125話
ここ最近、某黒鉄の城ネタを出したい意欲が上昇。映画も出るようだし、行きたいけど機会がない。
……書いている暇があるのに、行けないとはこれいかに。何とかしていこうかな?
「ああ、なんてことだ」
「畜生!!今日こそあの皇妃様が負けるところを見れたかもしれなかったのに!!」
「無茶苦茶と言うべきか、誰があの人に勝てると言うんだ……」
訓練場をエルゼ達が後にする際に、兵士たちの声が聞こえてきた。
その声を聞き、普段皇妃がどれだけ無茶苦茶なのか理解しつつ、ルースを見るエルゼ達。
「‥‥‥」
「ルース君、まだ気絶しているわね」
「流石に最後の一撃が効いたのだろうか」
―――――主様、痛イ痛イノ飛ンデイケー。
未だにぐったりと気絶したルースを担架に乗せ、運ぶエルゼとレリア。
バトは体の大きさから運べないので、ルースの頭にできた見事なたんこぶを撫でていた。
「ふふふふ、でもなかなか強かったわね」
剣をしまい、真っ赤な鎧を着たままにこやかな声を出すルーレア皇妃。
先ほどまで激しい戦いであったはずなのに、全く疲れた様子がなく、どれだけ化け物じみているのかエルゼたちは理解した。
「母上……私の客人をこんな目に遭わせてしまうのは、いささかやり過ぎじゃないでしょうか?」
ルーレア皇妃に対して、気絶したルースの状態を見ながらレリアはそう声を出した。
「ん?ふふふふ、これぐらいでも男の子ならば大丈夫だと経験上理解しているのよね。‥‥‥数名ほど逝った子はいたけど」
「ちょっ!?」
「今何か物騒な事を言いませんでしたか!?」
―――――聞カナカッタ事ニシヨウ。
「それはともかくとして、この子は筋が良かったわね。魔導書の力だけでここまでやってくれたのは良いけど‥‥‥個人的には、まだ隠していそうな力まで引き出せたら面白かったかも」
くすくすと笑うようにルーレア皇妃は言ったが、ならばなぜそこまでしないのだろうかと、エルゼ達は思った。
「えっと‥‥‥ルース君が本気を出せばもっと強いですけど、それでも戦う気だったのでしょうか?」
「ふふふふ、当り前よ。まぁ、なんとなく戦っているうちにどれだけの力量なのか予想できたのだけれども、そしたら全力で何もかもさらけ出してやられた場合、対応できてもこの辺り一帯が荒野になる未来になるしか思えなくて、勝負を早めに終わらせちゃったと言うのもあるのよね」
「対応できてもって……」
「むしろ、対応できている時点で相当なんですが‥‥‥」
―――――コノ人、人間?
ルーレア皇妃の言葉に、エルゼ達は苦笑いを浮かべる。
だがそれと同時に、バルション学園長のライバルと言うだけはあると納得もできていたのであった。
「にしても、これだけの子って成長すればするほど強くなるわね…‥‥育てがいのある子だし、帝国に欲しいわね。あ、そうだレリア、貴女のお婿さんにでもどうかしら?」
「ぶっ!?」
「だ、ダメよ!!」
―――――イキナリ何ヲ言ウノ!?
