのだ?」
「焚きつければいいだろう。あの自信満々、自意識過剰、間違った誇りの塊の思考を誘導するのは容易い。こちらとしてもある程度の痛手を覚悟すればいいだけだしな…‥‥くっくっくっくっくっくっく」
「‥‥‥あ、もしかしてあの鬼人がいなくなった原因らしいあの新幹部を蹴落としたいのか?」
「疑問に思わなくても多分そうだろうな‥‥‥この組織が十分非道な事をしているのは分かっているけどさ、今のエルフルニアが悪の大総統に見えるのは気のせいだろうか…‥‥」
不気味な声を上げるエルフルニアに対して、リゴーラとハンブルドーンは後ずさって寒気を感じていた。
とにもかくにも、フェイカー内に嵐が吹き荒れそうであった。
「くっくっくっくっく、ああいう手合いに関しては、どのように誘導すればいいのかわかっているからな。敵対している相手も利用可能だし、彼の実力も知っているからこそ、あの馬鹿は確実に終わるだろうな」
「‥‥‥おい、かなり黒いところに入ったけど大丈夫か?」
「ダメだな。こりゃ相当私怨が積もっていそうだ」
何やらフェイカー内に漂う怪しい雰囲気の中、ルースたちは都市へ帰還する。
そして、観光目的らしい兎を伴うのだが、それは新たな騒動の引き金となる。
それに、未だに起きていない、あの魔導書からの背中に注意するような警告は一体どうなっているのか。
次回へ続く!!
……というか、ここまで書いて気が付いた。この新幹部、名前無い。というか考えていなかった。
次に出る時までに考えるのだが…‥‥次、出番有るかな?なんかこう、ぷちっとやってしまいたくなる。