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138話

考えてみれば、小説内では結構時間が経過しているんだよな‥‥‥つい昨日のように、バトの登場シーンが思い出されるよ。

最初はモフモフの繭で、数少ないモフモフ要員だったのに期間が短かった。

そして今、モフモフ不足ゆえに、作者はモフモフ要素増加を企てていたりする。

―――――放課後、エルモア宅にルースたちは集まっていた。


 集まった理由は、バトの睡眠時間の増加について、何かしら詳しそうなエルモアに尋ねるのが良いと判断したからである。


 まぁ、そこまで深刻な事ではないかもしれないと皆は思っていたのだが‥‥‥‥バトを診察したエルモアは、予想の斜め上を言った。


「ふむ……なるほど、原因は判明したな」

「エルモア先生、バトの睡眠時間の増加原因が分かったのですか」

「ええ、簡単な事だな。妖精としての終わりが近づいているだけだな」


「「「‥‥‥え?」」」


 あっさりと言ったエルモアの言葉に、ルース、エルゼ、レリアはぽかんとあっけに取られた。


―――――オ、終ワリッテ、私死ヌノ!?


 その診察結果に、眠そうにして居たバトであったが眠気が吹っ飛び、驚愕の声を上げた。


「失礼、これでは縁起の悪い言い方だったな。別に命にかかわるような事ではないことであると、はっきり言えるのだな」

「あ、なんだ、大丈夫なのか」

「いきなり終わりというから、人生、いや妖生の終わりかと思ったわよ」

「焦って損したなぁ」

―――――ホッ。



 命には別状がないということに、一同は安堵の息を吐く。


 だが、「終わり」ということは何なのか?



「正確に言えば、『妖精』としての時代の終わりだな」

「妖精として?」

「ああ、前にも話したが…‥‥妖精は段階を踏まえて成長していると言ったな?」


 エルモアはそう言いながら、説明し始めた。


 


 以前、バトが繭時代だったときにも妖精に関しての説明はあった。


 妖精は段階を踏まえて成長する生物であり、その生態は今のところいくつか判明している。


 妖精の繭となる前の「妖精の卵」、「妖精の幼虫」時代はモンスターの特徴である魔石が体内にあり、モンスターに分類される時代。


 「妖精の繭」という、モンスターから魔族へ変化する時代。

 

 そして、繭の時期を終えて羽化し、「妖精」となると魔石が消失しており、魔族に分類されるようになる。


 モンスター、繭、魔族と段階を踏まえて妖精は成長していくのだ。



「そして、この『妖精』となった後にも、実は段階が存在する」

「というと?」

「つまり、より上位の存在…‥‥妖精以上精霊未満と言える『大妖精』になるということがあるのだ」


――――――――

『大妖精』

妖精の中でも高位の存在であり、一気に体が成長して人と同サイズ、もしくはそれ以上のサイズへと体が変化する。

力そのものも増加し、より自然に溶け込んだり、自然に干渉したりなどが可能となる。

精霊に似てはいるが、全くの別物であり、それでいながら性質が似ているためややこしい存在でもある。

―――――――


「大妖精になる前に、妖精は大きく睡眠時間を増やすと文献などに記録されているな。その理由は、睡眠をとることによって己の力を蓄え、大妖精へ変化するためのエネルギーが貯まるまで活動が鈍るそうだな」



 つまり、バトの睡眠時間が増えていたのは‥‥‥‥


―――――私、大妖精ニナレルノ!?


 大妖精になれるかもしれないということに、バトが驚愕している。


 彼女自身良く分からないで睡眠が増えていたそうだが、おそらくそれは本能的に体が分かっていたからだろうということである。



 妖精の中でも上位の存在になれるかもしれないと聞き、バトが嬉しそうに飛び回る。


―――――主様、私、大妖精ニナレルミタイダヨー!


 にこにこ笑いながら、金色に輝く翅をはばたかせ、嬉しそうに舞う様子はちょっと記録したい。



 けれども、その嬉しそうなバトとは裏腹に、エルモアは何処か不安そうな顔になっていた。


「ただな‥‥‥少々問題もあるな」

「問題?」

「大妖精になることで、なにかあるのかしら?」


 エルモアのその不安そうなつぶやきに、ルースたちは首を傾げる。



「本来、大妖精となるのは限られた妖精であり、別にバトがなっても不思議ではないな。だが、時期が『早すぎる』ということに気になっているんだよな」

「時期が早すぎるって‥‥‥まさか、このままだと体がドロドロに溶けて腐ってしまうのか?」

「いやいやいや、そんなグロイ事は無いからな」


 ルースの言葉に、エルモアは否定した。


 一瞬、その言葉で某巨人兵を想像したからな…‥‥あれも早すぎて腐っていたから、もしかしてと思ったけど、どうも違うらしい。


「本来ならば、大妖精になるのは妖精となってから10年以上生きた者の中で素質がある者がなるんだ。ただな、バトの場合1年程度しか経過していないのに変だと思ったんだよな」



 言われてみればと、ルースたちはバトとの出会いを思い出す。


 一年前、収穫祭の時期後半に、繭の状態だったバトと出会った。


 それから割とすぐに彼女は妖精へと変化したが…‥‥それはつまり、現時点で妖精になってから1年程度しかたっておらず、10年以上という条件に当てはまっていないことを指すのだ。


「文献に無いだけかもしれないが、それでもここまで速く大妖精になる兆しを見せる妖精の話は聞いたことが無いな。何か、別の要因があるのか、それとも大妖精とは全く別物になるのか…‥‥」