突然放たれたルーレア皇妃の言葉に、エルゼが噴き出し、エルゼとバトは慌ててそう反論した。
「ふふふふ、冗談よ。彼と交えて分かったけど、政略的なものには巻き込まれたくない感じがしたからね。何かしらの政治的な意図が見えたら、とっとと逃亡するのが目に見えているわ」
いたずらをしたような声でそう告げるルーレア皇妃に、エルゼ達はほっと胸をなでおろした。
「じょ、冗談だったのね」
「母上でも、そういうのは余り口にしてほしくないな」
―――――ホットシタヨ。
安堵の息を吐き、落ち着いたエルゼ達。
けれども、彼女達を見ながらルーレア皇妃はにやりとその兜の中で笑みを浮かべた。
それは、何かいたずら御思いついたかのような、質の悪そうな笑みであった…‥‥
「‥‥‥で、ここが客人用の部屋ね」
「ああ、そうだ」
一旦ルーレア皇妃と別れ、とりあえず本日は客人として招かれているので、エルゼ達はレリアの案内によって、城内にある客人用の客室に案内された。
担架からルースをおろし、部屋にあるベッドへ寝かせる。
「案外、立派な部屋ね」
「ああ、一応他国からの客が泊まったりするから、国の面子もあって豪勢にはしてあるんだ」
部屋の仲を見渡し、エルゼの漏らした感想に、レリアは答える。
「‥‥‥待てよ?ルース君とあたしは客人扱い‥‥‥つまり、この部屋で一緒に寝られるってことよね?」
ふと、その事を思いつき、エルゼはレリアに尋ねた。
「残念ながら、エルゼは別室だ。ここは男性用だからな」
「何よ?同室にしなさいよ!」
「二人っきりにして置いたら確実に色いろいろやらかすのが目に見えているんだよ!」
レリアの言葉にエルゼが反論したが、レリアも負けじとばかりに言い返す。
「大体ね、あたしとルース君が一緒で何かまずい事でも起こすように思えるの?」
「思える」
「ほぼ断定したわね‥‥‥だったらそうね、貴女も一緒にあたしの部屋に泊まりなさい」
「はぁっ!?ここは私の実家でもあるんだぞ!?自室があるのに、なんで一緒に寝なきゃいけないんだ!」
「ふーん?そんなこと言って、ルース君が寝ている間に潜り込んできそうじゃない」
「いやいやいや!!そんなことは…‥‥しない!」
「今、一瞬だけ間があったけど?」
エルゼの言葉に、うっ、とうめくレリア。
「‥‥‥だったら仕方がない、私も一緒に寝てやろうじゃないか!ルースの元へ夜這いするのを防止する目的でな!」
「面白い、こちらも貴女が変に動かないか見てやろうじゃない!!」
ぐぬぬぬ、っと互に火花を散らすエルゼとレリア。
―――――アレ?私ハ?
「バトはあたしたちと一緒よ!」
「抜け駆けは許さん!」
バトの問いかけに対しては、同時に答えるのであった。
ちょうどその頃、模擬戦も終え、鎧のメンテナンスのために、自室に戻って脱いでいたルーレア皇妃。
「ふふふふふ、中々将来性のありそうな人が来るなんて、面白い日だったわね」
鎧を磨き、細かな傷などはしっかりと修復させていく中、ふと自身の娘の様子を思い出す。
「にしても、婿にと言った時に娘は動揺していたけど…‥‥恋心があるのはお見通しよ」
母として、レリアの心はお見通しであった。
「でも、他にいた少女、確か公爵家のエルゼって子も、妖精のバトって子も同じくあのルースって子を想っているのは間違いないわね。我が娘、ライバルが多そうだけど、こういう時こそきちんと自信を見せセルべきよ」
レリアの事を想い、そうつぶやくルーレア皇妃。
と、ここでふとあることを思いついた。
「そうだわ!確か、侍女たちが読んでいた恋物語に使えそうなものがあったはずね。母として、そのあたりはしっかりと面白がって、いえ、サポートしてあげないとね」
そう言いながら、ルーレア皇妃は手回しをし始める。
それは、純粋に母としての想いからか、それとも面白そうな事ゆえに刺激を与えてみようと考えていたからか。
とにもかくにも、この夏休みの間にできれば平穏にと考えていたルースの思いは、この瞬間にぶち壊されたも同然であった‥‥‥‥
…‥‥ルースの平穏という想いは、誰かしらの都合によって破壊される。
今回は、娘のためにという想いと、面白そうなという想いを持つとある人物によるものであろう。
果たして、一体どうなることやら……
次回に続く!
そういえばルーレア皇妃の素顔ってまだ描写してないな。赤い鎧しか出てないじゃん。