11話
簡単な学園説明回。
入学式の後かな。
‥‥‥ガラガラッと教室の扉が開かれ、がっしりとしたいでたちの男性教師が入って来た。
「えー、わたしは今日から諸君らのクラスの担任になるデイモンド=レイダーだが‥‥‥みんな意気消沈していないか?」
「「「「「そりゃ、しますよ‥‥‥」
デイモンドの声に、教室内にいた生徒一同はぐったりとしながらなんとか返事を返した。
ルースも、エルゼも、他のクラスメイトも、今年度入学した新入生一同、同じ状態である。
入学式の際に、学園長が行った魔導書による攻撃での対処テスト。
辛うじて生き延びたり、保険室にて治療を受けたものたちでも、精神的疲労がすさまじかったのである。
‥‥‥そのあまりのぐったりとした様子に、デイモンド先生は皆に励ましの声をかけた。
「あー、うちのあの学園長は、毎回何か行事があるごとに突拍子もないことをする人だ。一応、魔導書を手に入れたからって得られなかった人よりも偉いとかそういうおごりを捨てさせたり、貴族と平民が入り混じるがゆえに、ある程度の暗黙の了解はあれどもこの学園ではみな平等だという事を知らしめるためにやらかすそうだが‥‥‥少なくとも、悪い人ではない。多分」
全然フォローになっていないような言葉に、ますます教室内の空気が重くなった。
少しずつ皆が回復してきたところで、デイモンド先生はこの学園についての説明をし始めた。
入学式の最中にやってくれそうなものだが、あのテストのせいでほぼ出来ていなかったのでこの場で簡潔にやってくれるらしい。
「さてと、まず本校の軽い説明から行おう。ここでは、この魔導書の扱い方や、制御方法、鍛錬で使える魔法などを増やしたりしつつ、学力や体力を高めるために座学や普通に体育などの授業もあるのだ。簡単に言えば、魔導書を手に入れられなかった者たちが通う教育機関に、魔導書関係の授業がぎっしり詰め込まれたようなものである」
デイモンド先生は最初に、黒板に書きながらこの学園についての簡単な説明を行い始めた。
この学園は、このグレイモ王国内で魔導書を叡智の儀式によって得た者たちが集い、学んでいく場所。
ただ、魔導書に関してだけ学んでも意味がない。
そういうわけで、普通に数学や歴史といった座学関係の授業もきちんとあるそうだ。
ただし、家庭に関しては、希望制かつ審査を受けないと受講できない科目らしい。なんでも鍋を溶かしたり、普通に作っていただけなのになぜか得体のしれない化け物が誕生したりなど、摩訶不思議な事をやらかした生徒が過去にいたのが原因だとか。ジャ○アン超えか??
しかも、この学園にはなんと7不思議があるそうで、そのうちの一つがその家庭の時に生まれた生物らしいとか…‥‥ホラーじゃん。
「テストは中間、期末とあり、学力だけではなく魔導書でもその知識や使える魔法の制度などによるものもある。成績が思わしくない場合は補習がたーっぷりあるからな」
補習の言葉を聞き、学園長のテスト時のトラウマを思い出したのか一気に皆の気が引き締まった。
下手したら補習が、あの無茶苦茶な学園長によって行われるかもしれないからである。
あの地獄は一度でいい。本気でもう二度と味わいたくない。
その思いは、全員一致していたのであった。
「そして、夏休み、冬休み、春休みの期間もあるが、この学園からの距離を考えると数日から数週間かかる者たちもいるので、そこそこ長めになっている。ただし、宿題も出るので要注意だ!!忘れた場合は…‥‥確か、去年の新入生だっけか、見事にまったくやっていないサボりが出て、学園長が自ら丁寧に染みこむように教えていたな」
(((((染みこむようにってなんだそれ!?)))))
クラス内の心の声が再び一致。
少なくとも、ろくでもない目にしか遭わないというのは十分理解できた。白い魔導書をあの学園長は持っていたし…‥白は確か、光に関する力以外にも、癒しに関する力を持つよな。となれば‥‥‥いや、考えるのはやめよう。誰も幸せになれないのが分かっている。
そんなこんなで校則などの説明を受けつつ、その他の説明へとはいっていく。
「さてと、皆にはもう入学する際に一人ずつ鍵が渡されただろうが、それはそれぞれの寮での部屋の鍵だ。男子寮、女子寮と分けられているのは理解しているだろう?一応、間違いなどが起こらないように、許可をもらわない限りは互いに入館を禁止されているので、違反した場合は学園長から直々の説教が待っているぞ!!」
「「「「「絶対に間違いも起こしませんし、説教をくらいたくありません!!」」」」
デイモンド先生の言葉に、思わず声を出すクラス一同。
許可をもらって防犯設備を充実させることもできるそうなので、念のためにその説明をルースは真面目に聞いた。‥‥‥身近にストーカーな幼馴染がいるからね。
「寮暮らしとなるが、基本的に食堂は無料だから食べる分には困らないだろう。ただし!!限定メニューなんてものもあって、昨年それを獲得するために行列を魔導書の魔法でふっ飛ばしたものがいて、学園長に『ドキッ!色々大暴露させまショー!!』なんて言われて、その人の黒歴史を延々と暴露されまくるというお仕置きもあったから、出来るだけ争わないように!!」
‥‥‥本当に、この学園って何かしらの問題児がいるな。
というか、的確に人の心をえぐっていくな学園長。先ほどから、学園長の恐怖しか聞いていないような気がする。
「さてと、これは担任であるわたしから皆に、絶対心に刻んでほしい教訓がある。刻まれず、忘れてしまえば‥‥‥人生が終わるかもしれぬ」
「「「「「その教訓とは?」」」」」
重い声で、デイモンド先生がそう言ったので、皆が尋ねた。
「‥‥‥『学園長に隙を見せるな』!!どこかでやらかした時にでも、その隙をついていろいろとやられるからな!!」
「「「「「は、はい!!」」」」」
物凄い、どこか既に味わっているようなデイモンド先生の言葉に、皆は本当に心の底からその教訓を誓うのであった。
あのテストのような地獄がありそうなので、もう見たくもなかったから‥‥‥
‥‥‥この学園、本当に大丈夫なのだろうか?
なんとなく、ルースはそう不安を覚えるのであった‥‥‥
‥‥‥学園長、それはここでの恐怖の代名詞でもあるようだ。
あらためて、その脅威をクラス一同感じ取り、デイモンド先生の教訓を心に刻む。
だがしかし、刻んでいても防ぎようのないものがあるのだ‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥なんだろう、作者の作品の学園長でとんでもない人が再び出来たような気がする。