 うーんと皆は頭をひねったが、それらしいものはない。


 バトはいつもルースのポケットや頭の上にいたり、周囲を飛び回っていたりなどするので、大妖精になるような要因なんてどこにもないような‥‥‥‥



「あ」


 そこでふと、ルースはとあることに気が付いた。


「エルモア先生、妖精って精霊と似て異なる存在ですよね?」

「ああ、そうだ。あちらも自然に関しての分野が広いが、能力が桁違いであり、影響力もかなりあるがな」

「じゃぁ、もし妖精の側に精霊がいたらどうなるんですか?」

「ふむ、そうなった場合はそうだな、精霊は妖精に似た存在であり、全く異なる存在でもある。しかし、力は精霊の方が上であり、その力に引き寄せ‥‥‥‥待てよ?」


 そこまで声に出したところで、エルモアはルースが何を言わんとしているのか気が付いた。



「まさかとは思うが‥‥‥だがしかし、確かに納得がいくかもしれないな」

「え、何どういうことよ?」

「何かわかったのか?」


 エルモアのつぶやきに、エルゼとレリアが疑問の声を上げる。


「‥‥‥確か、ルースは精霊王の孫であり、その精霊王の娘の子供でもある。半分精霊の値が入った存在であり、普段は人だが…‥‥精霊化状態というものになれるのだろう?」

「はい、そうです」

「容姿が全体的にやや半透明の金色になり、力があふれる状態…‥‥つまり、過剰な精霊としての力を外部へ放出している姿でもあるわけだ。となれば、常日頃ルースのポケットなどに入っているバトに、その影響があったのではないだろうか?」



 簡単に言えば、精霊の力を持つルースが原因で、その影響をバトが間近で受け続けたことによって、精霊から大妖精への変化を速めたかもしれないということであるのだ。


 そう考えると、色々と辻妻があう。



 バトが睡眠時間を増やし始めた時期は、正確にはルースが精霊化状態になるちょっと前ぐらい。


 けれども、その当時はルースの精霊部分の封印が弱まっていたこともあり、その力がわずかに漏れ出して影響を受けていたかもしれないのだ。



 そして現在は、紆余曲折有りながらも精霊化状態になれるようになったルースは機会があれば精霊化状態となり、その力をより外部へ放出したわけである。


 その状態の時、バトは胸ポケットの中に入っていることが多く、より強く精霊の力の影響を受けて、大妖精への準備としての睡眠時間の増加がより一層目に見えるようになったのではないかというのだ。




 その予想はおそらく的中している。


 というか、バトの睡眠に疑問を持った本人が、細かく言えばその元凶であったとは何たることであろうか。



……なんだろう、この悪いことは別にしていないのに、元凶だったことに関する罪悪感は。


 どことなく、ルースは居心地悪く感じた。


「えっと、それじゃあともかく、バトに悪いところはないってことで良いんですよね?」

「ああ、その通りだな」



 ちょっと居心地の悪い空気を変えるためにもルースはそう質問し、エルモアは答えた。


「とはいえ、精霊の影響を受けて大妖精になった例は文献には余り無いな。ゆえに、今後どのような変化が起きるのか皆目見当もつかない…‥‥だからこそ、出来る限り目を離さないほうが良いな」

「油断はできないと?」

「そういうことだな。まぁ、無事に大妖精になれば御の字、良くて更にそれを超える存在へ、悪くて体が未熟なところから力に耐えきれず爆発四散程度だろうな」

「それ悪いで済むのかな!?」


 どう考えても命を落としているようにしか聞こえない嫌な予想に、思わずルースはツッコミを入れる。



……久々に人にツッコミを入れたような気がしつつも、今後の経過は注意したほうがいいとエルモアは忠告した。


「場合によっては、良からぬ馬鹿が出てきて彼女を狙う可能性も否定できないな。黄金の魔導書(グリモワール)持ちであり、精霊王の孫でもあるあなたの保護下にある妖精へそう簡単に手出しをする人はいないでしょうが…‥‥その可能性も考慮したほうが良いでしょうな」

「なるほど、分かりました」

「あたしたちも力になってあげたほうが良いわよね。ミストラル公爵家の令嬢として、友人である彼女に関して守るようにしておきますわ」

「ふむ、それなら同じく友人の私も、モーガス帝国王女として権力を活かそう」



 エルゼもレリアも、バトの保護に協力してくれるようだが‥‥‥‥まぁ、こんな二人に対して敵対するような馬鹿はいないだろう。


 


 何にせよ、今後の経過観察は重要そうであり、変化を見逃さないためにも気を抜かないほうが良いと皆は思うのであった。



「あれ?そういえばタキもこの家にいるはずだけど、姿を見ないような?」

「ああ、彼女ならば先ほど何やら慌てて出かけていったぞ。なんでも、『国滅ぼしモンスター組合』なるものが最近設立されて、その会談に向かったのだとか」

「‥‥‥あいつは一体、何をしているんだよ」


 どう考えても物騒な組合にしか聞こえないが、そうそう悪い奴らばかりではないと思いたい。


 というか、組合って…‥‥世界にどれだけ国を滅ぼせるモンスターがいるんだよ。


 


バトの睡眠時間の増加……それは、大妖精への変化のためであった。

だがしかし、通常とは違い、ルースの影響があって引き起こされるものであり、どうなるのかは不明である。

果たして、どのような変化が起き、それが何を引き起こすのか‥‥‥‥

次回に続く!


『国滅ぼしモンスター組合』

国を1つ以上滅ぼした経験のあるモンスターたちが集結し、発足した組合。

ゆえに、その構成員だけでいくつもの国が滅ぼせるので、その力を狙う輩が出ても大丈夫なように会談時には場所を変えまくっている。ただ今、会員募集中。国を滅ぼした経験のあるモンスターの方は、年会費無料の特典付きで入れます☆。


……ちょっとふざけたくなった。モフモフ増量もしたいし、何かちょうどいいのがいないか探そうかな?

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