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130話

大雪凄いな‥‥‥誰も足を付けていない場所にダイブしたい。

でも、寒いのが苦手で布団やこたつから出たくない。

「見つけた!」


 周囲一帯を浄化などして明るくしながら進むと、エルゼ達の姿をルースは見つけた。



 乗っていたタキの背中から降り、駆け寄ってみれば、皆怪我は無さそうである。


「エルゼ!レリア!バト!大丈夫か!」


 それぞれに声をかけながらゆさぶると、皆目を覚ました。


「う、う~~ん」

「こ、ここは‥」

―――――ドコ?


「よかった、皆あまり目立った障害とかも無さそうだね」



 安堵の息を吐くルース。


 水着とかが脱げているようなハプニングもなく、皆無事のようだ。



「ルース君?それに女狐も‥‥‥」

「って、なんだここは!?」

―――――ブヨブヨノグニャグニャ!?


 エルゼが目をこすったが、周囲の状況を素早く把握したらしいレリアとバトは驚愕していた。


 そりゃそうだろう。先ほどまで砂浜にいたのに、周囲が脈動している内臓みたいな場所だったら、誰でも驚愕するであろう。



 と、気が付くとすぐ近くに、あの追われていた三人組を見つけた。


 彼らも気絶しているようだが、そちらもけがはなさそうだ。


 何にせよ、この状況に至るまでの経緯の説明をするには必要そうだったので、ルースはその三人組も起こすのであった。










「‥‥‥まさか飲み込まれて腹の中とはな」

「すまん!こちらの不手際だ!」

「本当なんだよねー」


「えっと、三人ともそちらは無事なのでしょうか?」


 エルゼ達が水着のままでは動きにくいので、衣服を持ってきたタキが着替えを別の場所で手伝っている間に、起こした三人組と状況整理をルースは行っていた。


「ああ、無事だ。そうだ自己紹介もしておこう。わたしの名はリゴーラで、魔族の熊男だ」


 剛毛な毛深い腕でポージングしながら、その毛深いおっさんもといリゴーラはそう告げた。


「えっと、オレーッチはハンブルドーンで、人間だからな?よく魔族の天狗族とか言われるが、この鼻は自前だからな?」



 天狗の鼻のように長い鼻を見せてそう言いながら、ハンブルドーンはそう説明した。


……魔族の天狗族ってなんだよ?というか、そういわれてもまったく説得力がないような。



「ああ、ワタシの名はエルフルニア13世だ。なぜ自分だけがこのような中と言うと、先祖代々名を変えるなと言われており、このように13代も続いているのだよ」


 くるくるっとシルクハットのような物を回しながら、エルフルニアという者はそう告げた。


 エルフではなく、この人も人間。ただし、手足が細長く、少々バランスが悪そうだ。




 とにもかくにも、この三人があの海から怪物を連れ込んできた張本人たちなのだが‥‥‥いったい何をやらかしてくればこんなことになったのだろうか。


 衣服を着替え終えたエルゼ達が戻ってきて、ルースたちも自己紹介を一旦した後、彼等はここに至るまでの経緯を説明し始めた。



「あれは、3日前の事でした…‥‥」







 当時、この三人はそれぞれ何処かの職場で一緒にいたそうなのだが、元はもう一人加えた4人で上司の立場にいたらしい。


 だが、その一人がどこ変え消えうせたために、後釜が決まるまでの仕事が増えたので、その為に一旦休んでしまえという考えに到り、有給休暇をもぎ取って帝国へ観光しに来ていたのだとか。



「帝国の観光スポットは素晴らしく、様々なところをめぐりました」

「食べ物もうまく、満喫できる休暇だったぞ」

「だけど、それもある時を境に地獄へ変わったのです……」



 事の起こりは、彼等が海に訪れた時だそうだ。


 レンタル船で沖合に出て、釣りを楽しめるような観光スポットへ彼らは一緒に向かったらしい。


 海の中にもモンスターはいるが、そうそう危険なものに出くわすわけがないと思っていたそうだが…‥‥それは悲しいことに盛大なフラグだったようだ。



「大物かと思って吊り上げれば、それはなんと巨大なモンスター!」

「しかも大人しいタイプではなく、バリバリの超・危険な奴だったのだ!」

「逃げようにも追われて負けず、陸地に逃れようにも隙を見せないので戻れずと、一進一退でまったく物事は進みませんでした……」


 しかも、釣り上げたことが癪に障ったようで、しつこくそのモンスターは追いかけてきた。


 三人で全力で逃げようと漕ぎ、三日三晩不眠不休の根性で逃亡を図ったのだが、状況は改善されない。


「ですが、それでも奴には疲れがたまったのでしょう。ほんの一瞬、隙が出来て陸地へ戻れそうになったのです」

「ああ、なるほど。それがあの砂浜へ向けての移動だったのか」



 沖合に舟が現れたあのタイミング、その時に彼らはようやく長い追いかけっこがここで終わると思っていたそうである。



 だが、現実は非常であった。


 逃げ切れるかと思っていた矢先に、まさかの吸い込みによって捕まったのだ。







…‥‥そして、現在に至るというわけのようであった。



「せっかくの有給休暇、それがまさかこんなことになるとは……」

「くそう!こうなるのであれば帝国パフェ100種類10杯ずつチャレンジをやっておくべきであった!」



 ズーンと落ち込むハンブルドーンとエルフルニアに対して、リゴーラだけは別の事で後悔しているようだ。


 と言うか、それ食べきれるの?100×10=1000杯分なのだが…‥‥





 何にせよ、彼等もここから脱出したいが、どうしようもないという事実だけが分かった。



「全然状況が好転しないな…‥‥」

「と言うか、むしろ悪化しているような」

「遭難というべきかな?」

―――――ムシロ捕食サレタ獲物。

【一応我は捕食者か被食者の立場のどちらかと言われれば迷わず捕食者なのじゃが…‥それが捕食されたような形になるとは、なんともいえぬのぅ。あいや、召喚されておるからまだセーフなのか?】

