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122話

緊張感は、国王の時よりも高め。

…‥‥モーガス帝国の王城、その一室である謁見室にて、ルースたちは待機していた。


 レリアの客人として、一度挨拶をしておくべきらしいのでそれに従ったのだが、やはりこういう場ではどこか緊張したような雰囲気を感じさせた。


 王国で国王の方に謁見するときも緊張はあったが、こちらの方がその度合いがはるかに上である、


 何しろ、これから謁見するのは、今は政治などの方面に重点を置くゆえに「学王」と呼ばれている皇帝だが、ひと昔前は戦場でとてつもない猛威を振るったとされることから「殲滅王」とも呼ばれていた相手なのだ。


 前者の呼ばれ方は良いが、後者の呼ばれ方は物騒過ぎる。


 そう思うと、ルースは緊張が高まるような気がした。


 ちなみに、ポケットの中にバトが入っているのだが、現在熟睡中のようである。


 どういうわけか、ここ最近よく寝るようだが‥‥‥睡眠不足なのだろうか?ちょっとやそっとじゃ起きないので、このままポケットの中に入れてはいるが、流石に就寝時や入浴時には目が覚めて出てくれるから助かっている。




 と、考えている間に謁見室に皇帝が入って来た。


 いかにも歴戦の猛者のような雰囲気を纏い、まさに皇帝と言っていい威圧感を放ち、その眼光は奥底まで見通すほど鋭いものである。


……中途半端な髭さえなければ完璧だったかもしれない。ちょっと惜しいというべきか、間違えて付いたパーツというか、残念さを際立たせるというか。





「‥‥‥さてと、久し振りだな、娘よ」

「はっ、久し振りですお父さ、コホン、皇帝陛下」


 お父様と言いかけたレリアであったが、言い直した。


 というか、ここに来るまでは父上と言っていはずだが、お父様と言うほうが素なのだろうか?


 例えで言うなれば家の中では「パパ」「ママ」と言うのを、外では「お父さん」「お母さん」と言い直す感じなのだろうか?




「そして、その後ろにいるのが…‥‥娘の友人たちか。世話になっているようだな」

「は、はい」


 そして、レリアに目をやってからすぐに皇帝はルースたちの方へ目を向けた。


 鋭い眼光は威圧感があり、どこか見定めをされているような感覚になる。


 蛇に睨まれた蛙とも言えるというか、威圧感がすごい。


……でも、激怒したエルゼとかに比べればはるかにましかもしれない。


「ルース君、今何か失礼な事を思わなかった?」

「い、いや何も?」


 ぼそりとつぶやいたエルゼの言葉に、どきりとしつつルースはそうごまかした。


 心を読まれたのか、はたまたは地獄耳的な何かで感じたのだろうか。




「ふむ、確か風の噂で聞いたな。グレイモ王国で見つかった、黄金の魔導書(グリモワール)の所持者だったか」


 ルースを見ながら、皇帝はそうつぶやいた。


 すでにその情報は色々とばれているようだし、ただ風の噂に聞いたわけではなく、諜報などを使って調べてはいるのだろう。



「はっ‥‥‥その通りです」


 一応、返答しておく。


 ここで虚偽やごまかしは意味ないだろうし、正々堂々としている方が気が楽になる。


 と言うか、威圧感が強い。あの中途半端な髭のせいで半減しているが、それでも結構くる。




 だがしかし、その威圧感から、なんとなくルースはあることを納得していた。


 これだけの厳格そうな皇帝が親であれば、その娘や息子であろうと影響を受けるであろう。


 ゆえに、レリアはイメージにあるお姫様といった雰囲気を纏わず、戦姫と言っても間違いない雰囲気を纏っているのであろう。



 そう思いつつも、何とか謁見を終えられそうなその時であった。





ズバシュッツ!!


「ん?」



 何かが切り裂かれた音がしたので、その音の方へ室内の全員が見た。


 壁に何やら切れ目が入って…‥‥崩れ落ちる。



ガラガラガラガラ!!


 綺麗に切り裂かれて崩れ落ちた壁の向こうから出てきたのは、全身真っ赤な鎧に包まれた人物である。



「お、お母さ、母上!?」


 言い直しつつも、驚愕した表情でレリアがそう叫ぶ。



「あらあらー。報告通り帰ってきていたのね、レリアー!」


 うれしそうな声で、その鎧の人物はそう声を出した。


…‥‥レリアの母。つまり、現皇帝の妻と言うわけで…‥‥皇妃だろうか?



「な、な、何をいきなり壁を切り裂いているのだ、ルーレア!!」


 思わずと言った感じで、皇帝がそう叫ぶ。


「だって、娘が帰って来たと聞いたら、いてもたってもいられなくなっちゃって、一直線に向かったのよ」


 そう言いながら、真っ赤な鎧の人物……レリアの母親であり、皇帝の言葉から知ったルーレアと言う名前の皇妃は、手に持っていた剣をしまうのであった。


 一直線って、もしかして文字通り突き進んできて、壁とかを切り裂いてきたのだろうか?



 そう思いながらよく見れば、その背後の方に、いくつかの障害物とみなされて斬られた壁を確認できたのであった。


…‥‥修理費とか高そうである。と言うか、本当にこの世界の女性はまとも人がいないのだろうか?



 少々嘆きたくなったルースであったが、同時に、ふと嫌な予感を覚えたのであった。






女難というべきか、明らかにめんどくさそうな皇妃が出てきた。

皇帝が苦労していそうだなと思いつつ、嫌な予感を覚えるルース。

こういう時に限って、何でその予感は当たりやすいのだろうか?

次回に続く!


…‥‥剣で石やレンガの壁を切り裂けるだろうか?それなりの腕前がないと難しそうである。

某斬鉄剣の人とかはできそうだけど、現実的には無理に近いかもね。

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