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111話

今回から、やや重要部分に踏み込むかな?

「…‥‥あはははは、あははははあ」


「脈拍は平常だーけど、完全にアウートだーね」

『‥‥‥廃人と化しているんだけど、何をやったんだ?』

「えっと、それはねぇ」

「なんというか、少々やり過ぎたというべきか」

【ちと、色々いじくりまわしたというべきじゃろうか、それとも精神的にヤってしまったというべきじゃろうか】

―――――テヘッ☆



 文字通り真っ白になり、魂が抜けたような状態になって笑うミルを見て、ルースはエルゼ達に尋ねたが、彼女達は顔をそむけたり、舌を出してごまかしたりと何をしたのかという真実は告げなかった。


 特に目立った外傷はないのに、ちょっと触っただけで灰になって消えそうである。…‥‥なんだろう、このこっちがやらかしてしまった罪悪感は。



 尋問で徹夜しちゃったようだが、やり過ぎじゃなかろうか。



『ここに墓標でも置いてあげるべきだろうか?』

「いやー、そーれはやめて、きちんとしかーるべきとーころに連行すーるよ」


 もはや何を聞いても無駄なような気がするが、一応彼女はフェイカーの幹部だったということもあり、とりあえず簀巻きにしてからタキの背中に乗って、ルースたちは都市メルドランへと帰還することにした。



「あはははは‥‥‥平和って良いアルねぇ、あははははあ・・・・」

『これ、本当に大丈夫かな?』

「‥‥‥さーあ?」


 うつろな表情で、力なく笑うミル‥‥‥なんかこう、敵だというのにいたたまれない状態だよ。


 これ、元に戻るだろうか‥‥‥‥?










 とにもかくにも、タキに乗って都市メルドランへ帰還し、ミルをしかるべきところとやらへ引き渡した後、ルースたちはエルモアのところへ来ていた。


 理由は、ルースの今の状態についての検査である。ちなみに、バルション学園長はその引き渡しで手続きを行うために、後から来るそうだ。


 普通に病院へ行っても良いのかもしれないが、この透けた金色の状態は医術的に解明できなさそうなので、こういうことに関してはエルモアの方が詳しいとタキが言ったためである。







「‥‥‥ふむ。確かにこれは人外化というべきか、人間を辞めた状態と言って正しいだろうな」


 診察し、エルモアがそう告げた。


『やっぱりそんな感じですか・・・・・』


 理解したくなくとも、なんとなくで分かっていたために、こうやって言葉に出されると少々きつい物がある。



「しかしながら、この体の状態で透けたように見えているというのは興味深いな。人間を辞めたとしても、こうも光が中途半端にすり抜ける様な肉体というのは、中々みられるものではないな」



 グイッとルースの腕をまくり、興味深そうにつんつんしたりして触るエルモア。


「実体もあるが、やや通過できそうな部分の特性…‥‥これはもしかするとだが…‥‥」

【ん?何かわかったのかのぅ?】


 ふと、何かを思い出したかのように奥の方へ行き、少し経ってエルモアは何か一冊の本を持ちだしてきた。


 物凄く分厚くて辞書の比ではなく、例えで言うなれば一般的な通販の段ボールサイズほどである。


「えっと、確か3456Pの‥‥‥これだな」


 エルモアが指し示したのは、ある種族についての説明であった。


―――――アレ?コレッテ‥‥

「バトに話してあげていたはずだな。これは『精霊』に関する記述だな」

『精霊?』


 興味深く思い、皆でその内容をきかせてもらう事にした。



―――――――――――――――



…‥‥精霊。それはこの魔法や魔導書(グリモワール)がある世界でも不思議に思われ、謎が多い存在。


 人間、モンスター、魔族のどの種族にも当てはまらず、妖精たちに性質が近いようで異なる存在だが、あこがれの存在ともされる。


 最も、彼等に近いのは神だというが、それでも不明な点が多い。


 残っている記述には、様々な物がある。




 温暖と極寒をもたらし、


 緑の恵みと大地の枯渇をもたらし、


 希望と絶望をもたらし、


 光と闇をもたらし、


 創造と破壊をもたらすという、表裏一体の存在だということである。



…‥‥だがしかし、精霊の存在を直接目にすることはめったにできず、本当に天上の存在とも、幻の存在とも言われるほどである。


 また、精霊には不思議なことに魔導書(グリモワール)の持つ色‥‥‥赤、青、緑、黄、茶、白、黒の色に対応した属性を持ち、それらを統括しているのが精霊王という存在である。


―――――――――――――――





「…‥‥というわけで、彼等の詳細は不明な点も多いが、特徴として一つ大きく分かっていることがある」

『それが‥‥‥このなんか中途半端に透けている状態ってことですか?』

「いや、中途半端な幽霊っぽくて、実体もあるということだな」


‥‥‥そんな特徴で良いのか精霊って。



 そのエルモアの説明に、一同はそう思った。




―――――主様、精霊ニナッタノ!?


