128話
大雪で、雪かき大変、マジ疲れる。
……本当に地球温暖化しているのか、疑わしい。
バルスレイド軍港。
海軍が船の置き場にしている港だが、そこから離れた場所に設立されたビーチは、絶景の観光スポット。
そのビーチに今、ルースたちは訪れていた。
「もうそろそろかな?」
浜辺にて、先に着替えたのは良いのだが、エルゼ達が着替え終わってくるのをルースは待っていた。
辺りを見渡してみても、貸し切りになっているせいかいるのは自分だけであり、何処か贅沢さを感じさせる。
「にしても、やっぱり海は広いなぁ‥‥‥」
待っているのも暇なので、水平線を眺めてみたが…‥‥やはりどこの世界の海もかなり広い様だ。
しいて言うなれば、モンスターが泳いでいるというのが特徴であろうか。
危険性は余り無いそうだが、中にはとんでもなく危険なモンスターも海には生息しているらしい。
だがしかし、そういったものに限って沖合にしかおらず、こういった浜辺の方には何もいないのが現状である。
流石に、観光にきてクラーケンとかシーサーペイントとかそう言った類に襲われるのは勘弁したいからね。
「おーい、ルース君!」
「待たせたなー!」
―――――着替エタヨー!
と、気が付けば着替えを終えて水着になったエルゼ達が声を上げながら駆け寄って来た。
「お、来たな」
見てみれば、皆きちんと水着だが…‥‥年頃の男の子としては、来るものがあった。
エルゼの場合、フリルのついたビキニタイプで、意外と言うかそこまで露出が多いものではないが、その分彼女にしっかりと似合っている青い水着。
レリアの水着だと、こちらはパレオのような形状であるが、胸部の破壊力がすさまじい赤い水着であった。うん、これ以上見ていたらエルゼの方から冷気が来るからやめておこう。
そしてバトの場合、彼女のサイズにあう水着があるのか気になっていたが、こちらは小さめのスクール水着のような形状であった。‥‥きちんとゼッケンで「とば」となっているけど、これって確か右から読むんだよね?
と言うか、誰が用意したのだろうか、そのミニサイズの水着…‥‥‥まぁ、気にしない方針でいこう。
とにもかくにも、皆でそろって海で遊ぶことに。
「せっかくだし、タキも召喚しようかな」
泳いでいてふと思ったが、こういう時は彼女も呼んだほうが良いだろう。
ただし、水着にされると‥‥‥大人だし、一番やばそうなので狐の状態でいてもらって浮き島代わりになってもらうか。
「『召喚タキ!』」
魔導書を顕現させ、召喚魔法の発動と同時にタキが現れる。
【おおお!海じゃあぁぁあぁぁ!!】
どことなくテンション高くタキがでたが、彼女の出現したポイントは海の真上。
しかも、巨大狐の身体のままなので……
ドッボォォォォォォン!!
一気に海水が押し出された。
「うわぁぁぁあ!?」
「ごぼべっつ!!」
「しょっぱぁぁぁぁ!!」
―――――ヤッフー!
一気にはじき出された水が飛び散り、高い波を発生させてルースたちを巻き込む。
口の中に入ったりしてしょっぱさを味わったが、約一名サーフィンで難を逃れていた。
「って、バトってサーフィンできたの!?」
―――――ミニサイズサーフィン!
きりっと格好つけていたが、意外な彼女の特技を見たような気が、
「あ、羽でごまかしているわね!」
―――――バレタ!