「どうにもならないなぁ」

「くそう!あんみつヨモギ300杯もあったのに!」

「いや、それは喰いきれないんじゃないか?」


 三人寄れば文殊の知恵とも言うが、ここにこれだけ人数がいてもどうしようもない。


 というかリゴールさんとやら、あんたは食い気しかないのか。




 答えがでぬまま、皆でうーんと悩んでいたその時であった。



――――――シュ、ジュゥゥゥゥゥ…‥‥



「ん?」


 ふと、何か溶けるような音が聞こえてきた。


「‥‥‥なんだ、今の音?」

「何か溶けているのかしら?」

「待てよ?そういえばここってモンスターの腹の中だよな?」

「というと」

「それはつまり」

――――――消化開始シテイルヨ!?



 慌てて周囲を見渡せば、なにやら液体が流れ込んできており、他に散らばっていた、海中で食べたゴミなのかそれらが解け始めていた。



 どうやらここは胃だったようである。


 そして今、消化活動を始めたのだ!!


「に、逃げるぞ!!タキ、頼む!」

【りょ、了解なのじゃ!!】


 慌てて狐の姿になったタキにしがみつき、皆も乗せてすばやく移動する。


 流れてくる胃液をよけながらも、何とか内臓の中で高い部分らしい場所に辿りつき、何とか難をルースたちは逃れた。







【ふぅ、助かったのじゃ】


 タキが安どの息を吐き、皆を下ろす。


 高い位置にいるのだが、周囲を見渡せば胃液のようなもので満たされており、まさに絶海の孤島状態であった。



「とはいえ、この状態が続くとも限らないしな‥‥‥」


 ここはモンスターの体内の中。


 今は水平状態でおそらく海中を漂っているようだが、激しい動きとかをされればこの中が荒れ、消化液が飛び散ってきて悲惨な目になることが目に見えている。


 そうなる前になんとしてでも脱出しなければならないが‥‥‥



「海中だとしたら、どのぐらいの深さと言うのが問題だしな…‥‥」


 仮に腹を魔法でぶち抜いたとしても、深海とかにいた場合は水圧で潰されるし、そうじゃなくても息が続かない可能性がある。



「できれば海上、もしくは空中に飛び上がってくれれば、飛び出しても溺れてしまう可能性はなくなるんだけどなぁ」

「そう都合よく、浮上とかもしてくれないわよね」

「ドッボォォンっと飛び上がってくれればいいのにな」


 皆でああでもないこうでもないと議論をし続けても結論は出ない。


「あーあ、いっその事アレがあれば万事解決できそうなのになぁ」

「ん?アレってなんですかハンブルドーンさん」

「いやね?オレーッチたちの職場では今、あるものを開発していてね、特殊なガスを吹き込むことによって空を飛ぶ道具を作っているんよ」

「おいハンブルドーン、それは企業秘密だろうが」

「別に大したこともではないし、別に良いじゃねぇかエルフルニア13世。大体、誰かが気が付けば実行するだろうしな」


 エルフルニアが諫めるかのように言った言葉に、ハンブルドーンは笑ってそう答えた。



「ガスを吹き込んでか‥‥‥待てよ?」


 その話しを聞き、ふとルースはある案を思いついた。


「そうだ、もしかしたら出られるか?でも、下手すれば大事故だしな‥‥」

「何か思いついたの?ルース君」


 ルースのつぶやきを聞き、エルゼが問いかけてきた。


「ああ、今のハンブルドーンさんの話をヒントに思いついたんだけど‥‥‥もしかしたら脱出可能かもしれないけど、最悪の場合爆死になる案を考えた」

「爆死!?」

「一体なにをどうやってそうなるんだ?」

「それはだな…‥‥」


 ルースの案に、皆は耳を傾けて聞いた。


 そして、その案の内容に驚きつつも、可能性があるならばということで賭けることにしたのであった…‥‥


ハンブルドーンの話を元に、ある脱出方法をルースは考えた。

確実に自分たちを飲み込んでいるモンスターを浮上させ、空中に出してから脱出できる方法を。

だが、それと同時に爆死するリスクもあり、それでも一か八かの賭けに出てみるのであった。

次回に続く!


……火や水、闇、光、土、木などを使って来たけど、魔法はそれだけの種類にとどまらない。

水から氷、土から岩石や鉱石、光から癒しやレーザーなどあるように、使いようによっては多種多様な分岐があるのです。

というか、次回使う予定の魔法って、本当はもう最初の方に出す予定だったものでもある。タイタニアあたりで出したかったのに、存在を忘れていたというべきかね。

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