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131話

脱出方法、わかった人はいるかな?

「‥‥‥よし、まずはこんなものか」


 モンスターの体内にて、そのあたりに散らばっていた一緒に吸い込まれた、もしくは適当に食べられたらしい船などの廃材を集め、つぎはぎながらも一隻の船を作って、ルースはそうつぶやいた。


「き、金色の魔導書(グリモワール)による複合魔法でここまでやるとは・・・・・すごいな」


 ルースの作業を見て、リゴーラたちはそうつぶやいた。





 何しろ、廃材をなんとか船として再利用するために、修理として魔法を使用したのだが、その方法が無茶苦茶すぎたのである。



 木製の部分には、木と土で隙間を埋め、成長させ、結合させる。


 金属製部分には、火を風と複合して超高温にしてバーナーのようにして接合させるなど、とりあえずできる限りのでたらめな建造を行ったのだ。


 とりあえず、脱出した際に海上へ出ても大丈夫なように船を作っただけではあるが…‥‥ちゃんと浮くよね・



「あとは‥‥‥っと、戻って来たか」


 このモンスターの体内から脱出するために、必要な作業を任せていたタキが戻って来た。



【召喚主殿、準備完了なのじゃ!】

「うん、ちゃんと全部の穴をふさいで来たか?」

【ばっちりなのじゃ!】


 ぐっと指を立て、ルースの質問に自信満々に答えるタキ。


 脱出作業に置いて、必要な手続きのために、周囲の内臓へつながる器官を全部ふさいでもらったのである。


 余計な穴から漏れないようにするためにね。



「それじゃぁ、総員作戦開始のために位置に付け!」


 ルースの号令の元、エルゼ達が出来上がった船に乗り込み、しっかりと体を固定する。


「『ウォーターシールド』!」


 エルゼが水魔法を発動させ、船の周囲を覆うように水の膜を張った。


 これから行うのは、このモンスターの体内からの脱出計画なのだが…‥‥その過程において、万が一のために防壁を彼女に張ってもらうのだ。


「それじゃいくぞ!準備は良いな!」

「「「「「了解!」」」」


 ルースの言葉に、皆がいることを確認しつつ、了解の声が出た。


「では‥‥『ポイズンミスト』!!」



 その声を聴き、ルースはある魔法を発動させた。




 魔法の発動と同時に、宙にもの至極毒々しい色をした球体が現れた。


 その球体は徐々にぼこぼこと沸騰し、気化していき‥‥‥‥どんどん膨らんでいく。



「あれが毒の魔法を入れたやつか…‥‥」

「ああ、作戦のために必要だからな。あの内部では火が燃え盛って蒸発させていっているが、液体では引火しないタイプだから大丈夫だ」



 その魔法を見て、レリアがつぶやいた言葉に、ルースはそう説明した。



――――――――

「ポイズンミスト」

猛毒の液体の塊を創り出し、内部に火をともしてその熱によって気化させできる毒の霧の魔法。

毒の性質は色々変更可能であるが、引火しやすいので取扱注意である。


―――――――――



……そう、今回のこのモンスターの体内からの脱出方法はこの毒ガスがカギとなる。


 名付けて「ガス大爆発浮上作戦」!!…‥‥我ながらセンスないな。



 まぁ、それはともかくとして原理は非常に簡単。



 まず、口や排せつ部分から毒ガスが漏れないように細工して、毒ガスを発生させます。


 今回は海中から空中へ出るように、水や空気よりも軽い毒ガスの類にして、このままどんどんたまっていけば、このモンスターの体内はガスで充満され、風船のように自然と浮上するはずである。



 そして、空気よりも軽いために海上へ出て、そのタイミングでレリアの火の魔法によって着火するのだ。



 引火して爆発するタイプでもあり、その爆発によってモンスターは体内から爆発四散、ついでにその勢いでルースたちは出る予定なのだ。まぁ、穴をあけて終わりの可能性の方が大きいので、そのあたりも想定しないといけない。


 船を作ったのは、脱出する際に海上へ出ることが想定されたので、溺れないようにするためである。


 飛び出て海面に全身ダイブは避けたかったからね。絶対痛いし。




……とはいえ、この脱出方法は少々問題もある。


 まず、ガスを貯めて浮上させるのは良いのだが、満タンにし過ぎて風船のように破裂する危険性がある。


 ゆえに量の見極めをしなければならない。



 次に、毒ガスが思った以上に広まって、自分たちを害する状態になったらまずいと言う事。


 一応、人体には害が余り無い毒にしているのだが、ガスの圧力で空気が無くなってしまう可能性があるので、その事を防ぐために、ある程度の水の膜の内側に入ることによって、ガスに侵されていない空気の確保もしているが‥‥大丈夫かな?