…‥‥どうやら背中の羽で飛んで、波に合わせて動いていただけのようである。
何にせよ、海での遊びは楽しい。
「とはいえ、泳いでばかりでもなく、こうやって砂の城を作るのも面白いな」
「魔法だと一発で出来そうよね」
「いや、それじゃ意味がないだろ」
一旦泳ぎ着かれたので、今度は陸地での遊びに変更。
砂浜でやるとすればビーチバレーやフラッグなんかもありそうだが、生憎そのどちらも人数や道具の問題状、できない。
ゆえに、砂のお城を作って競ってみたが‥‥‥‥
「た、タキ……それどこの城だよ?」
【のじゃっ?ふふふふ、これは東方の奥地で見かけた城を思い出して作ってみたのじゃよ!】
「こういう城ってあったかな?」
「いや、ないだろうな…‥‥しかし、どうなっているんだこれ?」
―――――奇跡ノバランスヲ保ッテイルヨ。
人型になって、ついでに合わせてスリリングショットとかいうらしい大胆な水着を着たタキが作ったのは、どう見てもバランスがおかしい砂の城。
三角、立方体、球体、月みたいな形の立体など、様々な形が合わさって、どう見たって現実にはあり得ない構造で、崩れてもおかしくないのに、しっかりとその砂の城は立っていた。
一体なにをどうやってこうも崩さずに作れるのやら……しかも、9本の尻尾も器用に動かして、更に積み重ねていくから見離せない危なっかしさでも、バランスよく崩れることがなく組み立てられていくのはもはやカオスであった。
と言うか、まずそれは城なのか?東方に本当にそんなのがあるのか?
疑問がありつつも、気にしたら負けかと思って気を取り直そうとしたその時であった。
「-------って!!」
「ん?」
ふと、誰かの叫び声が聞こえた。
「あれ?レリア、ここって今貸し切りだよな?」
「ああ、そのはずだが…‥‥今のは沖合から出し、誰かが入って来たのだろうか?」
沖の方を見てみると、何かがものすごい水しぶきをあげて接近してきていた。
手漕ぎの船に乗っているようだが、物凄い勢いである。
人数は3人ほどなのだが、その顔は必死であった。
「なんだ?」
「助けてくれぇぇぇぇ!!」
「ひえぇぇぇぇぇ!!」
「なんでここにこんなのがぁぁぁぁ!!」
近づいてくるにつれ、助けを求める悲鳴なのはわかる。
だがしかし、一体なにがそこまでして必死にさせているのか疑問に思ったその瞬間であった。
ザッパァアァァァアン!!
【ブモアァァァァァオォォォォォォォ!!】
「いっ!?」
「何なのよあれ!?」
その船の後方から、何かが勢いよく飛び出し、それを見てルースたちは驚愕した。
全体的にのっぺりとした謎の物体だが、よく見れば頭部らしい部分にいくつもの目玉が会った。
大口を開け、その中には牙が無数にあり、その雄叫びは周囲を震わせる。
「フェイカーのモンスターか!?」
【いや、違うのじゃ!!臭いが野生の奴じゃ!!」
一瞬、フェイカー製の怪物かと思ったが、タキいわく臭いが異なるようで、今回は関連がない奴のようだ。
だがしかし、それでも脅威な存在なのは間違いないだろう。
【ブモガワアァァァァァァァ!!】
っと、水上に飛び出てきたその謎のモンスターは大口を全壊し、雄たけびを上げた後すごい吸引力を発生させてきた。
「うおっと!?す、吸い込まれる!!」
「きゃぁぁぁぁ!!引っ張られるわよ!!」
「あいつ、陸地の私たちまで吸い込む気だぞ!」
「どわぁぁぁあ!!」
「ひぎゃぁぁぁ!!」
「うわあぁぁぁ!!」
船に乗っていた3人はそのモンスターに吸引されて口の中に入った。
そして、陸地のルースたちも狙っていたようで、吸引力は弱まらない。
「ぐっ、ダメだ、吸い込まれるぞ!」
【のじゃああぁ!!これは流石に耐えられんのじゃ!】
踏ん張っていたのだが、ルースたちも砂浜から浮き上がり、そのまま吸い込まれた。
口内にある牙は意味がないのかよと思いつつも、ルースたちはそのモンスターの体の中へと飲み込まれるのであった‥‥‥‥
海に現れたモンスターに飲み込まれたルースたち。
某ピンク玉にも劣らぬ吸引力は、某掃除機をほうふつさせる。
とはいえ、ふざけている場合ではないのは明らかであった。
次回に続く!
……作中の夏が来て欲しい。これ執筆時点で大雪なんですが。