 バトが驚愕しながらそう叫ぶ。


「いや、半ば違うようだな。そもそも、精霊というのはその特徴もあるが…‥‥うん、やっぱり人間の名残があるから『半分だけ』精霊と言ったところだな。魔族でハーフエルフとか、ハーフヴァンパイアとかあるから、それに倣って言えば『ハーフ精霊』‥‥‥我ながら今一つだな」

【ハーフと言う言葉にこだわる必要性があるのかのぅ?】

「なら、『半精霊』と」

【…‥‥もうよい、センスがないのは昔から理解しておるから、そのあたりは後で話すのじゃ】


 エルモアのネーミングセンスの微妙さに、ポンとタキが肩を叩いて止めさせた。


 正直に言って、確かに微妙な言い方である。


『えっと‥‥‥半分精霊状態、半分人間状態ってことが、俺の身体の状態の説明であっているってことですよね?』

「そういうことだな。だが、一体何をどうしたら人間が精霊化するのか…‥‥興味深いな」


 まじまじとルースを見つめ、興味津々といった具合に診るエルモア。



「とにもかくにも、そのあたりの詳しい説明はまだできないな。どうだ、この際背霊化したことからいったん授業を休んで、24時間体制で観察・実験・研究を‥‥‥」

【やめておくのじゃよ】


 なにやら熱くなってきていたエルモアに対して、タキが尻尾で叩いて収める。


 慣れた手つきであったが、それだけ二人は互いをよく知っているのであろう。



「とにもかくにも、その状態でずっといるというのはまずいな」


 タキに叩かれた頭をさすりつつ、エルモはそう告げた。


『え?』


 

 ルースはその言葉に、何か嫌な予感を覚えた。


『えっと、それはどういうことでしょうか‥‥‥』

「ずっとこれまで人間で、そして何かしらあって半分精霊の状態になったわけだ。人外から外れた存在となったわけでもあるのだが…‥‥それでも、急激な変化によって引き起こされただけにすぎず、まだ完全に体が出来上がっていないようなものであるな」

【何が言いたいのじゃよ?】

「つまり、このまま放置しておいて平然として過ごせそうにもないということだ」

『一体何がどういうこ、っ!?』


 何が言いたいのかよくわからず、ルースが尋ねようとした時、言葉が途切れ、そのまま倒れ込む。



「ルース君!?」

「ルース!?」

【召喚主殿!?】

―――――主様!・


 突然倒れたルースに、エルゼ達は慌ててその体を支えた。


『な、なんか急に体の力が‥‥‥』


 支えられつつ、ルースは体から何か力が抜けているような感覚を覚えた。


 その感覚はまるで・・・・・今までのフェイカー製の怪物を討伐する際に、一撃で倒す魔法を放った後に感じる倦怠感である。



『あ、だめだこれ‥‥‥眠い‥‥‥』


 そのままルースは意識を失った。






「ど、どうなっているのよ!?」


 突然倒れ、気絶したルースに対して、エルゼが叫ぶ。


「あの精霊状態‥‥‥力を使わず抑えていたようだが、それなりに体力の消費が激しいようだな。完全な精霊ならまだしも、半分人間の彼にとっては知らないうちに体に大きな負担がかかっていたのだろう。疲れを感じさせない状態でもあったが、ここに来て限界がきた。つまり、エネルギー切れで回復するまで目を覚まさないだろうな」


 要は、こうやって会話している間にもいつも以上の体力が消費されつづけ、身体が限界を超えたときにようやく疲労を認識し、安全のために自動的に眠ったというような者である。


「ただ、未だに精霊状態というべき状態はなったままだな。これでは眠って回復しようにもその傍からどんどん体力が消費され、いくら回復量が多かったとしてもそれを上回り、目覚めない可能性が大きいだろうな」


 そのエルモアの言葉に、皆驚愕の表情を浮かべる。


「え、え、ええぇぇぇぇぇっ!?」

「それはどうにかできないのか!?」

【エルモア!そういう大事そうなことはもっと早く言うのじゃよ!!】

―――――主様、寝タママニナルノ!?



「…‥‥まぁ、起こす方法としては、この生徒の、ルースの親に聞いてみたほうが良さそうだ。精霊状態だったルース、でも人間でもあったということは…‥‥両親のどちらかが精霊で、もう片方が人間なのかもしれないだろうな。しかし、人間と精霊の婚姻話は確かあったような、なかったような・・・・・あ」



 と、エルモアが考え込んでいたところで、いつの間にかエルゼたちの姿はその場から無くなっていた。



「タキ!!全速力でルース君の故郷、バルスト村へ向かって!!」

【分かっているのじゃよ!!】


 ルースの母親がいる村まで、全速力でタキが皆を背に乗せて駆けていたのだが…‥‥完全にエルモアは置いてかれた形になったようであった。



「おーい、ミルを引き渡してきーたけど、どうなーってい‥‥‥るの?」


 と、ちょうどこのタイミングで、ミルの引き渡しの手続きを終えた学園長が、エルモアの家に訪れたが…‥‥彼女もまた、完全に置いてけぼりにされてしまったようであった。

置いてけぼりにされたエルモアと学園長はさておき、エルゼ達は全速力でルースの故郷、バルスト村へと駆け抜ける。

村にいるはずの、ルースの母親に会い、そして話を聞くために。

そこで、彼女達が知ることとは!

次回に続く!


‥‥‥ミル?彼女は今回限りではなく、また後で出る予定だけど…‥‥治っているかな?廃人と化す時点で再起可能なのか、そのあたりは人気と作者の気分次第である。エルゼたちに対してトラウマを持っていそうだけどね。

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