 そして、最後の爆発で、その威力が強すぎるかもしれないということだ。


 腹をぶっとばせるだけでいいのだが、下手すれば自分たちまでまきこまれる危険性がある。


 指向性を少々持たせてはいるが…‥‥完全とは言い切れない。




 それでも、この脱出方法が最善と思ったので、今回やってみることにしたのだ。


 どんどん毒ガスが貯まっていき、浮上している感覚を皆は感じ始めた。


 モンスター自身が咆哮を上げてきたので己の体内の異常を感じたみたいだけれども…‥‥暴れているようだがまったく意味をなさない。だってガスが漏れないように色々ふさいだもん。



 そうこうしている間に、タキが耳をぴくっと動かした。


【よし、海上へ浮上したようじゃな】



 皆より耳が良いそうで、海上へ出たタイミングを音で感知してもらったが、そろそろ良さそうである。



「よし、頼むぞレリア」

「わかっているよ、『ファイヤボール』!!」


 ルースの合図で、レリアは水の膜の外、毒ガスで充満されたところへ火の塊を投下した。




ドッガァァァァァァァァァァァァァァン!!


 着火し、一瞬にしてガス全体が炎の塊になったと思った瞬間、猛烈な爆発音が響いた。


 大気が震え、水の膜があるとはいえ熱さを感じるようで、皆がギュッと目をつぶって待つこと数秒後。




 恐る恐る目を開けてみると、指向性を持たせた方向には大穴が開いており、そこから青空が見えて、落下中らしいということが分かった。


「よし、まずは一部成功か!」



 浮上させ、穴をあけたのはいい。


 ただ、爆発に指向性を持たせ過ぎたせいで、穴が思った以上に小さい。


……それでも、大型トラック程の大きさはあるけどね。血がだくだく流れているよ。



 あとは落下し、下に激突するだけのようなので、ここで素早く脱出をルースたちは試みた。


「『フロートシップ』!」


 だんだん降下している中で、ルースは魔法を発動させる。


 船の下に風魔法の圧力と火魔法によって炎が噴き出し、浮力が発生する。



 ドドド!!っと勢いよく浮かび上がり、穴へ向けて方向転換、位置調整。


「レリア!」

「わかっているよ!『ボルケーノカノン』!!」


 船の後方にレリアが移り、強力な火柱を後方に打ち出す。


 レリアの身体は船に固定され、作用・反作用によって炎の噴き出す方向とは逆方向に船が進みだす。



 ジェットエンジンのように推進力を得た船はそのまま全速前進。


 ルースの魔法によって位置調整が行われ、レリアの魔法によって推進力を得て、エルゼがついでに水の膜を保ったことで流出してきた血液などで汚れないようにして、船は進む。




 そして、ついに体外へ船が飛び出した!



「脱出成功だあぁぁぁあ!!」

「「「「「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」



 ルースの言葉に、全員喚起する。


 後方を見てみれば、腹に穴が開いたモンスターが落下していき、海上へたたきつけられて、そのまま沈む光景が見えた。


 結局何てモンスターだったのかは知らないが、とりあえず脱出成功。


「‥‥‥‥で、ここ何処だよ」


 着水し、落ち着いたところでルースたちはあたりを見渡した。





……見渡す限り、水平線。


 陸地も見えず、絶海の真ん中に出たようだ。



「遭難したようだな」

「そうなんですか?」

「いや、それシャレになっていないからな?」

「脱出できたと思っていたのに……」

「まだまだ問題は山積みだったのか」

「全く陸地が見えねぇな」

【食料であれば、送還された後にあっちで購入し、召喚されて持ってくることができるから大丈夫じゃよ】

―――――デモ、帰リ方ワカンナイヨネ。



 船に静寂が訪れ、皆心の中が一つになった。



 「まだまだ簡単にこの状況からは脱出できそうにないな」と‥‥‥‥‥早く帰りたいよ。


脱出はできたものの、見事に遭難したルースたち。

……とはいえ、タキが食料供給をしてくれるようだから飢え死にすることはない。

けれども、どうやって帰ろうか。

次回に続く!


……一応、結構簡単に帰還できる方法があったりする。気が付くかな?

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