112話
ちょっと短め?
今回は主人公からエルゼたち視点です。
※時間補足(細かい修正もいれる予定(あくまで予定))
徹夜後、翌日の朝からメルドランへ→星が出てきた頃合いで到着。
そのまま勢いでエルモアの家→村へGo
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‥‥‥深夜、去年の夏の帰郷時に比べると早くバルスト村へとエルゼたちはたどり着いた。
タキに乗っていたのだが、今回はルースの目覚めに関わる緊急事態であり、いつも以上の速度が出ていたからであろう。
とはいえ、時刻は丑三つ時でもあり、普通ならばこの時間帯に押し掛けるのは非常識であろう。
だがしかし、都合のいいことにというべきか、ルースの母は村のバーの経営者‥‥‥深夜営業を行っており、この時間でも空いているはずである。
「あった!!」
「灯がともっているし、営業しているのは間違いない!」
すばやくバーを見つけ、明かりがともっているのをレリアが確認し、大急ぎで中に入った。
「あら、こんな遅くにいらっしゃ、え?エルゼちゃん?」
中に入ると、営業用の店主の格好をしていたルースの母アバウト=ラルフが接客の笑顔を見せたが、入ってきたエルゼの顔を見て驚いた。
季節的にはまだ春のさなかであり、夏休みというわけでもない。
帰郷してくるならその知らせが事前に来るはずだろうし、それらがなかったから、疑問に思ったのだろう。
「一体なんでここに…‥‥っ!?」
そのすぐ後に、アバウトの目は大きく見開かれた。
エルゼに続けて入って来たのは、人型の姿になってルースを背負ったタキであり、その背中に背負われているルースの姿を見て、動揺したようである。
そして、何が起きたのか、なぜここにエルゼたちがいるのかを瞬時に理解したようで、真面目な顔つきに変わった。
「‥‥‥事情は大体察したわ。とりあえず、まずは家へ来なさい」
すばやく店じまいをして、アバウトは家へエルゼたちを入れたのであった。
ルースの自室にそっとタキはルースを下ろして寝かせる。
そして、ルースの様子を見たアバウトはなにやら考え込むようなそぶりをした。
「これは‥‥‥完全に、封印が解けているけど、生み出しているエネルギーよりも、消費するのが多くて昏睡状態に陥っているような感じかしらね」
「説明よりも早く理解するなんて・・・・・」
「只者ではないということか」
アバウトの推測した言葉の正しさに、驚くエルゼ達。
「で、なんでこうなっているのかしら?」
にっこりと微笑みながら、そうアバウトは尋ねてきたが・・・・・・・・どこか、有無を言わさない雰囲気であった。
「えっと、その、色々あってね…‥‥」
エルゼたちは話す。
自分たちも常にその場にはいなかったので、ルースの証言であった内容を。
フェイカーの幹部であったミルと戦闘し、そこで負けて心臓を金棒で潰されたことを。
そして、死んだと思われた後に、復活し、いつの間にかこの状態…‥‥半分精霊の状態で蘇ったことを。
「ルース君が精霊状態とでもいうべき身体になり、そのあとはなにやらややこしい抗争に巻き込まれ、何とか合流し、とりあえず元凶の幹部さんをちょっと廃人にして、締め上げましたけど‥‥‥」
「しばらく経ってから、今の状態になったというわけね…‥‥まぁ、まずはその幹部を廃人にしたのはよくやったといいたいわ。母親としては、あと2,3発は殴らせてほしかったけれどね」
何気に物騒な事を言うアバウト。
「で、時間が経過して、今の状態というわけね…‥‥もう少し、早く来てくれればまだよかったのにね」
「もう少し早くというのはどういうことですか?」
アバウトの言葉に、レリアが尋ねる。
「…‥‥そうね、この状態になると、起こすのに少々大変なのよ」
【大変…‥‥って、そのようなことを、そもそも何故お主‥‥‥召喚主殿の母親が知っているのじゃ?もしかすると、まだ見ぬ父殿が精霊だったとか】
「いえ、それは違うわ」
【え?】
タキの問いかけに、アバウトは首を振った。
「この子の父親は精霊じゃなくて…‥‥人間よ。精霊なのは‥‥‥いえ、精霊『だった』のは私の方なのよ」
「「【!?】」」
アバウトの言葉に、エルゼ達は驚愕した。
てっきり、ルースの父親の方が精霊だったのかもしれないと思っていたのだ。
と、ここでふとバトがあることを思い出した。
―――――ソ、ソウイエバ!!
「どうしたのよ、バト?」
―――――前ニ話シタケド、私ノ名前ノ由来ッテ精霊王ノ娘カラアヤカッテイル!!『バト』ガ私ノ名ダケド、確カ、アヤカッテイルソノ娘ノ名ハ‥‥‥『アバウト』ダヨ!?「ア」ト「ウ」抜ケバ同ジダヨ!?
「まさかっ!?」
「ということは!?」
バトの言葉に、エルゼ達は驚愕した。
「あら、その妖精さんよく知っているわね」
【えっと、その‥‥‥母殿、つまり、お主は…‥‥】
「ええ、『アバウト=ラルフ』の『ラルフ』は夫の性。結婚前は、精霊王の娘であった『アバウト』。つまり、精霊だったのよ」
「「【―――――ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?】」」
まさかの精霊王の娘という言葉に、エルゼ達は驚愕の声を上げたのだった。
つまり、アバウトは精霊王の娘であり、ルースは精霊王の孫ということになるのだ。
「って、何故ほぼ過去形なの?今は精霊じゃないのですか?」
ここでふと、アバウトの言葉からエルゼはその事に気が付く。
アバウトはこうして見てみると、どう見ても人間のようにしか見えない。
そして、「だった」や「であった」など、もう過去のように話すことに疑問を覚えたのだ。
「んー‥‥‥話すと少々長いのよね」
エルゼの疑問に答えるべく、アバウトは過去を語りだす。
…‥‥ルースに関して、少々放置されているのは良いのかなと皆は思ったが、その話が気になったので、耳を傾けだすのであった。
語りだされるアバウトの過去。
精霊王の娘と言っていたが、それは昔の話。
一体なにがあったのだろうか。
次回に続く!
‥‥‥過去話に耳を傾けられたせいで、主人公の目覚めが少々遅くされそうです。良いのかこの物語の主人公がこんな扱いで?
まぁ、主人公よりも周囲の方が目立っている時点で、今さらと言う話かもなぁ。